![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/87936706/rectangle_large_type_2_a4c13ec5e3afe287c98be9144a4f8639.jpeg?width=1200)
ハリポタの Audibleを聞いていたら出てきた「フォリッド /ˈfɒrɪd/」とは?
こちらの記事は stand.fmにて音声でも配信を行なっています。
https://stand.fm/episodes/6336434d06b2b647fb1392d0
先日、Harry Potterを Amazon Audibleで聞いていた際、「フォリッド /ˈfɒrɪd/」のように発音された単語に出会いました。文脈からすぐにそれが何という単語であるかは認識できたのですが、思わず音声を一時停止して辞書で確認してみると、確かにこの発音も掲載されていました。
Longman Pronunciation Dictionaryによると、イギリス英語では 35%程度の話者が /ˈfɒrɪd/と発音するらしいこの単語。ハリポタの物語には欠かせない重要なキーワードなのですが、何のことだか気がついたでしょうか?
正解は… ‘forehead’
そう、あの稲妻の傷がある「額」のことです。もちろん /ˈfɔːhed/という発音の方が多数派を占めるのですが、/ˈfɒrɪd/のように発音されることもあるのです。なぜこのような発音になるのかというと、そこにはいくつかの音声変化にまつわるメカニズムが関わっています。
語頭の /h/は落ちやすい
まず、foreheadという単語は、fore-「前の」+ head「頭」という2つの要素から成り立っている複合語ですが、後ろの要素の headのような語頭の /h/の音は脱落しやすく、それこそ Harry Potterの中で Hagridは語頭の /h/を落とした発音の英語を話す人物として描かれています。
特に ‘forehead’の場合、fore-の方に強勢が置かれ、headが相対的に弱く発音されることも、/h/が落ちやすくなる要因として働いていると言えるかもしれません。
※参考動画
イギリス英語では母音の後の /r/は発音されないが…
次に、最初の要素である fore-の発音を考えると、イギリス英語では /fɔː/のように母音の後の /r/は発音されないのですが、後に続く headの語頭の /h/が脱落すると、「母音の前の /r/」という環境になり、いわば復活するように /r/の音が登場することになります。
同じような現象は、’mother and father’のようなフレーズを発音する際にも生じるもので、イギリス英語では ‘mother’を単体で発音すると /ˈmʌðə/と /r/音を伴わないのですが、andのように母音から始まる語が後続すると /r/が「復活」し、その母音とリンキングして発音される場合が多くなります。
複合語か、1語か?
上で ‘forehead’は ‘fore- + head’という成り立ちの語であることを確認したものの、とはいえそれで「額」という体の一部分を表すわけで、複合語由来とはいっても、もはやひとつの独立した単語であると捉えることも不自然ではないでしょう。
そうなると、/hed/の発音を忠実に維持して「後ろの要素は headですよ」と明確にアピールするよりも、強勢の置かれない母音 /e/は /ɪ/のように弱化させて発音されるようになってきます。
リスニングに必要な力とは
以上の発音変化の要素を組み合わせると(加えて fore-部分の母音も /ɔː/から /ɒ/へと微妙に変化していますが)、/ˈfɔːhed/が /ˈfɒrɪd/のようにも発音されうることが理解できます。
非英語母語話者が、知ったかぶってわざわざ ‘forehead’を /ˈfɒrɪd/と発音する意味はないでしょうが、イギリス英語でこのように聞こえてくることを知識として持っているかどうかで、リスニングの際にスムーズな単語認識ができるかどうかは大きく差がつくところ。
「リスニング能力」とは、もちろん音声を忠実に聞き取る能力が絶対的な出発点になりますが、実はそれだけでなく、発音に関する知識や文脈からの予測を立てる力も非常に重要な役割を占めるものです。留学中には、かなり予測の方に頼ってリスニングを行っていることに自分自身気がついたのですが、そのあたりの話もまた別途まとめられればと考えています。
ぜひ、今回の内容をリスニング学習に役立てていってください。
オンライン英語スクール「ガリレオ研究室」
今までずっと答えが得られなかった英語の疑問が解決します!
あなたの学習目標に合わせた完全オーダーメイドレッスンで、本来であれば世界トップレベル大学院の言語学専門課程ではじめて学べるような学術的な知見・知恵を基盤として、英語の発音・文法・4技能(Reading / Listening / Writing / Speaking)の能力を伸ばしていきます。
お問い合わせ・初回体験レッスン申し込みは上のリンクからお願いします。