ジョルダン標準形について(モティベーション編)

注意

 この記事はジョルダン標準形が考えられた理由を考察していくものです。数学的に不正確な部分や、論理の飛躍があるかもしれませんが、そこは目を瞑って下さい。

線型代数の存在意義

線型代数はなぜ生まれたのだろうか?
 一つはその名の通り代数学のためであろう。線型代数は群論、環論、ガロア理論においてよく登場する。特にガロア理論では体の拡大の理論の根幹を成す非常に重要な理論だ。
 一方、解析学では多変数解析や定数係数同次微分方程式などで登場する。幾何学においても、線型空間は幾何的な解釈を与えられる概念であろう。
 こうして考えてみると、線型代数は代数だけに留まらない広い概念であることが分かる。線型代数はいったいどのようなモティベーションのもと生まれたのだろうか?
 歴史的に見ると線型代数は連立方程式の解の存在と一意性、そしてその具体的な表示を考える上で誕生したのではないかと思う。この研究から行列が生まれたのだろう。では、線型空間や線型写像はどこから来たのだろうか?それは恐らく上のような研究の過程で、行列を"簡単な形"にする必要があったからだろう。

写像の研究

 行列の研究から生まれた線型代数は、より一般に線型空間や線型写像を扱うようになった。するとその写像自体に注目することは自然であろう。
 線型空間については、その構造がスカラーとなる体の直積でかけることは研究の初期の段階で分かったことだろう。(そうでもないか?まぁでも基底の存在と一意性は、特に高度な線型写像の知識を必要としないし、そういうことにしておこう)すると、当然興味が湧くのは写像の方になる。
 異なる線型空間上の線型写像については、両方の線型空間で自由(ここでいう"自由"というのは両方の線型空間で異なる基底をとるということ)に基底を取ることでSmith標準形が与えられる。
 しかし、同一の線型空間上の線型写像(即ち線型変換)では当然二つの基底が一致していなければならない。(そうしないと結局Smith標準形に帰着されてしまい、線型変換の性質を探るのに十分な情報が得られない。しかし二つの線型空間で基底が一致していれば、その線型変換はどのように基底を写すのか、即ちその線型変換の"性格"を知ることができる)この研究こそが対角化であり、ジョルダン標準形なのだ。

続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?