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VRCHATで短編ホラー映画を撮りました
VRCムービーアワードという企画があり、面白そうだったので、
短編ホラー映画を撮りました。
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■すべて独りで作りました
・家庭環境の都合上、音声収録やVRができるタイミングが限られており、VRCHATに普段ログインできていません。
・作品へのこだわりが強いくせに、優しさ故の妥協をしがちなので、人との共同制作がそもそもあまり得意ではありません。
おそらくきっと、他の出展者はチームで制作しているのだろうと思います。
しかし、であるならば!
哀しき反骨精神で、わたしは意地でも独りだけで作り切ってやる!
バンプオブチキン(弱者の反撃)です!
以下、作中の裏話などを話しますので、
動画を視聴してから読んでください。
■脚本のこと
さて、独りで制作するとなると、
前提としてカメラ操作と演技を同時にこなさないといけません。
つまり、基本的には定点カメラ操作。ときどきリモコンでの回転移動操作。
これらの条件で撮れる脚本を考え、
監視カメラ、あるいは小型カメラでの盗撮。
これらを活かせる脚本を組み立てました。
わたしはホラー映画(特に白石晃士監督のPOV)が好きなので、
かなり影響を受けていると思います。
他、フェイクドキュメンタリーQシリーズのことも思い出しながら制作しました。
しかけとしては、
①舞台解説の日常シーン
②このシーン何?の違和感
③違和感の答え合わせからの背徳感へのシフト
④想定外の事態、恐怖
⑤結末
といった具合に、
刺激的なシーンを要所要所にはさみつつ、
見ているお話がだんだんと変化していく、
謎解きのような作りを意識しました。
起承転結といった漫画のまとめ方とか。
ゴレンジャイ、どの色がどの順番で出れば一番面白いか、とか。
そんなことを考えています。
最初の方のサービスシーンも、後半に別の意味で活きてくる。
公園・お買い物のシーンで出てきた人やモノも再登場させるなど、なるべく全てのシーンに意味があるように構築しました。
人々についての掘り下げがあれば、もっと良かったかもしれませんね。
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■モデリング、配役(アバター)と演者
私はあまりVRCの配布・販売アバターに明るくないのもあり、
いっそのこと全部作りました。
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単純に時間と技術の問題であまり凝ったモデルは作れないため、
上記のようなローポリゴンモデルを複数体制作しました。
ゴミ袋や鍋を出し入れできる桃戸メリー/裸の桃戸メリー
ゴミ袋を持った男/お腹に開けたゴミ袋がある男
など、同一キャストでも複数バージョンのモデルを合計7体分制作し、
撮影シーンごとに使い分けています。
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ところで、バーチャルな映画制作におけるキャスト表示ってどんなもんでしょう?
今回の映像では、一貫して全てのキャラクターの演技を
魂川りんり(高評価チャンネル登録)が行ったため、
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このような表記としたのですが、
桃戸メリー役の魂川りんりという構図も少しヘンテコに感じます。
(このあたり、詳しく掘り下げるとバーチャルユーチューバーとして、マズいことになってしまう気がしますので、言及はここまでにしておきます。)
とりあえず
左側にあるのは「VRCアバター」
右側は「アバターを着て演技をした人」
としました。
主演:魂川りんりとありますが、
魂川りんりのアバターは映像に登場しないのです!
■音響
今回の映像では生々しさを必要としていたので、
なるべく素材としての音楽や効果音、VRCHAT上の音をを使わずに、
iPhone手持ちで交差点や公園に出向き、現実の音を録音しました。
風のボフボフ音とかもいい味になったと思います。
救急車のサイレンや、人々の声なんかは偶然入ったものです。
部屋のシーンや、ゴミ袋のシーンなど、
音を合わせないといけないシーンでは、
編集済みの無音の動画を再生しながら、
場面に合わせて足音や水音などを収録しました。
セリフ…これは悩みました。
ただでさえひとり4役をしている上、わたしは演技については素人です。
雑な演技で映像を台無しにしてしまいそうです。
では、逆転の発想です。これはVRC映画。
全編マイクミュートの無言勢による、
新機軸のサイレントムービーに仕上げる意味がある!と、こじつけました。
「声演技からの逃げ」を「武器」に持ち替えるのです!
これにより、冒頭のマイクミュートのシーンを追加しました。
■強引な動画編集
わたしは結構、でたらめをやっています。
正攻法でなくとも「こうしたらできるじゃん」と思ったアイデアを
そのまま実行して完成に近づけていきます。
今回の大きな課題は
①カメラ操作をしながらのアバター操作
②複数の人が登場するシーンの合成
の二点です。
①に関しては、まあ、やるしかないです。
中盤のゴミ捨て場のシーンでは、
「定点カメラでメリーを撮ったA」と、
「手持ちカメラで男の視点で撮ったB」の映像を
手振れカットなどでつないでいます。
Aの最中にズームがありますが、これは動画編集で追加しました。
余談ですが、
手から出したゴミ袋をワールド上に置く技術は持ち合わせていないため、
置かれたゴミ袋の画像を動画編集で合成しています。
スローモーションでみると編集の粗が見えると思います。
(位置がブレたり消えたり)
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終盤の振り向きシーンでは、リモコンでカメラを回転させながら、
自信が映った瞬間に演技する。といった風に撮っています。
また、ほとんどのシーンで、手ブレは動画編集時に追加しています。
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さて、問題は
②複数の人が登場するシーンの合成です
公園のシーンと、お部屋のシーンですね。
これからバカの編集技術をお見せします。
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このように、同じ定点カメラで撮影した映像を左右で合成しました。
よく見ると、境界線で手先が切れていることがわかると思います。
切れているのは当然編集ミスなのですが、
こういった強引な作り方をしていることも味わいであると信じているので、多少の痕跡は残っているのもヨシとして進行しました。
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お部屋のシーンはさまざまな事が起こるため、
いくつかの合成を組み合わせました。
前述の左右分割で済む部分はそれで。
二人が重なるように映るシーンは片方をGB撮影し、
クロマキー合成しました。
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全編クロマキー合成の方が前述のような映像欠けなどがなく、
完成度は高まるのですが、
撮影中の映像をカメラ確認できない不便さから
基本的には左右分割合成法を多用しました。
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■おわり
まぁだいたいそんなところでしょうか。
今回、この作品を作れて本当に良かったと思います。
作って、発表して、他の人の作品と並べてみて。
なんだか文化祭で演劇を見て回るような楽しい気分になりました。
作っていて思い出したのですけど、
わたしは昔、フラッシュ職人に憧れていたんです。
紅白フラッシュ合戦というイベントで、
様々な作家さんが年末に作品を作り合っていたのを憶えています。
(わたしは今も昔も、ぴろぴとさんが大好きです!)
今回のVRCムービーアワードに出展して、
わたしもそういった映像作家になれたような。
そんな充実感を感じました。
テーマはダークですが、賞レースや客ウケを気にせずに、
わたしが作りたい・見たいものを撮れたと思っています。
ありがとうございました。
スペシャルサンクス:すぱげりぃ
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