『 アカイユメ feat.9191』諸資料公開・制作振り返り
※注意※
この記事にはゲームワールド『 アカイユメ feat.9191』のネタバレが多少、含まれています。お読みになる前にゲームワールドをプレイされることをお奨めします。
ガルペノです。先日9191氏とコラボした合作ホラーワールド『 アカイユメ feat.9191』を公開しました。この記事ではこのワールドの制作にあたって作成したスケッチや裏話などをガルペノの視点から紹介していきます。
制作
きっかけは8月のCluster GAMEJAMの後、clusterワールドクリエイター同士の繋がりがSNSなどではあっても、ワールド制作でクリエイティビティが掛け合わされる機会があまりないと感じ、コンテストとは別に通常のワールドとして誰かとコラボしたいと考えておりました。
そこでガルペノと同じワールドクリエイターの一人、エモーショナルなワールド制作で名を馳せておられる9191氏にお声がけをしました。9191氏とはTwitterのDMやclusterの通常ワールドのVCで連絡を取り合いながら、制作はUnity Collaborateでプロジェクトファイルを共有しながら行いました。
しかしお互いのプレイベートの都合があったり、clusterのコンテストや新機能の到来、Unity Collaborateのいまいちな仕様などで完成まで一直線にいったわけではありませんでした。最終的に完成したのが今年の初めになってしまいましたが(あれどうなったんだろう、どうしよっかな)ともやもやしながら凍結にならず、みなさんが遊べる形で公開できて良かったです。
コンセプトスケッチなど
ここらかは9191氏とアイデア・ビジュアルのすり合わせを行うためにガルペノが制作したスケッチ・CGモデルデータを紹介します。没になった案も多く含まれています。基本的にガルペノが提案し、9191氏と協議の上でワールドに組み込むかを判断していきました。
コンセプトスケッチ:ステージ「館」
古典的なホラーゲームに登場するような洋館を意識しました。
コンセプトスケッチ:ステージ「館の外(沼地)」
洋館の外に出るシーンがある場合は背景として制作予定でした。
コンセプトスケッチ:ステージ「迷路」・退避場所・モブキャラとの会話
敵NPCとの追いかけっこになるとアクション要素が強くなるので、簡単に隠れられる退避場所(その空間に入ると敵NPCには見えなくなるような場所)のアイデアがありました。加えて敵NPCが巡回し、目線の先をサーチライトのように照らすホラーゲームやかくれんぼゲームにありがちなアイデアもありました。
ただこのワールドでは採用されなかったので、ガルペノ個人作の「力の雫と影の声」にアイデアとイメージが流用されました。
また、プレイヤーと少女らの他にもNPCが迷い込んでおり、会話するという要素のアイデアもありました。
コンセプトスケッチ:壁を突き破ってくる敵NPC
ある程度ゲームに慣れてきたプレイヤーを驚かせる要素として、壁を突き破る敵NPCのアイデアがありました。バイオハザードのタイラントのオマージュです。
コンセプトスケッチ:ステージ「破壊された現代の街」・抽象形の敵NPC
舞台として破壊された現代の街というアイデアがありました。
コンセプトスケッチ:ステージ「体内」・気味の悪い敵NPC
舞台として生物の体内のようなステージ、そこに登場する気味の悪い敵NPCのアイデアがありました。
コンセプトスケッチ:ステージ「塔の内部」
このステージは実際にワールドに採用され、最終場面前である井戸のステージになりました。塔の中と外を行き来して、崩れかかった足場を登っていくアクション要素として考案し、最終的に円柱の内壁を登るものになりました。
コンセプトスケッチ:ステージ「抽象世界」
舞台として抽象的な世界のアイデアがありました。
コンセプトスケッチ:敵NPCの見た目案
敵NPCの見た目として、無機質で無感情なガーディアン系、ヘドロを纏ったような醜い系、元々は人間だったゾンビやミイラのような人型系のアイデアがありました。
コンセプトスケッチ:アレ
今回ホラーゲームを作る際の発想元になったフリーゲーム「青鬼」の敵NPC:青鬼に近づけた不恰好な人型、そして長い髪のビジュアルで、敵NPC「アレ」がまとまりました。人間の手足や顔が背中に張り付いているのは先述のヘドロ形からのアイデアで、襲って食われた人間の成れの果てという設定があります。
3Dモデル:アレ
スケッチを踏襲しながら3Dでモデリングされた敵NPC「アレ」です。なおBlender上のマテリアルなので、Unityでは見た目が少し異なります。モデリングと同時に複数パターンあるアニメーション設定もBlenderで行い、一つのFBXとしてエクスポート、Unityへインポートしました。
眼球は「振り向きドラゴン」などで有名なホロウマスク効果を使い、頭がどっちを向いていてもカメラ目線になるような作りにしました。
Unity上のNPCとしては館の通路をランダムで歩行し、背中からぼとぼとと人体の一部を落とすパーティクルを付与しています。
コンセプトスケッチ:少女の見た目案
プレイヤーが守る対象となる、少女のビジュアル案です。9191氏からは「左下のピンク色の服の女の子と同じくらいの年齢で、病院の患者服を着ている感じ」という提案があり、少女のビジュアルはそれで決定しました。
