
鍵盤の数
ベーゼンドルファーには他社のブランドにはない黒い鍵盤があります。通常のピアノは鍵盤が88個。ベーゼンドルファーの鍵盤は最低音を9鍵拡張し、97鍵盤を備えた「Model 290 Imperial」と、最低音を4鍵拡張し、92鍵盤を備えた「Model225」があります。
この黒い部分があると演奏家はいつもと違う感覚になるらしく、慣れないと弾きづらいようです。ではなんで88鍵より多い鍵盤あるのでしょうか。
それはプゾーニがバッハのオルガン曲を編曲した時に、低音部にピアノでは出せない音があったため、ベーゼンドルファーが鍵盤を追加したのが始まりとされています。この9鍵が追加されたことにより、弦の響板が広くなり、共鳴する弦も増えて中低音の響きが豊かになっています。「中低音の響きが豊か」ってことを「倍音」と呼び、その構成の違いは音色の違いとして認識されています。ベーゼンドルファーの黒い鍵盤(4~9鍵)は、通常のピアノで弾ける曲を弾いた場合は、「余分な低音」は弾かれることのない贅沢品!?
作曲家はその当時の楽器(ピアノ)の発展とともに曲を作っていました。ベートーヴェンが活躍する18世紀後半は68鍵のものでした。しかし彼は今後ピアノがこの音域まで出るであろうと想像して手元のピアノにはない音符まで作曲していたようです。
近年のピアノは88鍵盤のものが主流なので、ピアニストはその感覚になれています。数年前にサロンコンサートで1923年のプレイエル85鍵を使ったことがありました。その際にKさんがリハーサルを終えた時に、こんなことを言ってました。
「今まで気づかなかったんだけど、今日やる曲の中に(たしかドビュッシー)85鍵のピアノを使って作曲したのかもしれないなぁ。一番左の鍵盤まで使う曲だったよ。ウチのプレイエルを弾いてもても気づかなかったのは、ウチのは88鍵だからなのかな。」
なんだか100年以上前の作曲家からクイズを出されていたような気がしました。
では、通常の88鍵より多い鍵盤は弾かれることはあるのでしょうか?
ベーゼンドルファーに詳しいAさんに教えてもらいました♪
ブゾーニ(ピアノ協奏曲)
スクリャービン(ピアノソナタ第6番)
バルトーク(ピアノ協奏曲第2番)、ボルコム(12の新しい練習曲集)
ラヴェルの「水の戯れ」「夜のガスパール」
ドビュッシー「喜びの島」
まだまだあるかもしれません。
ピアノが弾ける方!ぜひいろんな数の鍵盤でいろんな曲を弾いて昔の作曲家が何鍵のピアノで作曲したのか想像してみるの面白いかもしれませんよ♪