「パトロンヌ」~幕間~
こんにちは。バレエ小説「パトロンヌ」、楽しみにしてくださっている方々がいらっしゃることを、とても光栄に思います。
ここで、「パトロンヌ」が生まれた背景を、ちょこっとお話ししますね。
私が初めて熊川哲也のバレエを生の舞台で見たのは、1993年のことでした。その時の衝撃は、本当に言葉に言い表せないくらいものすごいもので、私はその夜、すぐに「この感動を、小説にするぞ!」と思って書き始めました。実は、他の小説を書いている途中だったのに、それを放ってこちらにとりかかったくらい、インパクトは大きかったのです。
書き上げるのに1年くらいかかりました。つまり、書き終わったのは1994年です。熊川哲也がまだ英国ロイヤルバレエのプリンシパルになって2年目。このあと、彼が日本で「Made in London」という自主公演を毎年やることも、「F」とか「およう」とかの映画に出ることも、その後ロイヤルを電撃退団し、K-Balletを立ち上げることも知りません。というか、直近でいうと、1995年にロイヤルが来日公演を行うことも知りませんでした。その状態で、私は小説の着地点を「1997年」にして小説を完成させます。
今回、noteでこの「パトロンヌ」を連載しようと思ったとき、当時の小説をベースにしながらも、いろいろと変更した部分がありました。そして「KAI暦4年=1993年」の次に、いきなり当時の私が知り得なかった「1997年」に飛ぶのはやめようと決心しました。実際に熊川哲也の30年を見守ってきて、さらに「パトロンヌ」にふさわしいことが、いくつもあったと感じるからです。もちろん、これは熊川哲也ストーリーではありません。ミチルとリカの物語つまり、バレエに魅入られた「あなた」の物語なのです。
これまでは、ほとんど日をおかず、毎日のように連載していましたが、このあと、少しお時間を頂戴します。この後のストーリーは、今まで書いていなかった部分なので、毎回1000字前後とはいえ、生み出し、推敲し、完成するにはそれなりの時間が必要です。行き当たりばったりで書くつもりもなく、一つのエンディングに向かって収束していけるよう、構成しながら書いていく所存です。その分も含め、アタマの中で一度全体を考えなければなりません。もう一つ、コロナによるエンタメ界の自粛がすこしずつ解けて、私もいろいろとお仕事をいただくようになったため、その「時間」がなかなかとりづらくなったことも影響しています。
いずれにしても、芸能芸術が人間の魂にどれほどのインパクトを与えるのか、その一点を、自らの感性に偽りなく描いていきたいと思っております。今後とも、ぜひ応援よろしくお願いいたします。