生きててくれてよかった#5 ココロとコトバ
大切にするのは、
○匿名性
○だれも傷つかないこと
○考えを押し付けないこと
○自分たちのなかにある、『患者さん』や『患者さんを支える人』のイメージに囚われないこと
……………
今回お話をしてくださったのは、精巣がんを経験された「わたし」さん。
当時、26歳だった「わたし」の『ココロとコトバ』をご紹介します。
Q. あなたが言われて救われた(嬉しかった)、または自分にかけてあげたい言葉はありますか?
言った人
義母
実際言われた言葉
「生きててくれてよかった」
妻と、付き合っていたときの話です。
会話の流れは忘れてしまいましたが、そこまで改まって伝えたわけではなかったように記憶しています。
義母に、病気を経験して右精巣を摘出していることを伝えました。
「生きててくれてよかった。こうして娘と出会ってくれてよかった」と言っていただき、とても嬉しかったです。
正直、結婚の障壁になると思っていました。
義母のコトバのおかげで、色々と肩の荷が降りたような気がしました。
Q.あなたが言われて傷ついた、言われたらショックだったと思う言葉はありますか?
言った人
知り合い
実際に言われた言葉
「良かったじゃん。ほとんど大丈夫なんでしょ」
退院を報告し、病理検査の結果とともに5年生存率を伝えた時のことです。
「生存率が95%くらいだ」という話をした時に言われました。
《5%は死ぬのになー》
と思ってしまいました
確かに統計的には、死亡する可能性がとても低いです。
しかし、いざ当事者になってみると《31歳までにこの世にいない可能性が5%ある》と感じていました。
宝くじを買った時に「当たるかも」と思っちゃう感じです。
安心させるつもりで言ったはずなのですが、不思議とモヤモヤしてしまいました。
怒りも傷つきもしませんでしたが、自分の中で整理がつくまでは生存率の話は避けるようになりましたね。
精巣腫瘍の発生頻度が『10万人に一人』だったこともあり、5%がとても大きな数字に思えました。
Q. あなたが言ってしまって後悔した言葉はありますか?
誰に対して言った
母
どんな言葉を言ってしまった
「僕より悲しむのはダメだからね」
精巣腫瘍があると告知を受け、母に病気の報告をするとき言いました。
当時は全く後悔していませんでした。
自分の病気をネタに、感傷に浸られるのを未然に防ぎたかったからです。
でも、後悔するきっかけが訪れました。
それは一年くらい前、近しい人が入院して手術を受けた時です。
当時はすでにコロナ禍で、お見舞いに行くこともできません。
入院生活や病状を把握しにくく、僕はかなり動揺してしまいました。
その動揺を誰かに向けて発露することはありませんでしたが、存分に動揺していたと思います。
自分の心の内は自分しか見えないし、比べられるものでもない。
それなのに、「僕より悲しむな」と漠然とした制約をつける言葉を言ってしまったことを少し後悔しました。
………
今回、「わたし」さんの支えとなった『芸術』についても紹介していただきました。
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