仙腸関節 その2 仙腸関節:機能、病態、治療、脊椎および股関節手術への影響 (Horton I. J Bone Joint Surg Am. 2024 Dec.)
仙腸関節の診断
【病歴聴取のポイント】
疼痛の特徴
臀部痛が最も一般的
腰痛、鼠径部痛、大腿後面・外側の痛み、膝痛など多様な痛みのパターンが存在
腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、股関節症との鑑別が重要
Fortinフィンガーテスト
後上腸骨棘の1cm以内の範囲で痛みを再現性をもって指摘できる
2回以上の試行で一致する場合に診断的価値がある
Fortinフィンガーテストの詳細解説
【テストの基本概念】
Fortinフィンガーテストは、1994年にFortinとFalcoによって報告された仙腸関節障害の診断テストです。患者自身が痛みの部位を直接指し示すことで、仙腸関節由来の疼痛を同定する簡便かつ有用な方法として知られています。
【テストの実施方法】
患者への指示
立位または座位で実施
「最も痛みを感じる部位を1本の指で正確に指し示してください」と指示
2回以上、異なるタイミングで同じ指示を与える
判定基準
後上腸骨棘(PSIS)から1cm以内の範囲を指し示す
2回以上の試行で同じ部位を指し示す
両側性の場合は左右それぞれで評価
臨床的意義
仙腸関節ブロックの効果予測に有用
他の理学所見と組み合わせることで診断精度が向上
スクリーニングテストとしての価値が高い
注意点
単独での診断的価値は限定的
他の理学所見や画像所見との総合判断が必要
偽陽性の可能性がある(特に腰椎由来の疼痛との鑑別)
慢性期では痛みの範囲が拡大し、正確な部位の特定が困難な場合がある
問診票の活用
デンバー仙腸関節質問票:仙腸関節特異的な評価として有用
【身体診察】
基本的評価
関節の触診
腰椎・股関節の詳細な評価
神経学的診察
誘発テスト(複数のテストを組み合わせて実施することが重要)
主な誘発テスト
仙腸関節牽引テスト
圧迫テスト
大腿推進テスト
ゲンスレンテスト
仙骨推進テスト
【画像診断】
X線検査(第一選択)
骨盤正面像を基本とする
必要に応じて追加撮影:
Ferguson撮影(30-40度頭側傾斜)
斜位撮影(仙腸関節に30度内側傾斜)
フラミンゴ撮影(骨盤輪不安定性の評価)
CT検査
感度58%、特異度69%
Backlund分類による評価:
関節裂隙狭小化
骨棘形成
骨硬化
嚢胞形成
真空現象
MRI検査
最も包括的な評価が可能
感度65%、特異度79%
評価項目:
骨髄浮腫
炎症所見
軟骨評価
関節周囲軟部組織の評価
【診断的ブロック】
画像ガイド下での関節内注射が最も診断的価値が高い
CT、透視、超音波ガイド下で実施
局所麻酔薬とステロイドの組み合わせが一般的
痛みの改善率による評価
複合的評価の重要性
単一の検査や所見での診断は避ける
病歴、身体所見、画像所見、診断的ブロックの結果を総合的に判断
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