小学校の教科書でやる落語は寿限無じゃないほうがいい

今回はいつもの話題からちょっとずれ、落語について書きます。久々更新でこれにはいささか申し訳ないが、勘弁してくださいね。

さて、恥ずかしながら最近ようやく落語というものをちゃんと聞く機会があった。きっかけは「あかね噺」だが、ちゃんと知った方がより漫画も面白いだろうということで寝ている嫁を置いて一人上野の鈴本演芸場へ。

3000円で7時間、こんなにコスパの良い場所はない。

そこからなんやかんやで落語をかじり始め、駆け出しではございますが、知ってる話や落語家さんもだんだん増えてきたところにございます。

ところで寿限無という落語をご存じでしょうか?
落語というのは数あれど実際に知っているのはほとんどない。そんな落語の中でも寿限無の話は超有名の超助で、少なくとも私の世代で知らないもの居ない。
「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ(ず)…」といった具合で、お寺さんにもらったありがたい名前候補をすべてつけられてしまった子どもと、その周りの人の間での、「名前が長い」ことに由来するいろんなトラブルの話です。
いまだに名前を暗唱できる人もいるんではないですか?私もできます。
小学校ではストップウォッチ片手に、誰が一番早く言えるかを競争していた記憶があります。

今はどうか知りませんが、寿限無が有名な理由は、「教科書に載っているから」に尽きると思っています。
なのでみんな知っている。
今時テレビで落語はほとんどやらないし、Youtubeで落語と検索することもない。落語家のイメージは着物を着ているくらいなもんで、落語家の大師匠たちは大喜利の人だと思っている。
なので市民が落語と言われたら、真っ先に来るのが「寿限無、寿限無…」。

悔しいっ…!悔しいっ…!悔しいっ…!
教科書に載っている落語が寿限無じゃなかったら、もっと早く落語を知れたっ…!と思うんです。
落語は面白いんだって、そんな認識でいたはずなんです。
それもこれも、教科書に載っているのが寿限無なのがいけないんです。
寿限無じゃなければ…早口言葉じゃなければっ…!!

お気持ちで喋ってたんじゃあ訳ないので、ここから先は理由の話。
以下、「寿限無」が「教科書」にふさわしくない理由を話します。
異論は認めます。

①あんまり笑えない

寿限無を「読んで」爆笑した人いますか?クスリと来た人は?にやりとした人はどうですか?少なくとも黙読で笑える部分ってありましたか?
音読だと面白いでしょうが、それは「寿限無、寿限無…」と声を出すのが楽しいから。
話自体が面白いかと言われると、もっと笑える落語はいくらでもある。

②かといって感動もしない

落語の話には面白いもの、感動するもの、感心するもの、怖いもの、エロいもの色々ありますが、寿限無は基本「面白いもの」カテゴリー。
感動ポイントはほとんどありません。
寿限無で感動するためには「子どもの名前に込めた親の思い」という、小学生にはちと難しすぎる心情に共感できなきゃいけません。
いや厳しいって。共感できないって。危機感もった方がいいって。

③意味が難しすぎる

「寿」「限」「無」の漢字がもう難しい。この中で一番簡単なのは「無」らしい(小学4年生)。寿限無の並びで「寿が限り無いこと」って理解できるのは中学生の漢文レベル。
次に出てくる単語は「五劫」。
すまんが長さの単位で「劫」は一生使わん。
漢字はそんな調子だが、仮名は仮名で全く意味が分からねぇ。
「やぶらこうじ」ぐらいから怪しくなってきて、「グーリンダイ」、「ポンポコピー」、「ポンポコナー」で完全に人理の外側に至る。
もしかして「Good Ring Die(死ぬなら戦場で)」みたいな米兵がアフガンで使ってた決まり文句みたいな背景があったりする?子供の名前で!?
総じて本当に呪文。詠唱。滲み出す混濁の紋章。

④ストーリーが薄すぎる

寿限無のストーリー正確に覚えてる方いらっしゃいます?オチ(サゲ)ぐらいは覚えてるかたいますよね?
調べたところ教科書版は「けんかでできたたんこぶが、確認しようとしたときには治っている」というサゲが多く、ほかにも川で溺れるが一人で助かるエンドもありうる。
落語家さんの話では川が井戸だったりもするし、大昔には寿限無が溺れて死亡エンドまであった。最近だと入学式夏休みエンドなるものもあるらしい。
NieRもびっくりのマルチエンディング。

一方中間については記憶がない。
正直、開幕の名づけパートと最後の寿限無絶体絶命パート以外は覚えてねぇよ。けものフレンズ2ぐらい覚えてない。
…とか思ってたら教科書版寿限無にはそれ以外なかった。
けものフレンズも2なんてなかった。

⑤名前が長い

訳せ。今時何でもかんでも訳されるんだから、律義にフルネームを繰り返すことの違和感が目立つ。
空条承太郎がジョジョなんだからお前もジュジュと名乗れ。Spontaniaとフィーチャリングしろ。

⑥話で聞くとちゃんと面白い

っていうか、これが国語の教科書に寿限無が載ってる理由では?
文字だけだと面白くないけど、表現でいかようにもなるよ~みたいな?
実際 読む<聴く<観る の順に面白くなるようです。
実際に落語家さんかける寿限無は短くても10分。
最初と最後じゃなくてちゃんと中間のけもフレ2パートもある。
しかも、そこもちゃんと面白い。

アレンジもすごく効くんです。
大学の落研を見に行った時に「最後の寿限無」なんて話を先輩がやってまして、落語家さんのコピーだったそうですが、「大病を患って余命僅かの落語家が、必死の形相で寿限無をやる」という話なんですが、なんとなく想像できます?
体はふらつき、目も虚ろ、息も荒くてすぐに咳き込んでしまう。それでも人生最後の演目は言い立てが肝の「寿限無」。
これが最高に面白くてね。
少し変わりすぎだけど寿限無でもこんな面白いんかって思った次第です(どなたか誰の話かご存じでしたら教えてください)。

結論

ということで結論ですが、寿限無、教科書に載っててもいいよ!!
さすがにただ批判したんじゃと思って学習指導要領見たけど、音声CDとかとセットで教えるみたいっす。んじゃ面白いわ。
しかも、「落語」っぽいと言われればちゃんと「落語」だし、少なくとも落語にネガティブなイメージを抱かせるものじゃあなかった。
落語ってこんな感じと思ってもらうにはぴったりなのかもしれません…

でも、落語が「その程度」だと思われないように、別の話も載せてほしい!
文字だけでも何となく面白いやつをお願いします。
同じような入門系の話だと「まんじゅうこわい」の方がよっぽど黙読でも面白いからそっちとチェンジでお願いします。(個人的には小学生爆笑間違いなし「目薬」とかおすすめ。)

結局、寿限無じゃ役不足だと思ってたのは手前勝手な独りよがりってわけです。ちゃんと考えれば面白いってわかるじゃない。
見切り発車で書き始めちゃうからいつも最後まとまらない。
黙読じゃ面白くないのはこのnoteも一緒。つらつら書きまくってまとまりがなく、論理的でもないしためにもならない。

でも受験生にはおすすめかもしれません。




何でってそりゃ、オチないから。







…ちっともおあとが宜しくねぇや。お疲れさん。

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