2022年の格闘ゲームのトピックをアーカイブ代わりに振り返っておく
2022年もあっという間に終わり、2023年新年を迎えた。
本当は昨年書きたかったが余裕がなかったので、年が明けてこの記事を書いているのだが、ストリートファイターV中心に、2022年の格闘ゲームの辺縁のトピックをアーカイブ代わりに振り返っておこうと思う。
ストリートファイター6の発表
2D格闘ゲーム「ストリートファイターV」の次世代ゲームである「ストリートファイター6」が発表された。
スト6は、REエンジンで描かれた美しいグラフィック、文字通り各キャラ共通のドライブゲージ、ドライブインパクトの致命的ダメージを巡る駆け引き、多数の新キャラ、細部まで充実のトレーニングモード、自分のアバターの作成機能、ゲームセンターを再現したバトルハブ対戦、シングルオープンワールド的なワールドツアー、操作をクラシックとモダンの2系統を用意、シリーズ初の自動実況搭載等、あらゆる点でこれまでの格ゲーを超える概念と機能が盛り込まれている。
また、防御が強くじりじりした試合になるストVと変わり、スト6ではスピーディーな展開と攻めが強いシステムから、これまでのストVとは全く違う試合展開が楽しめる。
スト6のベータは2022年内に2回行われ好評を博した事で、格闘ゲーム界隈の今後の盛り上がりが予想された。
以下の記事で著名選手の動画を多数掲載しているので、是非見て欲しい。
ストVは2016年から続き2022年で6年目を迎えるが、ストVのゲーム性は守備的な立ち回りが強く、またキャラ毎に性能が余りにも違い過ぎるピーキーなキャラ性能と技性能のため、非常にアンバランスなゲーム性であり、競技やeスポーツとして相応しいかと言われると正直微妙だったと言わざるを得ない。
ただ、そんな格ゲーシーンを盛り上げてきたのがウメハラ、ときど、ふ~ど、ももち等各プレイヤーの魅せる試合の数々だったと思う。
特にウメハラ選手は、自身の企画するイベント「獣道」で、プレイヤー同士の因果や関係に焦点をあて、一対一で長期戦の戦いをコンテンツにする事で単なる格ゲーの試合を超えたものをもたらしたと思う。
Daigo the BeasTV
獣道2でのウメハラvsときど
Kemonomichi 2 Main Event - Part 2 獣道・弐本戦 その2
獣道4 Kemonomichi 4 - こたか商店VSユウベガ | Kotaka Shoten VS Yuvega | スパIIX SSF2T
ただ、昨今の情勢の関係で2022年内には獣道が行われる事はなかった。
少し脱線したが、スト6の発表は、2022年の大きな話題の一つになった。
ミルダム格ゲー勢が一斉にTwitchに移動
元々、2020年頃には格ゲープロ選手たちはチームや各自の配信チャンネルを持っていたが、ウメハラ選手が2020年にミルダム(Mildom)のスポンサードを受けた事で、格ゲーチームの忍ism Gamingや魚群を始めとして、選手たちが一斉に配信サイトをミルダムに移行するという動きがあった。
ときど選手やガチくん選手等の有力選手もそれに倣い、ミルダムにチャンネルを開設する。
結果Twitch(ツイッチ)やYoutubeに残ったのはごく一部の選手だけだった。
(ももち、ネモ、sako等一部の選手は配信サイトを移行せず、Twitchを継続している。)
こうして、ミルダムを開けば、常に格ゲー選手の配信がやっているという状況が生まれた。
更に選手以外にも、こくじん氏等の影響力あるストリーマーもミルダムに移行していく。
ミルダムはウメハラ選手を中心とした、一大エンタメ配信の場と化した。(ウメハラ選手は元々Twitchチャンネルも持っていたが、スポンサードを機にミルダムに配信チャンネルを開設した。)
ウメハラ選手のエンタメ路線の配信は、手始めにボードゲーム「カタン」のプレイから始まり、徐々に多人数でプレイし見ている側も楽しめるコンテンツにシフトする。
人気になったのは、例えば「Project Winter(通称「雪山人狼」)」だったり「コードネーム」等だ。
