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ゲームの思い出:ドラゴンクエスト4 導かれし者たち

 僕たちは、勇者だった。

 暗闇の中テレビの明かりのみが僕達を照らしていた。
テレビの中で僕達は敵の居城を越え、その先の山を登っている。
その頂上には、巨大な体躯の化物がいた。
ピサロが進化の秘宝を使い、変わった姿。
それは前に戦った地獄の帝王と色こそ違うが同じ姿をしていた。
戦いが、始まった。
満身創痍になりながらも、勝利は目前かに見えた。
両腕を切り落とし、遂に敵の頭を叩き潰した。
勝った。そう、思った。
しかし、突然残された胴体が動き出し、そこに顔が現れた。
そいつはまだ生きていたのだ。
両腕をもがれ、頭を潰されても、なお。
進化の秘宝と言うものはなんてとんでもないものなんだ……と思った。
こうして、絶望の第二ラウンドが始まった。
あの時僕が感じた驚きと絶望感をこれを読んでいるあなたは絶対に理解できない。


ドラゴンクエスト4……ドラクエ4は、僕が初めてクリアしたドラゴンクエストだ。
「ファミコンを買ってもらった!」と、いとこのお兄ちゃんに言った所、俺はもう解いたからやるよ、とくれたのである。
ファミコンと一緒に買ってもらったドラえもんギガゾンビの逆襲はもう3度程クリアしていたのでちょうど良かった。
目の前でいとこのお兄ちゃんが最初に少しやり方を教えてくれた冒険の書を開く。
そこにはレベルが3に上がったばかりの王宮騎士ライアンの記録が記されていた。
お兄ちゃんがソフトと一緒にくれた公式ガイドブックを紐解きながらボスのピサロのてさきを倒したのは始めてから5日ほど経ってからだった。

第二章はお転婆な姫様アリーナとその家臣の物語だった。
慣れ始めた僕は確か3日ほどでクリアしたはずだ。
武術大会を終え城に帰ったアリーナは誰もいなくなった城を見ることになる。

第三章。

第二章の最後の謎は解かれないまま新しい主人公、武器商人のトルネコが主人公になった。
お金を貯めるのが目的でびっくりしたのを覚えている。RPGというのは敵のボスを倒すものだとばかり思っていたからだ。

この書はものすごく楽しく、第二章の謎なんて忘れて没頭し1日でクリアした。ゲームをやりすぎて母に初めて叱られたのはこの時だ。

第四章。

物語が大きく動いた。

美人姉妹の復讐劇。第三章がコミカルな話だった為、なおのこと驚いたのを覚えている。

父親の仇を探して物語を進めるうち、父親は何かとんでもない研究に関わっていたことがわかる。

そして、第四章はボスに惨敗して逃げる所で幕を閉じた。

そして、終章。

まず何に一番驚いたかというと主人公の名前だった。

「そそそそ」

多分いとこのお兄ちゃんが適当に入れたものであろう名がそこにはあった。しかも女勇者。いとこのお兄ちゃんはきっと僕が冒険の書を作るところから始めると思っていたのだ。

そして自分を庇って幼馴染が殺され、自分以外村の人々が皆殺しにされるという衝撃的なスタートで最終章は幕を開けた。


そそそそ、なんて名前にも4章の姉妹を仲間にした辺りから愛着を持った。

戦闘では今までと違い仲間にまったく命令できず、作戦に応じて動く。


そして、とうだいタイガー。

今では信じられない事だが当時の僕はここで死にまくった。多分30回はやり直したと思う。

今になって思うとドラクエ4は非常に優れたゲームバランスだったのだ。

最終章のこの段階までレベル上げと言う行為を行わずに進められていたのだから。

作戦の違いが小学校入りたての僕には少し難しく、公式ガイドブックとにらめっこしてレベルを上げて倒した。


そして物語は進み……魔族のリーダーにも抱える悲しみなどがあったことがわかって少し同情的な気持ちにもなった。

でも、僕の育った村を滅ぼしたのはピサロなんだ。

シンシアを殺したのは、ピサロなんだ。

そう思い、僕は剣を手にピサロの待つ悪の居城へと突入する。

そして、冒頭のラストボスに話は戻る。

僕がラストボスに挑んだパーティは

勇者、ライアン、クリフト、ミネア

の4人だった。

戦いは熾烈を極めた。

当時の僕は今と違い戦略的な事をほぼ考えないパワープレイで戦っていた。戦いの準備等はしていなかった。

勇者がギガデインを唱えライアンが斬りかかる。クリフトとミネアで全力で回復と補助。稼ぎ行為、レベル上げなんて考えもせず、ひたすらに前に進んだ僕のパーティはよく全滅をし、そのせいか手持ちの資金もやっと、そしてそれをメイン4人の装備に全力でつぎ込んでいるため馬車の中の仲間はそんなにいい装備をしていない。

デスピサロが進化の秘宝によって変化し、新しい頭が生える頃にはMPはほぼ尽きかけ、アイテムもほぼ使い切って仲間も過半数が倒れていた。

勇者、アリーナの2人しかもう戦える人物は居ない。

画面のウインドウは真っ赤で、それがより絶望を感じさせた。ドラクエの真っ赤な画面の絶望感、危機感はファミコン版ドラクエ4を最後に終わってしまったが僕はこの演出がとても好きだった。

戦いの果て、アリーナも死に、勇者のみが立っていた。

アリーナが死ぬ間際に2回連続で出した会心の一撃と、勇者の会心の一撃でデスピサロは遂に倒れた。

「……倒した」
「やった!!」

僕と友達は深夜にこっそりやっていたことも忘れて大きな声を出した。

友達の父親が隣の部屋からうるさい!と叫ぶ。

時計を見ると02:16と表示されていた。

時計には何の因果か僕の誕生日と同じ数字が並んでいた。

世界を救った勇者達は世界を周り、仲間達はそれぞれの故郷へ帰っていく。

そして最後に残ったのは僕一人だった。

ああ、そうだった。

僕の生まれ育った村はピサロに滅ぼされていたんだ。

誰もいない村で佇む。

村を見回して見ても誰もいない。

歩みを進め昔花壇があった所へ…。

すると突然花が咲き始めそこにはシンシアの姿が!

シンシアと抱き合う僕を祝福するかのように仲間達が村に来た所で物語は終わる。

僕は泣いていた。

泣いているという意識は無かった。

自然と涙が溢れていた。

シンシアが生き返ったのか、それともただの幻だったのかそれはわからない。

けど僕は、シンシアが生き返ったのだと思っている。


もしまだドラゴンクエスト4をプレイしていない人がいるなら僕は是非ともファミコン版を奨めたい。

他機種のキレイな画面では表現できない進化の秘宝の禍々しさが、そしてそれを超える感動が、そこにはある。
 
 
ドラゴンクエスト4(FC版)

1990年2月11日発売。

発売:エニックス(現スクウェア・エニックス)

※見出し画像は公式の物をお借りしています。問題があれば連絡をくださればすぐに消去します。


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