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「元に戻れるよ」に違和感~抗がん剤治療に挑戦するAYA世代が見つけた生きかたの決意 



ーー彼女との出会いは、2022年の5月末。
彼女がAYA世代の乳がんを患っていると判明し、手術を受ける直前のタイミングでした。

そのときは「初期の可能性が高い」と話していましたが、手術後の病理検査の結果で、思ったより進行していたことが発覚。
これから、抗がん剤治療に取り組むこととなります。


彼女はいま、なにを思い、日々と向き合っているのでしょうか。

AYA世代のがん当事者であるわたしが、お話を伺いました。

彼女…「三上りょう」さんとは?

三十一文字の吐息で、何気ない日常を“言葉のデザート”に変える日々...。


三上りょう  |  短歌作家


福岡市在住。大分県生まれ。
好きなものは猫と紅茶と格闘技。

2008年より主に恋の歌をコンセプトにした作歌スタイルを「嬢舌短歌リズム」と名付け創作。自主制作の本や手作りの紙雑貨を発表。朗読ライブや作歌会などもおこなう。2020年よりオンライン上での活動に移行。福岡発の短歌ブランド、蝶のあしあとを運営。




【抗がん剤に挑戦】あえて「挑戦」という言葉を使う理由


いきなり踏み込んだ質問をしてすみません。
予想より進行していた病状を、どのように受け止めていますか?

うーん…。
半年前の定期健診では異常がなかったのになぜ?という、やりきれない気持ちでいっぱいでした。

事実を「頭」では理解できても、「心」で受け止めて消化できるかは、別ですよね。

身体と心のバランスが、まったく取れてないと思う時間が続きました。

いきなり「がん」という非日常が現れて、病状も予想より進行していた。
不安定になるのは、ある意味自然なことだと思います。

はい。
でも、「第二の人生」と捉えて【本当にやりたいことだけ】をするという、ブレない指針ができました。

「本当にやりたいこと」ですか?

実は、わたし、短歌作家として活動しているんです。

へぇー!

自営業で活動しているので、自分の短歌ブランド「蝶のあしあと」を立ち上げて以来、活動を続けることが当たり前。
お金も時間もすべて短歌作家の活動に捧げてきました。

かなりストイックに突き詰めていたんですね。

自分自身で決めたことはやらなくちゃ、と思い過ぎていました。枠に自分をはめようとし過ぎていたのかも。
だから、もっとやわらかく考えてみようと思って。

なるほど。
三上さんは、8月上旬から抗がん剤治療を始めるそうですが、今後の治療に対する考え方も変化しましたか?

治療に臨むスタンスが変化しましたね。
「病と闘う(闘病)」じゃなくて「挑戦してみようかな」って気持ち。

その2つは、どう違うんですか?

わたしにとって「闘病」は、無理をしてでも頑張ってるやり抜くイメージ。でも「挑戦」は、どうしてもいやだったら止めてもいいというイメージです。

とても興味深いです。
言葉の選び方ひとつで、治療への心持ちも変えられる。真似したい発想です。


変化は悪いこと?病気を隠し続けた母に対して思うこと

あっちにも猫がいるよと君が抱く
肩から胸に落ちる紺碧  /三上りょう



三上さんの、がんは遺伝性のものなんですね。

はい。
わたしが幼い頃、母が若年性乳がんを発症していたため、今後の予防につなげるため遺伝性がんかを調べる血液検査を受けました。

その結果、遺伝性がんであるとわかったので、病巣のあった左胸に加えて、予防のために右胸の全摘出術もおこなっています。

身近でお母様の様子を見ていたぶん、不安も大きいですか?

そうですね。
不安がないとは言いませんが、「母は母」「わたしはわたし」と考えるように心がけています。

お母様はどんな方でしたか?

とても強くて優しい人でした。

ただ、乳がんをなるべく周囲には隠して生活していました。「心配をかけたくない」という思いやりがあったのかもしれません。
いま振り返ると、病気を隠している母の姿はときどき苦しそうでした。

強いからこそ言わなかったのかもしれないですね。
体調はもちろん、乳がんは切除箇所が見た目でわかりやすいから、隠すのは大変だったろうな…。

だからわたしは、がん治療中であることを隠さず、フラットに過ごしています。
たとえば、乳房再建手術は希望していませんし、日常生活でもパッドなどで見た目を変えるつもりはありません。

周囲の方の反応はどうですか?

温かく見守ってくれています。
「大丈夫!見た目だって元に戻れるよ」って心配してくれる方が多いです。
ただ、わたしの場合はいまの見た目に合う暮らしやファッションを楽しみたいと思っています。

人の数だけ考えかたはあるべきだと思います。三上さんの考えかたもステキですね。

人は常に変化しながら生きている。だから、絶対に元に戻る必要はないはずです。

その通りだと思います。
本当に大切なのは、元に戻ることじゃなくて、「自分らしい生きかた」で日々を過ごすことじゃないかな。

「見えないものを怖がってもしょうがない」フラットでいてくれる大切な人たち


治療を受けるなかで、支えになっている存在はありますか?

大切な人たちが気持ちの面を支えてくれています。
また、がん相談支援センターの方が訪問看護を提案してくださったので、身体的負担を減らせそうです。

たくさんの支えがありますね。

がん告知の報告をすると、わたしから離れていく人もいました。
でも印象的な言葉をかけてくれる人もいて。その人はサラッと「見えないものを怖がってもしょうがないね」って言ってくれたんです。

変に気を遣われるより、ありがたい反応だと思います。

実は、その人は難病と向き合いながら生きているんです。現時点では根本的な治療法や、病気そのものに効く薬はまだ開発されていません。

知った様なことは言えませんが、ご苦労も多いでしょうね。そんな方からの言葉は、すごく重みを感じます。

「薬があるんだからきっと大丈夫!僕は薬ないんだよ〜」なんて、おちゃめに言うんです。
なんだか、肩の荷が降りたような感じでした。

病気と向き合うとき身近な存在は重要だと思います。フラットに支え合える人たちがいることに、ホッとしました。

これからも人と比べず、ご自身のペースで日々を歩んでいかれることを願っています。


本日は、貴重なお話をありがとうございました!


治療は自分らしく生きるための選択「がん=わたしの全て」じゃない

誰かが、がんや大病を患ったとき、その人のイメージと病気を強く結びつけがちです。

もちろん、病気になった事実はありますが、その人のすべてではありません。

あたりまえだけど、忘れてしまいがちな考えを、改めて心に刻み込めました。


よりよい自分を生きるために一歩ずつ歩む、三上りょう さんの心の移り変わりにこれからも寄り添い続けたいです。

花の名を昨日の恋にそっと置く
遊んでとじて雨のやむまで  / 三上りょう




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