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Screen「Persona」

おそらくライターとしての活躍で知られることが多い和久井光司氏が80年代に率いていたスクリーン。スクリーンって今の時代で振り返ると立ち位置的に微妙な位置になってしまうのかもしれない。時代的には東京ロッカーズ周辺って訳でもないし、後に東京周辺のポップなバンドの中心格だったと言われても、そのシーン自体が今改めて振り返られる機会があるかと問われると難しいんじゃないかな。このアルバムが「80年代インディーズの名盤」って扱いなわけでもないし。でも僕は名盤だと思ってますよ。

本作の概要

本作はそんなスクリーンの自主制作によるファーストアルバム。オリジナルの発売は1981年11月。Discogsによるとソノシート付きのバージョンもあるらしい。付属のソノシートはファーストシングルの音源ってことなのかな?アルバム自体は2001年にCD化されてます。ちなみに、スクリーン活動当時のリリースは意外と多いですが、この2001年のリイシューシリーズでほぼ音源のカバー可能。ソノシートの音源はこのシリーズでは別の編集盤に収録されてます。メンバー的には後に白井貴子さんの公私共にパートナーとなる本田清巳氏がリードギターとしてスクリーンのメンバーに名を連ねている時期です。本田氏はこのアルバム発売後スクリーンを脱退。


スクリーン的には異色作かも

スクリーンと言えば先ほど書いたように80年代初めからポップな路線で、自然に集まったとしか言いようのない周辺バンドと共に一つのシーンを形成したとされる存在ですが、このアルバムははっきりとニューウェーブ路線になってます。とにかく丁寧に作られていると感じるし、録音も良いと思います。ライナーによると当時としては異例の4ヶ月かけての録音しているらしい。リズムはスタジオ、他の上物は練習スタジオで録音されたとのことだけど、ちゃんとバンドの音に聴こえるしニューウェーブらしいヒリヒリした感触もちゃんと出てる。通常のバンドが使う楽器だけでなく、マリンバやアコーディオンも効果的に使われているし、大太鼓のような音はバスドラのケースを叩いた音を吹き抜けで録音したものってのも良いエピソードではないですか。本人達にしたら赤面物の部分もあるのはわかりますが、一リスナーからすれば今聴くとハッとするような箇所がそこだったりもしますしね。


アルバムの内容

アナログではA面にあたる前半は、後にバンドが向かうポップな路線も垣間見える比較的勢いのある曲が並び、後半はダークでノイジーですらある曲がまとまっています。歌詞は全体的にダークな世界観で統一されてますかね。アレンジに関しては2001年盤のライナーで和久井光司氏がご丁寧に元ネタの解説をつけてくれていますが、それがなくてもある程度「ニューウェーブ的なる音楽」を聴いている人なら察せられる部分が多いんじゃないかな。レゲエにファンクやダブからテクノまでこの時代のトレンドは大体入ってます。あと、やはりムーンライダーズを思い出させる箇所もあります。その後の活動で遠くもないけど近い位置にもいなかったように思いますが。余談になりますが、このスクリーンをはじめとして80年代東京ポップ関連のバンドに与えた影響として、ムーンライダーズ「青空百景」というアルバムの大きさは物凄いですよね。


このアルバムで胸が熱くなるところ

正直、アレンジに関しては幅広げすぎだとも思うし、それがこのアルバムを後年振り替え難くしてる原因であるとも思う。でも、パンク以前からマニアックと言って良いのであろう熱心なロック少年達が、パンクやニューウェーブに刺激を受けて出した音なんだろうなと考えると、僕はそこに胸が熱くなります。初期のカーネーション(前身バンド耳鼻咽喉科からカーネーションにバンド名が変わるミーティングの際に部屋で流れていたレコードの一つがスクリーンの代表作「Life Goes On」だったなんて話も)とかもそうですね。膨大なインプットから愛情(リスペクトともいえる)を持って、そこから自分達のオリジナルを捻り出そうとしたその姿勢がたまらなく好きです。後に渋谷系と言われたような人達も姿勢としては近くはあるけど、やはりどうしてもスノッブな印象が加わってしまうのがちょっとね…となりますね。


完全な余談

余談になりますが、80年代前半の日本のインディー盤って、内容は良くても録音的に今聴くと厳しい場合がそこそこの割合であると思う。僕自身がパンクとかニューウェーブを聴く機会が多いので、サンプルとしては偏りがあるとは思うけど、他のロックでもあまり変わらないんじゃないかな。あと、インディー盤に限らずメジャーでレコーディングされたものも同じこと言えるかも。インディー盤だとレンジが狭いというかモコモコしてたり、メジャー盤だと分離だけ妙にすっきりくっきりしていてバンド感が薄れていたり。この辺はそういう時代だったということで、誰が悪いってわけでもないですから。インディーにもメジャーにもその音像が上手くはまっている作品もいっぱいあるとは思いますし。それが解消されるのはインディーだと1985年頃なんじゃないかと。技術の進歩的な部分は当然あるとしても、音楽的な間口の広がりに対応できる録音術が浸透しつつもあったと思うし、それまでインディーズの中心だった個人レーベルから、ある程度のビジネスとしてインディーのレコード作るレーベルが台頭してきたってのもあると僕は思います。

結論

このアルバム、僕は80年代前半の日本のインディー盤アルバムの中ではトップクラスで好きなアルバムです。もっと多くの人に聴かれても良いと思うんですけどねぇ。オリジナルのLPを今から探すのは色々大変な部分もあると思いますが、2001年発売のCDはもし見付けたら手に取りやすい感じじゃないかと思います。なので是非。

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