1980年の漫才ブームでもっとも人気のあったB&Bというコンビが舞台に登場して、いきなり、ただ一言「もみじ饅頭」と口にするだけで会場が爆笑した。
歌舞伎の見得も同じようなもので、それ自体に何の意味もないが、観客が期待しているからこそ価値を持ち、あっという間にブームが去った「もみじ饅頭」との違いは「伝統」という理があるか否か、と僕は認識している。
逆に言うと、ワイヤーを使って空を飛んだり、人気漫画を原作にした横文字のタイトルの「伝統」をまとわない歌舞伎などは論ずるに値しないクズである。
僕みたいな庶民が、既存の価値観から離れ自由に生活することに反対をする人はいないが、元々の形があり、その形に合わせることだけが唯一の存在意義として歴史的経緯を踏まえその保全が善とされている世界に、いまの時代に沿え、という批判を正面から行う人が相当な浅慮、ということはさすがにないのだとしたら、デマゴーグであると以外考えられない気がしている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?