5人~8人程度の格ゲー選手やおこぼれ3人組を集めてエンタメ配信がされるようになった。
5/20/2020 ミルダム配信 Mildom - Project Winter
各ゲーマーコードネーム配信
※おこぼれ3人組
当時は「おこぼれ3人組(4人組とも)」と言われた、こくじん氏・総師範KSK氏・アール氏(加えて三太郎氏)を加えたメンバーを指す。
おこぼれ3人組を呼んで様々なゲームの配信をするウメハラ選手も斬新だった。
プレイされたタイトルは、例えばテラリアや地球防衛軍などだ。
おこぼれ組のその後は、人気ストリーマーとなったこくじん氏、独自の配信で復活したKSK氏、スト6実況で製品側のキャラになったアール氏、ストVライセンスを得た三太郎氏、と全員既におこぼれとは言えないような状況になった。
1/19/2021 ミルダム配信 Mildom - 地球防衛軍 Earth Defense Force
ミルダムに格ゲー選手の配信が集結したことで、こくじん氏主宰の「格ゲーマー人狼」もこの頃開始した。
格ゲーマー人狼ではセオリーを逸脱したプレイが新鮮なものと写り、格ゲーコミュニティ以外でも大きな話題となり人気コンテンツになった。
こくじんTV
【#格ゲーマー人狼 01】初戦なのに予想を裏切るめちゃくちゃいい試合!【1戦目】【ウメハラ率いる格ゲーマー】(2020/6/25)
しかし、2022年6月頃までにこうした状況が一変する。
ミルダムで公認配信者の契約が終了となり、格ゲー選手も例外ではなく相次いでミルダムのチャンネルを閉鎖が始まる。
大半の選手はミルダムを離脱してTwitchに配信チャンネルを開設したようだ。
配信プラットフォーム変更を告げる魚群ツイート(2022年3月30日)
ミルダムに残ったのは、直接スポンサードを受けているウメハラ選手とふ~ど選手だけという状況になり、ウメハラ選手を中心としたエンタメ配信の巨大実験場は終焉を迎えた。
配信サイトが異なっても、コンテンツを企画したり運営するのは問題ではないと思えるが、配信者同士のサイトが異なる場合、一つ問題がある。
それは「レイド」が使えないという事だ。
配信サイトが同じサイトの場合、配信に集った視聴者をそっくり他のチャンネルに移せるというシステムがレイド(Raid)となる。
例えばウメハラ選手がミルダムで自身のチャンネルで配信終了する場合、視聴者3,000人をそのままふ~ど選手のミルダムの配信チャンネルにレイドする事で、ふ~ど選手は視聴者を一から集める必要はなく、3,000人の視聴者を得られる。
勿論離脱する人も出てくるが、2割残っても600人が見続けるので、配信者にとっては互いにレイドする関係が築ける事は大きい。
この「互いにレイドをし合う」という濃い関係性が、ミルダムにおける格ゲー配信者の大きな輪になって求心力を高めていた。
レイドのシステムヘルプ
また視聴者側も、ウメハラ⇒ふ~どという格ゲー選手の配信の流れでそのまま見続けられる状況となり、配信者・視聴者双方にメリットがあった。
配信サイトがミルダムとTwitchだと、こうした「格ゲー間レイド」は行えなくなる。(ミルダムはミルダム内、TwitchはTwitch内でしかレイド出来ないため。)
公認配信の終了による収入がなくなった事に加えて、配信サイトが違う事でレイドの関係性がなくなり、各配信者がミルダムを離脱する。
格ゲー関係者でミルダムに残ったのはごく僅かだった。
ウメハラ選手を中心としたエンタメコンテンツの場と熱気は雲散霧消した。
その後、各自が移行し或いは留まったチャンネル内で配信や動画投稿を目指す事になり、現在に至っている。
格ゲー配信者という点では、Youtubeのかずのこ選手とTwitchのハイタニ選手が成功と言えるだろう。
ウメハラ選手は公認配信者終了までは多数のリスナーが視聴していたが、その後はミルダムの凋落もあり、数を減らしているようだ。
動画投稿の点では、Youtubeのどぐら選手の「クソキャラ列伝」が人気を博している。
CAG Dogura どぐら
【どぐらのクソキャラ列伝】マーダーフェイスを生んだ伝説のボクサー!スパⅡXのバイソンを解説!
