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Bill Evans /In Norway : The Kongsberg Concert / 70年代に突入したビル・エヴァンスにまつわる適当雑談

ビル・エヴァンスの1970年5月、ノルウェーはコングスベルグにおける未発表ライヴ音源がこの度発売された(Nov 30. 2024)。
メンバーは、当時のビル・エヴァンス•トリオ
Bill Evans (piano), Eddie Gomez (bass), Marty Morell (drums) である。
録音日時及び場所は
Recorded live at Kongsberg Jazz Festival at Kongsberg Kino, Kongsberg, Norway, Friday, June 26, 1970.


実を申せば、筆者は、この録音をまだ聴いていない。それ故、以下は同録音のレビューの類ではない。
多分、日本版ライナーノーツにおいて杉田氏も言っておるであろうところの、この時期のエヴァンス及びトリオに関してのあれやこれやの雑談である。徒然なるままに贅言を連ねたいと、気まぐれに思ったので書くわけだ。
なお、Mr.Marty Morell のドラミングに関して筆者はかなり手酷くクサしている。一応、多くを伏せ字にした。雑談とはいい条、非礼をお詫び申し上げる。Sorry,my saying rude things about Mr.Morell's drumming in the following. Please forgive me. 
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▲扠。ビル・エヴァンスは、このライヴ音源の数ヶ月前に、フェンダー・ローズのエレクトリック・ピアノを導入したアルバム (右手はエレピ、左手はアコピによる) "From left  to Right" を録音し、エレピを弾き出した。また、メサドンによる重度薬物依存治療プログラムを受け、ルックスも、従来のオールバックの銀行員スタイルから、ヒゲをたくわえ髪を伸ばし開襟のラフなファッション等、楽歴上、大きな変化の訪れた時期である (ついでに言えば、麻薬問題で遅延した来日が73年に遂に実現、以後コンスタントに来日)。

彼のエレピ使用に関しては賛否ある。筆者は個人的には悪くないと感じるが、ファンタジーレーベルに於ける、ゴメスとのデュオによる "Intuition" 及び最後のスタ録 "We will meet again" に於けるエレピ使用はどうにも意図が分からず、上出来とは言い難い。特にIntuitionは、エレピの音が非常にチープだ。

▲この全編未発表の録音は、トリオ最長歴のベーシスト、エディ・ゴメスが4年目、同じくトリオ在籍最長ドラマーのマーティ•モレルは参入して2年ほどの時期のものだ。

この70年コングスベルグライヴの時点に於いては、まだこれといった個性の無かったモレルのドラミングは、72年頃より明確なそれを発揮しだした…のであるが、しかし困ったことにド〇〇〇〇系になってしまったのは周知の通りである。
ソロではバスドラとタムが非常に〇〇〇〇、バッキングではハイハット•クラッシュを多用するなど〇に〇〇てしまう。ライドも余りに金属音がキツく〇〇〇〇る。或いは、マイクを通すと、モレルのドラムサウンドはこんな音になってしまうのかも知れぬが。生を聴いたことが無いのでなんとも…

口髭をたくわえたエヴァンスが表紙の71年頃のスイングジャーナル誌上に、ビル・エヴァンスのインタビュー記事が掲載されているのだが、そこでビル曰く『嬉しいことに、ドラムのマーティ•モレルの進境が著しい云々』と言っている。確かに彼の言う通りで、コロンビア盤 "The Bill Evans Album" を一聴すれば、モレルの個性発現が明瞭だ。 

しかし有り体に言えば、モレルのドラムは〇〇〇過ぎる。当時停滞期にあり、主張するゴメスのベースにソロスペースを多く与えていたエヴァンスであるが、彼のドラミングは次第次第に頭痛の種になっていく。
別にモレルの演奏が原因で停滞していた訳ではなかろうが、しかし72年リュブリャーナコンサートに於いて、臨時のドラマー、トニー•オックスレー  Ljubljana concert,Tony Oxley との共演に於いては、見違える程に生気に満ちた演奏をエヴァンスは展開していた (録音を聴く限りでは)、という事実を考慮すると、一抹の疑惑を払拭出来ない、とは言えよう。

▲このコングスベルグのライヴに関しては、Peter Pettinger 及び Keith Shadwick らの伝記、ミュージカル•バイオグラフィーに、ごく手短に記載されてはいる。が、詳細が分かるのは、今回が初めてらしい。
曲目はいずれも60年代終盤〜70年代中盤或いはその最期に至るまでしばしば演奏された愛奏曲で占められている。筆者の知る限り、常にプロフェッショナルとして水準以下にはならなかったエヴァンスの演奏である。この録音も、決して悪かろう筈は無い。

電気サウンド導入のマイルス・デイヴィス。ジャズは死んだと言い、フュージョンが台頭、更にはエヴァンスに影響を受けた若手が続々と登場…70年代に入り、ジャズシーンは混沌たる様相を呈していったのだが、その最中にあってのビル・エヴァンスの70年代初頭の姿が、ここにはある。筆者も近日中に聴く予定である。

▲最後に、セトリ一覧。

  1. Come Rain Or Come Shine 

  2. What Are You Doing The Rest Of You Life? 

  3. 34 Skidoo 

  4. Turn Out The Stars 

  5. Autumn Leaves 

  6. Quiet Now 

  7. So What 

  8. Gloria’s Step 

  9. Emily 

  10. Midnight Mood

  11. Who Can I Turn To? 

  12. Some Other Time 

  13. Nardis 

毎度お馴染みの曲目である。

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