はっぴーばーすでー!
今日は私の誕生日!
昨日の前夜祭もとてもよかった。ちょっと思い出したらまた泣きそうだけど、今夜の誕生日配信も楽しみだ!初めて飲んだお酒は正直あんまりおいしく……いやこのことはいいか。
でも今はあおぎり高校躍進のとき!
立ち止まってなんかいられない。
今日も収録が待っているのだ。
少し遅れて現場に着くと既にメンバーみんなが来ていて、何かをしているようだった。
「あ、魂子先輩おはようございます」
「おはよー!」
部屋に入ると真白がこちらに気づいたようで、挨拶してくる。
早々におめでとうって言ってもらえると思っていたためちょっと寂しい。
しかし私ももうお酒が飲めるくらい大人なのだ。気にしちゃいけない。
「なにやってんのー?」
どうやら今日はカードゲームをみんなでやる企画のようだ。そういえば少し前のミーティングで言っていた気もする。
もじぴったんカードゲーム。
各プレイヤーに配られた文字が書かれたカードを場に出して言葉を作っていき、手札を使い切った人から抜けていくシンプルなカードゲーム。最初の手札は5枚。場に出せるカードがない場合はパスして山札から1枚引かなくては行けない。
今回の特殊ルールは、自分の名前か名字、自分に関わる言葉を作るときのみ複数枚同時に手札からカードが出せると言うもの。
とりあえずのルールを聞いて収録が始まった。
「あ、ここで【りえる】つくれるー」
「っと、ここ【あかり】行けるね」
「ここ【やまぐろ】」
「あ、ここ【こまる】」
次々に自分の名前を使っていくメンバー達。私もなんとしてでも自分の名前を使いたい。
「うーーーーーーん?【さゆ】(白湯)で」
どうも置けそうにない。仕方なく【さゆ】で場を凌ぐ。
「あ、ここ【ちようら】置ける」
次々と手札を使っていくメンバー達。
「あ……」
結局私の最下位で終わってしまった。
我部せんとねくろち、ちよちゃんがめちゃくちゃ強い。
真白とおこまも私に比べればポンポンと手札を使えていて、私のように言葉が思いつかずにパスなんて事も少ない。
むぅ……手強い。
続けて第2戦。
最初場に出た2枚のカード【ま】と【け】
【ま】があるということは【おとだま】も【たまこ】も作る事ができる。なんなら【たまっこ】を
作ることもできるのだけど……。
(【た】も【こ】【お】も【と】も無い……)
折角のチャンスなのだが手札に名前を作れるカードが無い。仕方なく【しま】(島)を作る。
「おっ、魂子先輩。【たまこ】はつくらないんですか?なら私が」
真白が【ま】と【し】を使って【ましろ】を作る。
続けておこまが【こまる】を作った。
次々と手札を使っていくみんな。やっぱり私だけパスがとても多い。
第2試合が終わる。
「また負けたぁ……」
この後何戦もやって、ときどきチャンスが来たけど結局一度も自分の名前を作る事ができなかった。
うぅ……私今日は誕生日なのになあ……。
今日はどうもついていないみたいだ。
そして最終戦が始まった。私以外全員1回は1位になっている。悲しいことに私は最下位ばかりだ。
真白が手札を皆に配る。半ば諦めながら受け取った手札を見た。
(【た】も【こ】もある……!)
これなら場に【ま】が出れば念願の【たまこ】を作る事ができる。
最初に場に出ているのは【う】と【く】。
私は手札の【い】を使い、【いう】(言う)を作った。
真白の番だ。真白は少し悩んだ後、私が置いた【い】の横に【る】を置いて【るい】(塁)を作った。
「ダメだー!野球の塁しか思いつかないー!」
真白に続いておこまの番。
「へっへー!【こまる】っ!」
さっき真白が置いた【る】を上手く使い、おこまは【こまる】を作り出した。
【ま】だ!【ま】のカードが場に出た!!
このゲーム、何度かやってわかったことがある。
今回の特別ルールは自分の名前、自分に関係する言葉を作るときにのみ場に一気に手札を出すことができる。
しかし、あおぎりのメンバーは【ま】が付くメンバーが4人もいる。私とおこまに至っては名字にも【ま】が付いている。
それだけ【ま】が必要なメンバーが多いにも関わらず、このカードゲーム、【ま】が一枚しかないのだ。
だから私やおこまのような【ま】が付くメンバーは自分の名前を如何に【ま】を使って作るか、他のメンバーは如何に【ま】を使わせないかが重要になってくる。
我部せんとちよちゃん、おそらくねくろちも早々にその事に気がついて【ま】を潰しに来ていたのだった。
「【る】が出た!じゃあ【りえる】で!」
「【り】が出たなら私は【あかり】で」
「んー【かた】(肩)で」
「続けて【かたち】(形)で」
私に手番が回ってきた!【ま】のカードはがら空きだ!
「やった!私は【たまこ】で!!」
遂に私も自分の名前を作る事ができた。嬉しい!
