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【#6】重複・反復

今回は「繰り返し」の功罪について話します。

1.重複と反復との違い

同じことを繰り返し言うことを「重複」あるいは「反復」といいます。
同じようでいて、この二つはまったく異なります。
まずそのことを認識しましょう。

「反復」はやり方を吟味すれば非常に有効。
いわゆる「大事なことなのでもう一度言いました」が「反復」です。
でも「重複」はまったく不要なもの。
重複とは同じ言葉あるいは文章・内容を無為に繰り返し使うことです。

たとえば
・すべての文章が「私は」で始まっている。
・「しかし」を何度も使っている。などなど。

あなたが書いている文章がビジネスレターなのか小説なのか、文章の性質によって重複への対処法は多少違ってきますが、いずれにしても、人には「くせ」があります。無意識によく使う言葉がないか、そういう視点で読み直してみましょう。

2.語尾の重複を避ける

前回、「ですます調」と「である調」について、基本的には「統一」しようとお伝えしました。「ですます調」なら「です」「ます」「でした」「でしょう」など。「である調」なら「である」「だ」「なのだ」「だろう」など。「である」調にも「ですます」調にも、いろいろな言い方がありますよね。あなたはどれをよく使いますか?

私はある雑誌で1200字くらいの記事を連載していた時、担当してくださった編集者さんに、
「語尾は一つも重複のないようにお願いします」と言われました。

「一つも」ですよ!

私もライターのはしくれですから、「でした」「でした」「でした」と何回も連続して出すようなことはしません。他の表現はないかな、と考えます。
でも、1200字あったら何度かは同じになっても仕方ないですよね。
ばらつきがあればいい、そう思っていました。

でもその編集者さんは許してくれなかった!
「だった」「である」「だろう」のほかに、何があるのか?

「一つも重複のないようにお願いします」と言われ、私は本当に無い知恵をしぼりました。もしかしたら、文章を書くより入稿前にこれを考えるのが、もっとも大変だったかもしれません。そして、ひねり出したのがこれ!

・「である」「なのだ」「だろう」のほかに
・「ちがいない」「~のはず」など。
・「という」「そうだ」という伝聞系。
・「だろうか」「なのか」という疑問提示形、
・疑問提示形の変形として「~とは?」。
・「~ない」という否定形。
・ほかに、「という○○。」などの体言止め。
・体言止めの変形として「~など。」
・「~してほしい」という要望系。

もちろん、世の中に「一つも同じものを使わない」という縛りはありません。でも、
・語尾一つとってもいろいろな表現があること、
・それを効果的に使うと文章のたるみがなくなるということ、
・退屈な文章に思われにくいことを、みなさんに知ってほしいと思います。

「ですます調」のときも、「です」「でした」「でしょう」「でしょうか」「ちがいありません」など、語尾が「す」だけにならないように、応用してみてください。

そう、「~してください」っていうのも、使えるワードですね!

3.接続詞の重複を避ける

あなたは「しかし」「ところが」「だが」「でも」「が、」のうち、どれをよく使いますか?
これらは「逆接」の接続詞。英語でいえば、「but」のカテゴリーです。
英語でもbut、but、but、ではちょと子どもっぽく聞こえますよね。
butのほかにalthoughとかhoweverとかカッコよく使ってみたいもの。
英語ではムリでも、我らが日本語なら、工夫できるのではないでしょうか。

一度、自分の文章でよく出る言葉をワード文書の「検索」をかけてみてください。長さにもよりますが、一つの文章の中に4つ以上使われていたら言い方を変えることを考えてみてください。

同じく「そして」「また」「それから」「あと」などはどうでしょう。
これは「順接」の接続詞ですね。いわゆる「and」のたぐいです。
これも同じように、重複していたら別の言い方を見つけてください。
ただ、苦労して言い換えたつもりでも「そして」「それから」「その」など「そ」が続くと、やっぱり重複していると同じように感じます。

「一方」「やがて」などを駆使したり、あるいは「接続詞は使わない」という方法もあります。そこに「接続詞」がなくても、文と文が自然につながる場合もあることを知っておきましょう。

4.「主語」にもバラエティーを

最初にも申し上げましたが、主語の重複も避けたいです。すべての文が「私は」から始まっていると、単に「単調」というだけでなく、子どもじみて見えたり、自己顕示欲が強く感じさせたりしてしまうかもしれません。

「私は」だけでなく、「彼は」もそうです。
今私はこのnoteで「パトロンヌ」という小説を連載していますが、主人公のミチル、ミチルが憧れているダンサーの寺田甲斐を指す言葉は、どうしても多くなります。

・他の登場人物と区別するために絶対に固有名詞でなくてはならないところ
・「彼」「彼女」にしても誤解なく、かえってさらっと読めるところ
・そこは「省略」しても、次の動詞と主語が同じことが明らかであるところ

などなど、いろいろ考えて主語にバラエティーをつけています。
時々は「受け身」にして、モノを主語にしたりもします。

この時にもっとも大切なのは、「読み手に誤解させない」ことです。
「重複」は避けた方がいいですが、必要な「重複」はあります。そこは、おさえておきましょう。



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