『自分の小さな「箱」から脱出する方法』を読んだ【自分を裏切ってはいけない】
タイトルを見たとき、内向的な人向けの本なのかな?と思ったが、実際には人間関係を扱っていること以外全然違う内容だった。
小説仕立てになっていて、エリート会社員である主人公が転職先の企業で上役とのミーティングを行い、そこで「箱」について学んでいくというお話になっている。
本としては読みやすいけれど、内容は難しい。無理やりまとめるなら、
他者に偏見を持っていないか確認して、持ってたら認識を改めた方が良い
自分がするべきだと思ったことを放置してはいけない
上記2つを両方とも意識した方が良い
みたいな感じになる。
個人的にはかなり刺さる本だった。
「箱」とは何か
人が「箱」に入る時
この本では、自己欺瞞を行うことを『「箱」に入る』と説明している。自己欺瞞とは読んで字のごとく、自分で自分を欺く行為のことで、より具体的には、
するべきだと思ったことを、しないこと(自分への裏切り)
によって行われる、としている。こうして「箱」に入ったあと、その人に何が起きるかというと、
自己の正当化が始まる
(「しなかった」理由を考えて自分を上げ、他者を下げる)「自己の正当化に利用できるかどうか」で物事を判断するようになり、目の前のことに集中できなくなる
他者を「箱」に入れて責め合い、共謀するよう仕向ける
こうしたことが無意識に行われるようになる。無意識なので本人は気づかないのだが、周りの人にはバレる。いつでも自己保身のことばかり考えている人が人間関係で上手くいくわけがないので、良くない状態なのがわかる。
上2つはともかく、3つめはわかりにくいので、次の項で説明する。
「ひどいやつ」が近くにいると都合がいい
この本で挙げられているのは母親と息子の例で、すでにふたりとも箱に入って(自分を正当化しようとして)いる。
母親は言うことを聞かない息子に腹を立てており、「自身は良い母親であろうとしているのに、息子にはそれがわからない」と嘆いている。
一方の息子はというと、「本当は良い息子であろうとしているのに、母親が口うるさいのでその気を無くす」と思っている。
お互いが相手のせいにすることで、自分を正当化しているわけだ。
そして恐ろしいことに、この時無意識では「相手の態度が軟化したら、自分のことを正当化できなくなるので困る」と考えているので、状況は変わらないし、むしろお互いにこの状態を維持しようとする。
この母親は作中の中盤で出てきてミーティングに参加するのだが、「今考えると自分は息子に対してわざと守れそうもない門限を言い渡し、息子がそれを守ったのがわかるとがっかりした(当然態度は変えなかった)」みたいなことを言っている。
自分が「こうありたい」と思う(のに、周りが助けてくれない)
相手に「こうあってほしい」と思う(のに、相手がわかってくれない)
自分が箱に入っているときは、()内の方が大事になってしまって、求めているものからどんどん遠ざかっていく。
「箱」から脱出するには
箱に入ってしまうとストレスはたまるし協調性はなくなるし集中できないし、ビジネスもプライベートもひどいことになる。
しかし誰しも気づいたら箱に入っているうえ、箱の中にいるときは自分のことしか考えなくなるので、行動を変えたところで箱の外には出られない。
では人はいつ箱から出るのかというと、なにかのきっかけで「もしかして自分に問題があるのでは?」ということに気づいた瞬間、言い方を変えると
他者に抵抗するのをやめたとき
に人は箱の外に出る。この本曰く「さっと光が差したような瞬間」で、この時ようやく人は他者のために動くことができる。
「箱」に振り回されないために
本の最後には、上役が主人公へ「このメモを渡しておくから、今日の内容を忘れないようよく見返してくれ」と言って意識するべきことのリストを手渡す。これを端折りながら自分なりにまとめたのが以下。
自分を裏切らないこと
他者の箱ではなく、自分の箱に気を配ること
他者の箱を見つけ、(特に、箱の例えを使って)相手を責めないこと
自分が箱の中にいると気づいたら、それを認めて、相手に謝って先に進むこと。そのための努力を惜しまないこと
「手を貸してもらえるかどうか」ではなく、「手を貸せているかどうか」に気を配ること
これらを守り続けるのは大変だが、自分をまっとうな人間に見せようと躍起になるのに比べれば、こちらのほうがずっと良さそうである。
「箱」で説明できそうな実体験
本当は良いヤツ?
学校に行っていたころ、「もっと冷酷な奴だと思ってたけど、良い奴だったんだな」と言われたことが、覚えている限り3回はある。
自分は自分で、「なんか怖かったから避けてたけど、話してみたら普通に良い奴だった」と思ったことが結構ある。
「話しかけようと思えば話しかけられるけど、アイツ○○だからなー」といった具合で理由付けをして、相手に対して箱に入っていたと言えなくもない。
それでいざ話してみると、「勝手に自分が思い込んでただけだったわ」と気づいて箱から出た、ということになる。
この場合は箱に入り続けていても問題は起きない気がするけど、箱から出たことで人間関係は改善した。
どうしようもないヤツ
この本を読み終わったとき、自分には思い当たる節があった。
良く話す友達の中にひとりどうしようもないのがいて、話を聞くたびに呆れるし疲れるので最近はあまり関わらないようにしていた。
しかし考えてみると、以前はそこまで悪い印象はなかったし、よく相談に乗ったりもしていたし、当時と今とでその人自身はあまり変わっていない。
つまり知らない間に自分が箱に入っていて、偏見を持ってその人を見ていた。
それで急に申し訳なくなったので謝ってみたら、困惑しつつも「最近ちょっと違和感があって話すのを控えていた」と教えてくれた。
その人は全く本を読もうとしないタイプなので、当然箱の話は知らない。箱の中に入っているとき、自分では気づかなくても周りにはバレるというのはたぶん本当だ。
おわりに
この本にも書いてあったと記憶しているが、すべての人に対して箱の外にい続けるのは現実的ではない。
しかし、普段関わる人たち、とりわけあまり良く思っていない人に関しては、この本の内容をよくよく意識した方が良いと思った。
その他重要なこととして、相手が箱の中に入っているからといって自分まで箱の中に入ろうとしてはいけないというのもあったのだが、うまくまとめられなかった。
ちなみに著者であるアービンジャー・インスティチュートについては、変な名前だなあと思いながら調べてみたら、個人名ではなく国際的な研究機関で、「箱」やマインドセットの考え方をもとに企業研修などを行っているらしい。
今もそこそこの頻度で無料のオンライン説明会を東京でやってるらしく、正直ちょっと面白そうだと思った。