DCMホールディングス、ニトリとの首都圏陣取り合戦に敗戦濃厚
ホームセンター業界再編の流れ
ホームセンター業界再編の流れがここ数年加速している。リクシルビバがアークランドサカモトへ買収、コーナン商事がプロショップの建デポ、ビーバートザン、ドイトと首都圏の中堅HCを吸収と大手の寡占化が一層進んでいる流れだ。
その中でも直近の動き、DCMホールディングスが島忠に対してTOBを発表したのは驚かされた。実質無借金経営の島忠までもが大手HCへ買収される流れになるとは誰しもが予想しなかっただろう。
これに横やりを入れたのが、ホームファッションSPA企業のニトリ。近々、敵対的TOBを発表するということなので、当然DCMホールディングスのTOB価格を上回る提案をしてくるだろう。そして、おそらく、この勝者はニトリだ。
DCM側の狙い
ところで、両者が島忠を買収するメリットというのはどのあたりにあるのだろうか。お互いの立場を考慮しながら推測してみる。
まず、DCMホールディングスだが、狙いははっきりしている印象だ。元々、ホーマック、カーマ、ダイキと全国各地域の主力HCが合併して出来た企業。M&Aを繰り返して、成長を加速させる意図は明らかだろう。その後、千葉県中心で関東圏へ店舗網が厚いケーヨー、山梨県が地盤のくろがねや、青森県に強みのあるサンワドーと陣取りを重ねてきた。
さらに、島忠を傘下にすることで、首都圏での店舗網を強固にしたいという意図がはっきりと見える。その後行うのは仕入れ先、棚割りの統一化、そしてPB品の販売拡大で利益率の向上を目指すのだろう。島忠という看板は残っても、おそらく品ぞろえはDCMどの店に行っても変わらないようになる。
ニトリ側の狙い
一方、ニトリ側の意図はやや見えにくい。島忠は大型店舗が中心で、現状では、家具・ホームセンターだけではなく他小売店にテナントとして入ってもらうほどスペースとしては広い。当然、買収後ニトリだけを導入しても売り場が埋まらないと予測される。家具売り場は全てニトリ化するとして、ホームセンターの売り場はどうなるのか。
私の予測としては、テナントを入れて賃料を稼ぐ戦略となるのが、一番利益が出る戦略かと思われる。では、どのホームセンターへテナント間貸しするのか。一番可能性が高いのはコーナン商事だろう。その根拠としてニトリの似鳥会長がコーナンの社外取締役である繋がりがあることだ。コーナン自体も自社出店の他、ビーバートザン、ドイトと首都圏の店舗網を拡大したい意思があるので、お互いの利益は一致すると考える。
敗北濃厚のDCM、次の狙いは・・・?
おそらく、DCMはニトリとの島忠争奪戦に敗れる。首都圏の店舗網を強固にする流れは絶たれるが、まだ日本にはDCMが店舗網を広げる余地がある地域が存在する。私の予測としては、以下の上場してるHC3社を手に入れる動きになるのではと見ている。
その3社というのは、北関東中心のセキチュー、カンセキ、静岡県中心のエンチョーだ。北関東、静岡県はいずれもDCMの店舗網が弱い地域だ。全国の陣取り合戦としては、ぜひ欲しい地域だろう。ただ、この3社は特定株主の比率が大変高く、簡単にTOBを仕掛けるのは難しいだろうが、今後動きに注目したいところである。後は非上場の地方HCに対してDCMがどういう動きをするのか。例えば、私が住んでいる中国地方はDCMの店舗網が弱いため、地場のナンバ、ユーホー、いないあたりが将来合併する流れが無いとも言えないところである。
終わりに
ただ、この合併に関して業界マニアの私は高見の見物をしていて面白い状況なのだが、実際消費者にとってメリットが高いとは言い難い状況である。ホームセンター自体が地域に対応した品ぞろえで成長してきたので、大手に吸収されると全国統一の棚割りになってしまって同質化が一層進む。売り場の多様性は損なわれ、好んで買っていたメーカーのNB品は売り場から弾かれ、PB品が並ぶのだ。そうなれば仕方なくPB品を購入するか、ECサイトで探してくるしかない。
大手HCの寡占化は一気に進むだろう。M&Aで拡大するDCM、コーナン。あくまでも自社出店を続けるカインズ、コメリ、ナフコ。勝者はどこになるだろうか。