Twitchに大半の選手のチャンネルが移行したことで、今後はTwitchを中心にした格ゲー選手のコンテンツが展開されるのではと思う。
作り込まれたチーム戦コンテンツSFL2022
SFL(ストリートファイターリーグ)は、ストVをリーグ制のチーム戦で戦うコンテンツで、2018年に前身のイベントが始まって2022年で5年目になるが、企業オーナー制になってから2年目になる。
2年目はミルダムビースト等一部のチームが参加しなかったが、広島 TEAM iXAが新たに参戦し、8チームでのリーグ戦が開催。
3ヶ月以上に渡るリーグのコンテンツとして楽しめた。
昨年も非常に混戦模様でv6プラス FAV Rohto Z!の逆転勝利で締めくくったが、今年も混戦のままプレイオフに突入し、グランドファイナルも大いに楽しめそうな情勢になっている。
SFLでは、各試合の投げ抜けや対空の成功率といったスタッツを表示し、またフレーム単位でどのような変化が起きているかも解説する等、ただ格ゲーの試合を中継するだけではなく、初心者からコアゲーマーまで楽しめるよう工夫されている。
オンラインとはいえ選手の表情も映せるよう、各選手には専用のスマホが支給されている徹底振りだ。
格ゲーの配信自体は昔からあるが、ここまでやる格ゲータイトルの配信は、SFLまで恐らくなかったのではないか。
SFLも最初からこのような形ではなく、これまで試行錯誤を繰り返しながらきて、ようやくここにきて結実してきた感がある。
特に、当初不評だった「キャラクターBANルール」を、「ホームアンドアウェイルール」に変更して乗り切り、人気を維持したのが大きい。
ストVはゲームとして見ると微妙なタイトルだが、CAPCOMはストVのためというより、次世代の格ゲータイトルであるスト6を失速させず、勢いを維持したまま新タイトルに入るためのイベントとして、SFLに非常に力を入れていると感じる。
逆に言うと、ストVのゲーム性でも、現在の格ゲーコミュニティやSFLの人気で維持出来ている事はCAPCOMにとって極めて大きい。
スト6の方が明らかにゲーム性は良いと思えるからだ。
選手からしても、以前はCPT等の海外の予選に疲弊しながら回っていたが、オンラインで国内リーグに参加するという安定した活躍の場が与えられることで、選手側にも大きなメリットがあると思う。
来年はメインタイトルがスト6になるが、よりチーム数の拡大やコンテンツの充実を願いたい。
また、現在はCAPCOMのYoutubeやTwitchのチャンネルで配信されているが、出来ればアベマ(ABEMA)で配信して欲しいと思う。
やはりアベマの影響力は大きく、カタールワールドカップもアベマで配信されたことで、配信サイトとして認知が非常に上がっている。
アベマでは、2018年のストリートファイターリーグ powered by RAGE時代に配信されており、問題はない筈だ。
格ゲーマダミスや格ゲーTRPG
格ゲーキャスターのなないさん主催で、格ゲー選手によるマーダーミステリーやTRPGがプレイされたのも斬新な試みだった。
自分はマダミスは知識が無かったが、クトゥルフ神話やTRPGには少し知識があったので格ゲーマーがどんなプレイをするのか興味深く見ていたが、大半の視聴者にはなじみが無かったのではないか。
そこを着目したなないさんの慧眼と、シナリオを読み込んで直ぐにゲームマスターを努めるフットワークの軽さは素晴らしかった。
恐らく選手のSFLのリーグ期間のため、後半節以降はプレイされていないが、2023年も続けてプレイを見たいコンテンツだ。
なないチャンネル
※マダミスは一度見るとネタバレで類似コンテンツが楽しめなくなるため、動画の視聴に際しては十分ご注意下さい。
マダミス第1回
【格ゲーマー狂気山脈】マダミス初プレイ!マダミス狂気山脈! 登山家:なない視点【まだら牛/なない/石井プロ/ハメコ/えいた/Shuto】
ウメハラ選手がマダミス参加で話題となった回
【格ゲーマーマダミス】狂気山脈 陰謀の分水嶺 GM:なない視点【なない/ウメハラ/こくじん/総師範KSK/ミートたけし/ハイタニ】
おじたちのロールプレイと突然のダンスフロアが最高の回
【新クトゥルフ神話TRPG】冒涜都市Z~深碧の魔境~【KP: なない | PL: 大須晶/総師範KSK/ミートたけし】 #おじぺ探検隊
残念な出来事も多かった2022年格ゲー界
2021年から2022年にかけて、格ゲーを取り巻く残念な話題も多かった。
鉄拳のたぬかな選手の舌禍による契約終了(2022年2月)。
おじリーグや格ゲーマー人狼にも参戦し、格ゲーガチ芸能人として知られた歌広場淳氏の不倫トラブルによる活動自粛(2021年11月⇒2022年12月に復帰)。
歌広場氏がMCを務めていた格闘ゲーム番組「格ゲー喫茶ハメじゅん」(TOKYO MXで放映)も、影響を免れず番組終了となった。(2022年4月)
終わりに
ここまで2022年の格ゲー辺縁のトピックを中心に書いてきた。
単に格ゲーと言っても、周辺で色々な出来事が起きている事は、格ゲーコミュニティを楽しむ上で知っておいてもいいと思う。
2023年も、格ゲータイトルの真剣試合はもとより、こうしたエンタメコンテンツも楽しんでいければと思っている。
特に、スト6の初年度でこれまでの選手の力関係が激変したり、新しい選手やチームがタイトルに参入する事は間違いないので、昨年以上に格ゲーコミュニティが楽しめる事は間違いない。
その他の話題
・ネモ選手が初書籍上梓「思い込む力」
・ひぐち選手、Shuto選手等がチームを移籍
合わせて読んでおきたい
ウメハラ|格闘ゲーマーインタビュー
かずのこ|格闘ゲーマーインタビュー
ガチくん|格闘ゲーマーインタビュー
カワノ|格闘ゲーマーインタビュー
ときど|格闘ゲーマーインタビュー
ネモ|格闘ゲーマーインタビュー
ふ~ど|格闘ゲーマーインタビュー
ボンちゃん|格闘ゲーマーインタビュー
マゴ|格闘ゲーマーインタビュー
ももち|格闘ゲーマーインタビュー