捨てたもんじゃない・都内の湧水地

8年ほど暮らしていた東南アジアの国の川は都市部は真っ黒、奥地に行っても流れる水はなぜか淀んでいた。
国が違えば社会も文化も政治も異なり、ストレスを溜める異国人居住者は多いが、その国での生活においてわたしの最大の苦痛は清らかな水が見えないことだった。
その反動から、東京都が選定した57の名湧水地にこだわらず、グーグルマップに登録されている都市部の湧水地を片っ端に巡っている。東京の都市部には水が湧くところは多いものの宅地化により現場は見つかりにくく、水量も決して豊富とはいえない。
そんな中、枯渇防止のため公園として整備されていることからお鷹の道で知られる真姿の池湧水群は比較的知名度があり、訪れる人も多い。
実際、隣接する武蔵国分寺跡と相まって、非常に魅力的なスポットとなっている。
わたしの想像を超えたのは国立市のママ下湧水だった。ママとは崖の意味で、(青柳崖線の)崖の下ということであるが、豊かな水が住宅街を下った崖の間から溢れる様子と、500メートルほど流れを追うと非常に澄んだ状態の矢川に急接近し、並んで多摩川の水を引き込んだ谷保分水と合流する矢川おんだしと呼ばれる場所までの光景は、自身の八年分の鬱屈を解き放してくれる一助となった。
都市部の湧水地として、衝撃を受けたのが、南沢緑地で湧いた水が、源流に近い落合川と合流する毘沙門橋付近である。当日は三鷹駅から歩いて訪ねたが、青梅でも奥多摩でもない都市部に多くの家族連れが浮き輪を着けて遊べるような清流があることはほとんど知られていないのではないか。子供たちの喚声を聞きながら、我々夫婦は最下流に座り、ズボンの裾をまくって、限られた夏の時間を享受した。










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