「おっ、魂子先輩遂に名前作れましたね〜偉いでちゅね〜」
「は?」
「はぁ?」
「…おい石狩お前ちっとは年上敬えよ」
「年齢でマウント取るようになったら終わりなんだよ!!」
「はあ?やんのかコラ?」
「上等だオラァ!」
途中、石狩といつかのようなやり取りをしたりしたりしたが、そのまま試合は続いていった。
「【げぼく】(下僕)で」
「【ねくろ】」
「【ちん】(朕)!おこま!わかってるな!!」
「すいません真白先輩!【こ】も【ほ】もありません!!【うし】(牛)!」
「あ、あんだってー!?」
「あ、また【あかり】作れるー」
「【いせ】(伊勢)!」
次々にみんな言葉を作っていく。私も負けてはいられない。
あと真白とおこまは今日も相変わらずでした。まる。
「えっと……【ちーむ】で!」
最終的に私は1位こそ逃したが、2位になる事が出来た。なんとか最後はビリを免れたぞ、と小さな達成感が心を満たす。
すると、私以外のメンバーから歓声が上がった。
「やったー!!!」
「できたー!!!」
真白とおこまが抱き合って喜んでいる。私にはなんのことなのだかわからない。
「魂子先輩、わかんないですか?盤面をよく見てください」
石狩がそんなことを言ったので盤面を見る。……わからない。
「これはー…」
我部せんが盤面のカードを取り除いていく。
やっぱりなんのことだかわからない。
私が頭に?を沢山浮かべているとちよちゃんと
ねくろちがカードを更に取り除いた。
「えっ……?」
盤面には【たまこ】【せんぱい】【たんじょうび】【おめでとう】の文字が残っていた。
「たーまこ先輩!!おっ誕生日おめでとうございまーす!!」
「「「「「おめでとうございまーす!」」」」」
それに合わせて、どこから取り出したのか真白とおこまがクラッカーを鳴らす。メンバーみんなからのお祝いの言葉。
「たまこー!誕生日おめでとう!!」
それに続いて部屋のドアを開け、夏希がケーキとラーメンを持って入って来た。
「えっ?えっ?」
色々な事が一度に起こって、イマイチ状況が把握できない。
でも、嬉しい!と言う感情が脳がバグったみたいに出力されてくる。それだけは確かだった。
「何やってんすか、今日の主役が」
「ほーら無理言って野郎ラーメンも出前して貰ったんだからのびないうちに早く食ーべて!」
まだよく状況が把握できていない私にそう言うと、夏希が抱きついて来た。
久しぶりの夏希は、やっぱりいい匂いがした。
野郎ラーメンを食べて、ちょっと無理してケーキも食べる。明らかに食べ過ぎだけど、今日くらいは許してもらえるだろう。
ちょっとラーメンとケーキの食べ合わせが悪すぎる気もしたけど皆の心遣いが嬉しかった。
「えっと……」
収録を装った、こんな手の込んだサプライズ。
多分準備等ものすごく大変だったはずだ。
そんな大変な事を私の為にやってくれたのがとても嬉しい。
夏希とも久しぶりに会えてとても嬉しかった。
色々と皆に言いたいことがある。
けどやっぱりこれを最初に言っておきたかった。
「みんな大好き!ありがとうね!!」
了
💜あとがき💜
魂子さん誕生日おめでとうございます!!!
楽しんでいただけたなら幸いです。
多分魂子さんこのSS読むことないと思うけど!
読んでくれたらすごく嬉しいんだけど!!
それでは、また。
💜別に読まないでいい方のあとがき💜
もじぴったんカードゲームは安いのに楽しいからおすすめです。
元々がすごくシンプルなルールなので、自分たちで色々な特殊ルール考えてプレイするのがすごく楽しい。
このゲーム、実際にあおぎりメンバー達にやって欲しいゲームなんですよね。
すごく面白くなりそう。
今回のネタは実際に昔サプライズで友達にやったことあるんですけど、手札山札完全に仕込んだ4人で1人相手でも成功率が3割も無い鬼畜条件でした。
まあ6対1でやればかなり成功率は上がるんじゃないでしょうか。
さて、このルール。終了盤面見た人は気づいた方もいるかもしれませんが、石狩さんがめちゃくちゃ有利です。次に千代浦さんが有利。
石狩さん、【あ】以外が複数枚あるので手札に来やすいわ場にも出やすいからアクセスしやすいわで本当に有利です。【いしかり】【あかり】が多分毎回のように作れますね。
逆に大代さん本当に不利です。なにせ【お】が一枚しかないので【おおしろ】が作れない上、【ま】が競合するメンバーが他に三人もいるため【ましろ】を作るのにも一苦労。【ろ】も一枚しかありません。【どなー】を作るのもかなり難しいんじゃないでしょうか。
まあ、もし【お】が2枚あったとしても【たんじょうび】を【おたんじょうび】に変えるからどのみち【おおしろ】作れないんだけど。
まあ実際は有利不利関係なく魂子さん以外全員で文字作るために盤面作りに行ってるんですけどね。
……本当は作中の3試合全てちゃんと盤面と展開と各メンバーの手札と山札の順番考えて進行も全部書いてたんですけど、こんなクソ長いの誰が読むねんって感じだったので大幅にカットしました。4万文字とか読むの書いた僕本人でも時間あるときに読もって後回しにするわ。
あと書いたあと思ったけどその場合盤面の撮影超大変。
まあ、展開考えるの面白かったから良しとしよう!
では、また。