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パナマ文書で話題のモディリアーニ。なぜ女性像は首が長いのか?

モディリアーニ(1884-1920)といえば、ピカソやブラック、キスリングたちとも親交のあったエコール・ド・パリの画家として有名です。
絵は、首が長く、顔も細長く、目はアーモンド型で瞳のない女の肖像を思い浮かべる人がほとんどでしょう。
実際、35年の短い生涯の中で400点を残しましたが、その大半が人物しかも女性が多く、どれも縦に長い顔が特徴です。

なぜ瞳がないのか、そしてなぜこんなに細長いのか?

一説では、モディリアーニはもともと彫刻志望だったものの病弱なために力仕事と粉塵に耐えられずに画家に転向。
そのため絵の中でも彫刻のような目の表現を求め、デッサンの練習に使われる石膏彫刻を描くときのように、瞳の部分を暗い影で表しているといわれています。
またそもそも彫刻に興味をもったのはアフリカなどの原始美術に影響を受けたからで、アフリカ原住民が祭りで使う仮面がそのモデルではないかとの意見もあります。
いずれにしても原始美術をもとに、優美で抒情的な造形を生み出していったといっていいでしょう。

モディリアーニは1920年、もともと病弱だったうえに酒と不摂生がたたって結核性髄膜炎で夭折します。
ようやく画家として認められてきた矢先の非業の死でした。

その後、二つの世界大戦や恐慌に見舞われた20世紀の人物像は、モディリアーニが描いたように細く、か弱く、痩せたものとなっていきます。
ルネサンス時代には均整のとれた筋肉質の身体が理想とされ、バロックやロココ時代には豊満な身体が美しいとされました。
少し前の時代の印象派の画家たちが描いたように、ふくよかで肉感的な女性とも違いました。
あの細い身体は、貧しさや存在の薄さと隣り合わせの20世紀の人間像を先取りしていたのではないでしょうか。
そしてこの人間像は、20世紀最大の彫刻家といわれるジャコメッティが戦後発表した針金のような極端に細長い人体彫刻へも続いているように思えます。

また瞳がないことで、人物の個性や感情を超えた、人間の根幹にある魂をも感じさせているようです。

ところで「パナマ文書」によって明るみになった隠し資産の中に、第2次世界大戦中にナチス・ドイツが略奪したとみられるモディリアーニの絵画「つえをついて座る男」が発見され、スイスの司法当局が押収したと発表されました。
その価値は、実に2500万ドル(27億円)とも言われています。

100年前の芸術家が命をかけて描いた作品が21世紀では金持ちの資産隠しに利用されていたとは残念。
美術品は隠し持つものではなく、広く一般に公開して美を分かち合うものだと思うのですが、みなさんはどう思われますか?

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