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絶対、乗り越えられるよ #4 ココロとコトバ

大切にするのは、
○匿名性
○だれも傷つかないこと
○考えを押し付けないこと
○自分たちのなかにある、『患者さん』や『患者さんを支える人』のイメージに囚われないこと

……………


今回お話をしてくださったのは、アメリカで生活をするなか、乳がんを経験された「わたし」さん。

アメリカでは、6人に1人の確率で乳がんを患うと言われているそうです。
そのぶん、日本よりがん治療に対して理解も深いとのことでした。

国や環境によって「わたし」の『ココロとコトバ』に違いはあるのでしょうか?


〜カンタンな記録〜

48歳で乳がんが発覚。
がんのタイプは、「トリプルポジティブ」という種類です。

手術で、右胸全摘と再建を同時に行いました。
術後の病理検査で、脇下転移が発見。ステージは2Bへ上がります。
そのため治療項目に、放射線が追加されました。

抗がん剤治療→放射線治療→ホルモン治療を経験し、現在にいたります。



Q.あなたが言われて救われた(嬉しかった)、または自分にかけてあげたい言葉はありますか?


言った人
乳がんサバイバーの友人
(がん経験者さんのことを「サバイバー」と表現します)

実際に言われた言葉
「○○なら、苦しい治療、絶対、乗り越えられるよ。私だって乗り越えられたんだよ。マラソン完走できる○○が、乗り越えられないはずないよ。」


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エピソード

乳がん告知を受けた当初、自分では、初期の初期のがんだと思っていました。

しかし、検査をするに従い、悪性度が高く、【抗がん剤治療が必要な乳がん】と判明。

抗がん剤治療を受けるのが怖くて、嫌でたまりませんでした。
治療をしても死ぬかもしれないのに、抗がん剤で苦しむって意味があるのか、もう分からなくて…。 


わたしには「乳がん」と判明したときから、相談に乗ってもらっていた、乳がんサバイバーの友人がいました。

その友人に、今のどうしようもない気持ちを吐露したんです。

このコトバは、そのときかけられた言葉です。


どう思った?

彼女はわたしより10歳以上も若いとき、乳がんを経験しています。


彼女の治療が終わりかけの頃。
そして、わたしがマラソンを始める前。

わたしたちは、飲み友達として出会いました。


彼女と仲良くなった後、2009年のNYCマラソンで、わたしは「初フルマラソン」に挑戦したんです。

偶然、彼女の自宅はマラソンのスタート地点付近。そのため、スタート前日は宿泊させてもらいました。

本番当日は、イタリア人の旦那さんと2人で、わたしのスタートを見送ってくれる、温かい人たちです。

以来、毎年NYCマラソンでタイム更新して完走するわたしを応援し続けてくれました。




わたしは長距離を走れることにプライドを持っています。


だからこそ、このコトバは非常に響いた。


「スタートラインに立つ前に負けんな。」と言われている様な、”くっそー、絶対、(治療というレースを)完走してやる”という気持ちが湧きました。

それと同時に、彼女がどんな思いで治療を乗り越えてきたのかと思うと、尊敬の念を抱きました。



Q.あなたが言われて傷ついた、
言われたらショックだったと思う言葉はありますか?


言った人

実際に言われた言葉
「(乳がんになったのは)アメリカに住んだからなのかしら。」


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エピソード

NYで手術をした二日後に、母と兄が日本から心配して、日本からやって来てくれました。

そのとき交わした、何気ない会話のなかで言われました。


どう思った?

わたしが選んで、生きてきた過去を否定された様な気持ちになりました。




Q.あなたが言ってしまって後悔した言葉はありますか?


【先に進むまえに、今回の「わたし」さんが伝えてくださった内容を記載します。】

こちらのエピソードは、この企画が意図するものと違うかもしれないです。
確かに、母親や相方に酷いセリフを言ったこともあるし、覚えているのですが、実は後悔していないのです。

自分の本心を勇気を持ってぶつけたと言う思いの方が強いのかもしれません。

それより、言って後悔したエピソードはこちらです。


誰に言いましたか?
会社の上司

実際に言った言葉
「実は先日、乳がん告知を受け、治療をしなくてはなりません。
人事部からは、プライベートなことだから上司への報告義務はないと言われていますが、休職中、部署の皆様に仕事のサポートをお願いしないといけません。
何も事情を知らないより、知ってサポートする方が気持ち的に違うと思うので、私は今の自分の状況を自らの意思でお伝えしておきます。」


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エピソード

告知を受けたあと、正月が明けたくらいの時期でした。

実際に伝えたい言葉にもあるように、人事部からは、「プライベートなことだから、上司への報告義務はないよ。」と声かけをしてもらいました。

しかし休職する期間、部署の皆様に仕事のサポートをしてもらうことになります。

かなり迷いました。でも、キチンと事情を伝えようと思ったんです。

上司に時間を取ってもらい、ミーティングルームで話しました。



【会話の内容】

上司「それは大変だね。誰かお世話してくれる人いるの?」

わたし「はい、相方と一緒に住んでいるので。」

上司「そう、それは良かったね。・・・ところでどっちの胸?」

わたし「え?」


このあと、なぜか適当な愛想笑いをして、立ち去りました。


どう思った?

自分の良心で伝えたことを後悔しました。

そして、なぜ人事部から、話さなくていいと言われたのか良くわかりました。

こんな反応をする人が存在するからです。

私のことを心配するより、下世話な興味しかないのです。


強いコトバになりますが、あれはまさに「セカンドレイプ」と同じだと思っています。

自分には何の非もないのに、傷く出来事があり、それを勇気を持って言ったら、さらに傷つけられるというパターン。

上司に言ったことを後悔している。というよりも、”あの”上司に言った事は後悔しています。

そして、その後、ココロを傷つけられたのに、愛想笑いでその場でアクションを起こさず立ち去ったわたし自身に、一番後悔している気もします。

「その質問、あなたの奥様が乳がんになった時に、誰かに言われたらどう感じます?」ぐらい言い返せば良かったです。

ひとつだけ確かなことは、自分の良心に従い、伝えた行動です。

今でも間違っていなかったと思っています。



………

今回、「わたし」さんの支えとなった『芸術』についても紹介していただきました。


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