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みんながいるよ

 「ちょっと、大丈夫?」
 教育実習生の我部りえるは音霊魂子の不調を聞きつけて部室に入ってきた。
 りえるは横になった魂子を少し診ると、
 「疲れ、溜めすぎ」
 呆れた様にそう言った。
 「もうしわけない…」
 申しわけなさそうに魂子は答える。



 最初に机に突っ伏していた音霊魂子を見つけたのは栗駒こまるであった。
慌てて救急車を呼ぼうとしたのを魂子に止められ、 


 

魂子は石狩あかりに呆れられつつも大代真白に背負われ、水菜月夏希に頭を撫でられながら部室に向かった。




 

 部室に行く道中も夏希とこまるは魂子を気遣いながらゆっくりと歩調を合わせていたし、あかりはなんだかんだ言いつつも心配で声が震えていたし、真白はずっと心配そうに背負った魂子を気遣っていた。 


 

 部室に着くと、心配した千代浦蝶美が慌てて飛び出してきて、魂子が休む準備を終わらせていた山黒音玄がひょっこりと部室から顔を出す。
程なくして、連絡を受けた我部りえるが息を切らせながら部室に到着した。




 「魂子先輩、じゃあ今夜の配信休むってツィートしときますね」
 こまるの発言に、
 「いや、配信はやるよ」
 魂子は反論したが、
 「「「「「「駄目です」」」」」」
 あっさりと却下された。
 「うぅ……」
 流石の魂子も6人に止められては配信する事は出来ない。
 「もう、魂子先輩、本当に気をつけてくださいよ。あ、ほらこのリスナーさんボイスメッセージをくれてる」
 こまるは、魂子の体調不良で配信を休む旨を伝えるツィートのリプを魂子に見せ、再生した。

 「たーまーちゃーーーーーん!!!ちょっと最近頑張り過ぎちゃって熱出しちゃったんだね!いつも元気をもらってる俺はこんなに元気だから!たまちゃんが元気になるまで待ってるよ!ゆっくりと休んで身体ちゃんと治してね!!寂しくなっても、いつでも俺達がついてるからねーーー!!!」

 こまるのスマホからはリスナーからの応援する声が聞こえた。よく名前を見る……読み方また忘れた。なんて読むんだっけ。た、た、たま……?まあ今はいいか。今度調べておこう。リプライの軒数もどんどんと増えている。どれもみんな魂子の健康を願うものである。

 「いつも、元気にしてあげられているなら、嬉しいな」
 「そうだよー。そう思うんならはよ元気になれー」

 真白はソファーベッドに寝た魂子の頭をポンポンと軽く叩いた。



 「それじゃそろそろ」
 「たまこー?ちゃんと寝とかなきゃ駄目だよー?」
 「放課後にまた来るけど、まだ熱があるようなら問答無用で病院につれていくからね?」

 各々が教室に戻ろうとしたその時だった。

 「あの」

 魂子が、とても寂しそうに、


 「一人で寝るのは寂しいので眠るまで誰か手を握っててもらえないでしょうか……」

 そう言っ……なんだこのかわいい生き物。

 「仕方ないですね、じゃあここは大代が」
 「いやいやここは教育実習生の私が」
 「いやいやいやここは一番付き合いの長い私が」
 「夏希先輩確か補習あるって言ってたじゃないですか。仕方ないから私が魂子先輩見てますよ」

 各々が、魂子の手を握る役に立候補する。
そんな騒ぎの中、ちゃっかりと音玄は魂子の手を握っていた。

 「みんな、病人の前なんだから静かにしないと」
 「あ、ねくろちズルい!わたしも!」
 「もうジャンケンで決めましょうよ!」

 ジャーンケーン……

 自分の手を握る権利争奪ジャンケンが決着した頃には、やはり疲れていたのか、魂子の意識は闇に落ちていた。




 魂子が目を覚ました時、もう日は沈みかけていた。夕日が窓から差し込んでいる。

 ソファーベッドの周りには、水菜月夏希と、石狩あかりと、大代真白と、山黒音玄と、栗駒こまると、千代浦蝶美と、我部りえるがいて、心配そうに魂子の顔を覗き込んでいた。

 「魂子。もう大丈夫?」
 「ん……熱はもう大分下がったみたい」

 夏希の問いに、額に手を当てながら魂子は答えた。結局、皆で傍にいてくれたんだ。

 魂子は嬉しくなって、

 「みんな……あの」

 けれど、照れくさそうに、

 「ありがとう、ね」

お礼を、言った。

 「何言ってんですか、あらたまって」

 あかりは呆れた様にそう言うが、その表情に先程までの陰はない。

 「魂子先輩立てますか?」
 「多分……いや、やっぱり真白。ちょっと肩を貸して」
 「はい!」


魂子は思う。

ああ、本当に。

この最高の人達と、出会えてよかった。

誰かが困っていたら、手を貸そう。
誰かが立てないのなら、肩を貸そう。
誰かが歩けないなら、背負ってゆこう。

一人じゃ無理でも、この最高の人達と、
ネットの向こう側には私達に力をくれる人達がたくさんいる。

大丈夫。私達はこれからも前に進んでいける。

――私は、一人じゃないから。

――みんながいるから。



 都内のどこかに存在している『あおぎり高校』。
その学校には「理想の姿で『好き』なことを好きなだけ」楽しみたい生徒たちが集う。

 授業内容はただひとつ。
『好き』なことに全力で取り組み、自分の『好き』で夢を叶えること。

 今日も今日とて生徒たちは、
「おもしろければ、何でもあり」の学校に通いながら、
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スペシャルサンクス

球磨川さんと愉快な仲間達。

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