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アキレス腱(周囲)炎を予防するトレーニング!

今回はアキレス腱(周囲)炎について書いていきたいと思います。

あまり有名なものではないかもしれませんが、
2018年にAmerican Physical Therapy Association (APTA)のアキレス腱ガイドラインが2010年以来に更新されました。
そんなこともあり、最近、注目されているケガです。

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①アキレス腱(周囲)炎とは?


アキレス腱(周囲)炎はその名の通り、アキレス腱もしくはアキレス腱周囲の炎症です。
2つの違いとしてはアキレス腱そのものが痛むのかその周囲が痛むのかの違いです。
症状としてはアキレス腱(踵から2~6㎝)の痛みです。

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特にランニングや走っているときに足を着くときに痛むことが多いです。
アキレス腱断裂のほうが聞きなれていると思いますが、


1シーズンのエリートサッカー選手の有病率は2.1%~5.1%、

ランニング初心者では7%であり、決して低くない確率だと思います。

ランニングアスリートの生涯有病率は52%で、2人に1人は受傷する高確率です。

また、復帰するまでには時間を要します。

エリート男子サッカー選手では、比較的短かったが中央値で10日、平均23日掛かります。 ただし、再発率と27%高く、特に10日未満での復帰プレーヤーで再発率が高いようです。

ランナー選手では、復帰までの期間の中央値は82日でした(最小21、最大479)。
復帰まで時間を要することが分かります。

しかし、チームで同じ練習量をこなしていても、アキレス腱(周囲)炎になる人とならない人がいます。

以下で理由を説明します。

②なぜアキレス腱(周囲)炎が起こるのか?


簡単に説明すると『Over use(使い過ぎ)』です。

アキレス腱は人体で一番強い腱です。負担が掛かる分、強く進化したと言われています。
強い腱でもストレスが掛かり続ければ炎症を起こします。
その中でも、アキレス腱にストレスが掛かりやすい人は、、、

➊以前に足底筋膜炎や膝蓋腱炎や足の骨折をした

➋足底屈筋力(つま先立ちをする筋力)が弱い

この二つが重要です!
実は、、、他にもいくつかあるのですが、省略させていただきます。


➊以前に足底筋膜炎や膝蓋腱炎や足の骨折をした は以前に足底筋膜炎(足の裏の炎症)やジャンパー膝、オスグッドなどになった方は足に負担が掛かりやすい方なので、要注意です。

膝蓋腱炎との関連については今、まとめています。出来次第、次の記事で詳細を報告する予定です。。。

足の骨折をしたことがある方は骨の形が変わっている可能性(変形)や荷重の掛け方が骨折する前と変化している可能性があります。この場合は理学療法士やトレーナーなどに個別にケアしてもらう必要があります。

➋足底屈筋力(つま先立ちをする筋力)が弱い ことはいくつかの研究で示されています。

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上図の赤が腓腹筋、緑がヒラメ筋、この二つで下腿三頭筋(ふくらはぎの筋)を構成しています。
アキレス腱は下腿三頭筋と連結しています。
この筋が弱くなるとアキレス腱に対するストレスが増加することになります。

では、どのような方法が良いか説明します。

③予防方法


それは『つま先立ちトレーニング』です。
ガイドラインでも遠心性収縮トレーニングの推奨レベルは『A』となっています。
ちなみにですが、アキレス腱を伸ばすストレッチの推奨レベルは『C』となっています。
ストレッチよりもトレーニングのほうが優れていると言えます。

しかし、単につま先立ちすればいいわけではなく、『遠心性収縮』が必要です。
※遠心性収縮:簡単に説明すると、手でコップを持ち口に運ぶ動作は上腕二頭筋の『求心性収縮』、コップをテーブルに置く動作は上腕二頭筋の『遠心性収縮』です。筋の長さは伸びているけど収縮している状態のことです。

➊スタートポジションです。片足立ちになり、足の半分位、台に乗せた状態です。

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➋つま先立ちの状態です。3秒掛けてつま先立ちになります。

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➌ゴールポジションです。最終可動域まで踵を3秒掛けてゆっくり降ろします。

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スタートポジションからゴールポジションまで6秒掛けてゆっくり行います。

週2回以上、15回×4セット実施します。

注意することは、痛みは自制内少しであればトレーニング可能です。
しかし、痛みでフォームやバランスを崩されるような状態であれば、トレーニングは中止してください。

ガイドラインの中の文献でもアキレス腱に脆弱性あるものは除外されています。


自転車、ウォーキング、水泳など痛みの無いまたは少ない運動を行ってください。
アキレス腱炎における過度な安静は推奨されていません。

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Peggy und Marco Lachmann-AnkeによるPixabayからの画像

アキレス腱炎になる前に是非、やってみてください。

④ まとめ


 アキレス腱炎は意外と多く、再発率も高い
 復帰すまで時間が掛かる
 ストレッチよりも遠心性トレーニング


                        理学療法士 稲吉直哉

参考文献
① Martin, R.L.; Chimenti, R.; Cuddeford, T.; Houck, J.; Matheson, J.W.; McDonough, C.M.; Paulseth, S.;Wukich, D.K.; Carcia, C.R. Achilles pain, stiness, and muscle power deficits: Midportion Achilles tendinopathy revision 2018: Clinical practice guidelines linked to the international classification of functioning, disability and health from the orthopaedic section of the american physical therapy association. J. Orthop. Sports Phys. Ther. 2018, 48, A1–A38.
② Dhinu J. Jayaseelan , John J. Mischke and Raymond L. Strazzulla : Eccentric Exercise for Achilles Tendinopathy: A Narrative Review and Clinical Decision-Making Considerations. J. Funct. Morphol. Kinesiol. 2019, 4, 34; doi:10.3390/jfmk4020034
③ van der Vlist AC ,Breda SJ, Oei EHG: Clinical risk factors for Achilles tendinopathy: a systematic review. Br J Sports Med 2019;53:1352–1361. doi:10.1136/bjsports-2018-099991
④ Arco C van der Vlist , Marinus Winters ,Adam Weir, Clare L Ardern , Nicky J Welton, Deborah M Caldwell, Jan A N Verhaar, Robert-Jande Vos: Which treatment is most effective for patients with Achilles tendinopathy? A living systematic review with network meta-analysis of 29 randomised controlled trials. Br J Sports Med 2020;0:1–8. doi:10.1136/bjsports-2019-101872
⑤ KARIN GRÄVARE SILBERNAGEL, KAY M. CROSSLEY: A Proposed Return-to-Sport Program for Patients With Midportion Achilles Tendinopathy:Rationale and Implementation. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy.2015


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