✗極論不要。非手術性別変更性同一性障害者の『風呂トイレ問題』【発達障害 ASD 自閉症当事者随想】

©Hermit G-zan,a fictosexuality&MtF,Transgender

2024年7月11日 22:57

▲ASD 自閉症スペクトラム障害者には、性の自己認知、即ち『自分が男であるか女であるか』これが不明確な者が少なからず存在する。愚考するに、恐らくは精神面に於いて、性的に未分化な状態であることが根底にあるのではと思われる。
かく言う自閉症当事者の筆者の儂もご多分に漏れず、性同一性障害当事者である。

儂は性腺除去済であるが、性器の外観を女性そのものの状態にしているわけではない。しかし長年のホルモン療法により、全裸にならぬ限りは女性として通用しており、日常生活も然り。改名済みで、後は性別変更のみの状況ではある。
で、2024年7月10日、この度、広島高等裁判所にて、手術(SRS)無しで性別変更が許可されるという初の判例ができた訳であるが、例によって味噌糞一緒の極論を発し、それに同調する者少なからずという情けない状況。

▲性同一性障害と診断され、手術を受けずに戸籍上の性別を男性から女性に変更するよう申し立てた当事者に対し、広島高等裁判所は変更を認める決定。　
判決理由として、
「性別適合手術が行われた場合に限らず、他者の目に触れたときに特段の疑問を感じないような状態で足りると解釈するのが相当」の由。

これは要するに、法的に性別変更を認めただけであって、『風呂、トイレ』その他公共の場に於いて性別変更者は如何にするかという点には言及していない。つまり別問題としているわけであって、今後の法整備も含め、非手術性別変更者の風呂トイレ問題を如何にクリアするかが問われていくワケだ。

しかるにSNS上では、『自称・女性が女風呂に入ってくる事態になる云々』と、問題を糞味噌一緒にして極論する者が居る。で、かかる極論に同調する者が少なくないのだが、これは要するに、物事を一面的にしか考えられぬ視野狭窄者による戯れ事であると言えよう。

確かに、時たま猥褻目的で女装し逮捕される者も存在するし、また社会常識の欠如した者が、『心は女性』でさえあれば外見はどうあれ女性用風呂トイレに堂々と入れると思い込むこともあろう。
確かに、そういう弊害を伴うことはあり得る。しかし、それはごく一面に過ぎないし、そもそも『性同一性障害者』の悩まされる風呂トイレ問題とは全く別次元の問題である。それが判らぬのか、敢えて分からぬフリをして糞味噌一緒の極論を振りかざしているのか。

かかる物事の一面のみを捉えての極論は、今回の性同一性障害者の性別変更問題に限らない。
例えば、『有害コミック規制』『小児型ラブドール(ダッチワイフ)は犯罪を助長するので規制せよ』の類が、それである。

物事は一面のみではない。多面的なものである。単純に『エロコミック』や『小児型ラブドール』が性犯罪を助長するという思考、思想は、物事のごく一面のみを捉えたものであって、要するに極論というべきである。

確かに極々一部の者は、ラブドールが端緒となって、実際に犯罪を犯してしまうかも知れぬ。しかし、それはごく稀であって、大多数の者は、犯罪に至ることなどはない。社会的存在としての無意識的なブレーキ、即ち『良識』が働くからであって、殆どの者は楽しみの一つとして楽しむに過ぎない。こんなことは、儂が殊更に言うまでもないことだ。
それを無視して短絡的に犯罪に結びつけてしまうという、その極端に偏向した思考に問題がある。

例えば、主として殺人•犯罪を主題に据えた『推理小説』『ミステリ』なる文学分野がある。愛好者の数は少なくない筈だ。
しかし、殺人等の犯罪を描写する推理小説から刺激を受けて、実際に犯罪、殺人を犯す人がどれだけいるかというと、極めて少ない筈である。殆どの推理小説ファンは、知的好奇心の充足•スリルを味わうことを楽しみとし、日常生活に於けるスパイスとしてミステリーを楽しんでいるのであって、ごく稀に例外的犯罪者が出現するに過ぎないことは、今更論ずるまでもないだろう。

そのような極少数の例外のみに着目して、恰もエロ漫画或いはラブドール愛好者全てを十把一絡げに危険視し、犯罪者になるが如き短絡的な思考•思考の極端な偏り、或いは個人的な憎悪•嫌悪感 (ヘイト) の拡大こそは問題視すべきである。

殆どの者は、エロ漫画にせよ小児型ラブドールにせよ、単に個人的な嗜好を満たすための愉しみとしてしか捉えてはいない。むしろ、ラブドールによって性欲を充足させられ、或いは精神的な安らぎを得られることによって、救われている者が少なくないのだ。

話が逸れた。ともかく、一方的な極論に陥らずに(これが不能であるのが発達障害 asd 者であるのだが)、バランスの取れた考え方でもって、外性器手術無くして性別変更した者の『風呂、トイレ等公共施設使用問題』を今後如何にしていくか、建設的な議論が求められると言えよう。