コンセプトスケッチ:少女の魂の容れ物の見た目案
助けた少女を連れ歩くのにアイテムとして持ち運ぶ、というゲームシステムでまとまりましたが、そのまま体を鷲掴みにするわけにもいかないので、何かの器状のものに魂が入る、という表現になりました。
その魂が入る容器のビジュアルの案がいくつかありました。このスケッチには挙がっていませんが、最終的にランプに閉じ込められたという設定になりました。プレイヤーがアイテムを使うと周りを照らす、という補助機能の役割が与えられました。
コンセプトスケッチ:少女
少女本人のビジュアルスケッチです。一見すると病弱の女の子で、舞台となる世界に迷い込んだ被害者のようですが、実は無邪気な動機でプレイヤーの迷い込んだ世界を破壊しかねない、そういう裏の設定があります。
詳しくは9191氏の方でご説明いただけるかと思います。
コンセプトイラスト:病床の少女
キャラクターボード的な少女のスケッチから、もう少し少女の持つ性格や印象を引き出すために制作したイラストです。
3Dモデル:少女
スケッチを踏襲しながら3DでモデリングされたNPC「少女」です。なお画像はBlender上のマテリアルですが、UnityではRealToonシェーダーを用いたため見た目が少し異なります。モデリングと同時に複数パターンあるアニメーション設定もBlenderで行い、一つのFBXとしてエクスポート、Unityへインポートしました。
コンセプトスケッチ:案内人
プレイヤーが迷い込んだ世界の水先案内人となるキャラクターのスケッチです。9191氏がよく使用しておられるアバター:黒松が、9191氏のワールド「回想列車」でプレイヤーを新しいサーバーへ案内する駅員として用いられたのに着目して、銀河鉄道999の車掌さんのイメージと掛け合わせ、怪しげな人物として考案しました。
3Dモデル:案内人
スケッチを踏襲しながら3DでモデリングされたNPC「案内人」です。なおBlender上のマテリアルなので、Unityでは見た目が少し異なります。スケッチには尻尾がありませんでしたが、3Dモデルでは尻尾を追加しました。
またおまけとしてVRMアバターのリグ基準で作成したので、9191氏にアバターとして使ってもらったこともあります。
制作を振り返って
昨年の8月末より企画・制作が始まって、年をまたいでしまいましたがなんとか完成しました。コンテスト以外でコラボする機会はclusterではまだ文化や流行としてない中で、お互いワールドクリエイターとして良いものを作ろうという熱意がマッチしたと思います。
しかしお互いのやりたかったことを100%出せたわけではなく、ガルペノのアイデアでオミットした要素、9191氏のアイデアでオミットしていただいた要素、どちらもあります。それらは個人の制作で再利用されるものかと思います。
またclusterの共同ワールド制作はコンテストにおいてよく見られますが、コンテストとは関係ない通常の制作・公開としてコラボするよりも、コンテストなどの比較的短期間で期限が決まっているほうがモチベーションを全投入しやすいかなと思いました。
これからコラボもありかもとお考えのみなさんにお伝えしたいことですが、Unity Collaborateはお薦めできません!
まず5人までしかプロジェクトファイルを共有できないこと、5GB以上のストレージ(プロジェクトファイル全体の容量)は有料であるということ、Unityアカウントを実名で登録しているとメンバーに共有される上にプロジェクトの更新時に表示されること、誰も触っていないアセットを触ったことにしたり勝手にどこかへ消し去ったりすること、他にも色々と困った部分がありました。
細々したアセットを共有する場合だったり、有料のアセットをプロジェクト単位でメンバーと共有できたりする際には有用ですし、Gドライブなどのクラウド経由でパッケージのインポート/エクスポートするよりは断然楽です。ただし更新に迅速性や共有範囲の重なりがあまりないのであれば、Unity Collaborateでなくてもいいなと思いました。
ガルペノは今回が初めて他のユーザーとのコラボ経験になるので、まだまだこれから勉強していく部分はたくさんあります。今回のように主従関係のない完全な共同制作だけでなく、黒歴史イベントでてつじんさんに黒歴史評価システムを提供したような、一部分での制作協力なども展開していけたら面白そうだなと思います。
そして先日るーしっどさん主催のイベント勉強会にて思い立ちましたが、イベント会場や通常ワールドでのCCKの仕掛け開発で、誰かに協力したいなとも思いました。ガルペノはよくCCKの先進技術開発をしているので、その知見を活かしてCCKを使った仕掛けの制作や監修、顧問的な役割が自分にできたら面白そうです。
ただゲームワールドのゲームシステム丸ごととなると手に負えない部分も出てくるし、そもそもゲームシステムはゲームワールドの根幹の部分なので、そこをガルペノが全面的に作るのはなんか違うなと思います。
そんな感じで、ガルペノ視点による9191氏との合作ホラーワールド『 アカイユメ feat.9191』の諸資料の公開と振り返りでした。9191氏からも何かしら記事が公開されるかもしれません、お楽しみに!
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