The STALIN「豚に真珠 ~LIVE at 横浜国立大学 1980.11~」
年末年始の休みの間では一番聴いたCD。
これまで未発表だったThe STALIN結成半年後のライブ。視聴用動画を見て音も良いし即購入を決意した。
CDを再生すると「猟奇ハンター」の途中から始まる。多少のフェードイン処理はされているけど、いきなりフルスロットルで走り出したような感じがしで、欠けているのが気になるよりどちらかと言うと「おぉっ!」となる。サウンドボード録音であることは確実なんで音質自体は良いと思うけど、前半は各楽器のバランスが悪かったりもする…いや、バランスの悪さは全編かな。何しろ演奏が良い。この音源の演奏が当時のThe STALIN的にどれくらいの出来なのかはわからないけれど、今こうして聴くには素晴らしい演奏だと思う。
今年再発された「trash」を聴いて、改めて「trash」以前の金子あつし時代の方が好きかなぁとか薄っすら感じていた。割とかっちりとしたギターでThe STALINを万人受けする(ってのも語弊はあるとは思うけど)パンクバンドにしたTAMに比べて、金子あつしのギターはガシャガシャしていてある意味「NO New York」の匂いもするポストパンク的であるように感じる。今回のCDでも金子あつしのギターは大暴れで、全方向に引っ掻き回すような迫力がある。前半の数曲でギターの音がかなり引っ込んでしまっているのが残念に思う。
ひたすら安定しつつ強烈なイヌイジュンのドラムと、意外なほどグルーヴを感じる杉山シンタロウのベースによるリズム隊は最初から最後まで疾走し続ける。
今回のCDは遠藤ミチロウのボーカルがとにかく前面に出ている。それを聴いていて、当時日本でパンクロックやそこから派生したような音楽をやっていたバンドの中で遠藤ミチロウのボーカルってのは突出してたんじゃないかな?と思った。東京ロッカーズ系に多く聴かれるアングラ臭い理屈っぽいボーカルでもないし、変に芝居がかった感じもないし、ストレートなパンクロック系にありがちな不良っぽさもあまりない。どんな言葉で表現するのが良いのか考えた結果、「変態っぽい」が一番かな。ヌメヌメしていてセクシーな妖しさもあるけど言葉は妙にはっきりと聴こえて、凄い存在感。同じころに出てきたバンドでのボーカリストでは江戸アケミと町田町蔵にもそれは言えるかな。「STOP JAP」以降はヌメヌメ感が薄れてるのを改めて実感した。
今回のCDでThe STALINはパフォーマンスがなくても十分に変態っぽいバンドだったんだなと気付きました。凄く良いライブアルバムです。