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ゲームの思い出:ウィザードリィ外伝2 古代皇帝の呪い

 きっかけはたまたま遊びに行く前に図書券を貰って、本屋とレンタルビデオ屋とゲームセンターが一緒になった本屋に友達とヴァンパイアをやりに行ったことだった。

 当時出たばかりのこの格闘ゲームは様々なモンスター達がアニメの様なグラフィックで激しい戦いを繰り広げるもので、プレイを見ているだけでも興奮できるものだった。
 当時の格闘ゲームは恐ろしく難易度が高く、今なら新作格ゲーでも初見でラスボス、ないしはその前辺りまで行ける僕だが、3人目や4人目で惨敗するような難易度だった。まあ、単純に下手だったのもある。

 この日は、それを友達と金をかき集めなんとかしてラスボスを倒そう!と皆で集まった日だった。

 数十回のコンティニューでラスボス前のフォボスというロボットをなんとか倒し、ラスボスのパイロンにたどり着けた僕達だったが、みんなで集めたお金はもう底をつきかけていた。コイン投入した奴がプレイを引き継ぐというスタイルでやっていたが僕はもうお金が尽きてしまっていた。
筐体の横に積んでいた100円が残り3枚になったとき僕はポケットに図書券を突っ込んでいたのを思い出した。
 500円の図書券で4枚。1枚で200円程の星新一のきまぐれロボットを買い、200円程のお釣りを貰う。他に何かないか…?と店を色々見たとき棚の片隅にゲームプレイヤーと言う見慣れない本を見つけた。
 それはコミックアンソロジーの様なもので、ゲームの4コマ漫画やそれを原作とした漫画、ゲームに関係するオリジナル漫画が載っていた。
 後にガンガンやギャグ王で見る顔ぶれが漫画を書いていて、衛藤ヒロユキが魔法陣グルグルの後に連載していたPICOPICO、石田和明のレニフィルの冒険の原型もこの雑誌に載っていた。
 僕はギャグ王を創刊号から休刊するまで全て買って、置いておいたほど好きだったので、即レジに持っていった。

 その中に、ウィザードリィというゲームの漫画がいくつかのっていた。ゲーム自体は名前くらいしか知らなかったが、どうやらダンジョンを冒険するRPGらしい。

 結局その日は全員の資金が尽きてしまい、攻略は叶わなかったが、友達と別れた僕はゲームショップに向かった。

そこで僕はウィザードリィに出会った。

……とは言っても、ソフト自体手に入れたのはその少しあとの事だ。

 当時、僕の母親は毎月の小遣いこそ少ししかくれなかったが、毎月2冊だけ、余程の高価な本ではない限りどんな本でも買ってくれていた。

前述の図書券も、この月の分の本代だった。

 僕はこの次の月、ウィザードリィ外伝2の攻略本を買ってもらった。
ウィザードリィの攻略本は本屋にそれしかおいていなかったからだ。
当時、ゲームソフトが手に入らなくても、攻略本を見てどんなゲームなのか空想するのが好きだった。

 ハード自体が手に入らなくてプレイ出来なくても、攻略本を持っているソフトはいくつもあった。メガドライブのシャイニングフォースなんてその筆頭だ。

 ソフトを手に入れたのは攻略本を買ってもらって一年ほど経ったある日のことだ。

 ゲーム友達の家で遊んでいると珍しくそいつの兄が居た。
この友達の兄はバンドをしていたらしく、髪の毛を金に染めていて、見るからに不良って感じが怖くて僕は少し苦手だった。
 どうやら近いうちに上京する様で、その支度をしているようだった。ガタガタと隣の部屋から物音がひっきりなしに鳴っていた。

 「おい」

突然部屋のドアを開けて、友達の兄は言った。

 「これ、要るか?要らないなら売っちまうけど」

それはBB戦士のパーフェクトガンダムの箱に入れられたな何本もの裸のゲームボーイソフト。

友人が箱の中を見て物色してるのを羨ましそうに見ていると、それを見かねてか友達の兄は言った。

 「お前にも一本やるよ、好きなの持ってけ」

 僕はそれに飛びついた。ソフトを物色、いや。最初に開けたときからわかっていた。ウィザードリィ外伝2。

あのソフトがある!

 「これ、これがいいです!」
 「Wizかよ、渋い趣味してんなあ」

笑いながら友達の兄は言うと、「じゃあ、ゆっくりな」と部屋から出て行った。


 ウィザードリィ外伝2、いやウィザードリィシリーズは慣れていないと高難度のゲームだ。

 僕はこの友達の兄のセーブデータで初めてウィザードリィをプレイした。
ウィザードリィは作成したキャラクター毎に、もしくは特定のアイテムを所持しているかいないかで、シナリオの進行を管理している。
それなので、新規にキャラクターを作ればストーリー自体は最初からプレイ出来る。今でいうと強くてニューゲームのような状態だ。

 友達の兄の育てたキャラクター達を僕は師匠と呼び、自分のキャラクターの育成、本当に勝てない敵との戦い等随分と世話になった。

 途中自分のキャラクター達では歯が立たなかった強力なボス、サンドクラッド。最終ボスの前に立ちはだかる6体の魔王との戦いの際には本当に世話になった。いなかったら諦めてしまっていたかもしれない。

6人の師匠のキャラクター。
ロードのアレックス、侍のシュタイナー、戦士のミハイル、忍者のバーニィ、僧侶のクリス、魔法使いのディード。

 多分名前の元ネタはガンダムのポケットの中の戦争とロードス島戦記だと思う。当時の僕は、いつかまた会えたときはガンダムとかの話をしてみたいな、と思っていた。

 しかし、あの日帰り際に直接お礼を言いに行ったきり、その人にはもう会うことはなかった。
最後に見た、初めてちゃんと見た彼の顔は、見た目こそ怖かったけど、優しい目をしていた。

 随分と後になって、彼が交通事故で亡くなったと聞いた。

 それを聞いて、当時関東に住んでいた僕は帰郷した時久しぶりにソフトを起動してみた。セーブデータはもう、消えてしまっていた。

なにか大切なものを失ってしまったようで、僕は少し泣いた。



ウィザードリィ外伝2 古代皇帝の呪い

ハード:ゲームボーイ

1992年12月26日発売。

発売:アスキー

※見出し画像は公式の物をお借りしています。問題があれば連絡をくださればすぐに消去します。 

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