【対談】金沢の人事部で、叶えたい未来~金沢市・ガクトラボの想い~
2022年10月に発足した【金沢の人事部】。
地域の人事課題を解決するためのプラットフォームとして、企業・専門家・行政が組織の枠を超えてつながり共創する場を提供しています。
【金沢の人事部】で叶えたい未来をテーマに、後援先である金沢市・経済局労働政策課の政浦尚胤さんと、運営主体である株式会社ガクトラボ・コーディネーターの広瀬一樹さんにお話を伺いました。
1時間にわたる対談により、それぞれの立場からみた地域の人事課題や、【金沢の人事部】への想いが明らかに。金沢という町の未来と真剣に向き合うお二人の本音トークを、是非ご覧ください。
金沢市とガクトラボ それぞれの役割
ー 金沢市の企業や学生にとってどのような役割を果たしているのか、教えてください。
政浦:
金沢市・労働政策課では主に企業への支援を行っています。
例えば、働き方改革であったり雇用促進であったり。高齢者や障がいのある方の雇用支援もそうですね。
最近では、学生に対する支援にも力を入れつつあります。エクスターンシップやインターンシップ推進の一環として、学生への交通費の補助を行ったりもしています。
広瀬:
ガクトラボでは、学生・若者と、地域・企業をつなぐコーディネート業を行っています。学生が地域でチャレンジできる町にしたいという思いで、7年前から100件を超える実践型インターンシッププログラムを地域企業や学生と一緒につくってきました。
それ以外にも、採用支援の一環としてさまざまな形で地域企業と学生との接点をつくってきましたが、その根幹には学生に対するキャリア支援を地道に行ってきたことがあります。
「こういう風に働きたい」「起業したい」「サークル活動で困っている」等、ほぼ毎日学生と会ったり話したりして相談に乗ってきた為、企業と学生のニーズを繋ぐ役割を果たせているのだと思います。
金沢市とガクトラボのこれまで
ー 金沢市とガクトラボの馴れ初めは?
広瀬:
ガクトラボがまだ学生団体だった時からのお付き合いなので、もう7~8年になりますね。労働政策課だけではなく、学生に対する支援を行っている課と協業してきました。
政浦さんが担当になられた3年前は、ちょうど新型コロナウィルスが流行り始めたころでしたよね。
政浦:
社会が目まぐるしいスピードで変わったころで。
毎年対面で実施していた企業と学生の交流会もそうですけど、色々なものをオンラインでやらなければならなくなって、相談したのがスタートでした。
ー 最も印象に残っている事業は?
政浦:
「エクスターンシップ金沢」ですかね。
国や県がまだやっていないようなことを金沢市でやろう!と、0⇒1に挑戦した点でチャレンジングな取り組みだったと思います。
広瀬:
大学教授などあまり接点のなかった方々に協力をお願いするのには苦労しましたが、「金沢市の方と一緒に行くのでお時間もらえませんか」と言うとすんなり会ってもらえたりするんですよ。
企業開拓でも、政浦さんが観光政策課と連携して「この企業に電話してみて」とバトンを繋いでくれて。内心、本当に大丈夫かな・・と思いながら電話したのですが、めっちゃ快諾してくれました。笑
政浦さんは、発注して終わり ではなくて、事業がうまくいくように共創してくださるので、とても助かっています。
政浦:
ガクトラボさんは仕様に書いてあることだけじゃなく、「もっとこうしましょう」「こんな挑戦もしてみましょう」と良い意味で圧をかけてくれる。せっかくお金を使うなら、より良いものをつくりたいという思いがあるので、意見をもらえるのはありがたいです。代表の仁志出さんの圧が、一番すごいかな。笑
金沢の抱える課題
ー 金沢市として課題に感じていることは?
政浦:
「学生のまち・金沢」という言葉があるほど、金沢には高等教育機関が多く、人口に占める学生の割合も高くなっています。
しかし、県外からも多くの学生を受け入れていることもあり、大学卒業後の県内就職率は全体の38.9%に留まります。特に男子学生は32.0%と低いです。
永遠のテーマかもしれませんが、そこが大きな課題です。
学生を採用するために地域企業に変化が求められていることは確かですが、学生・企業それぞれが何を求めているのか、金沢市としても掴み切れていないのが正直なところです。
意識の高い学生とは出会う機会もありますが、そういった学生はごく一部。その他大勢の学生が何を考えているのか知りたいです。
ー ガクトラボとして、日頃接している学生や企業にどのような課題があると感じますか?
広瀬:
多くの学生は「文系だから公務員になろう」とか「理系だから研究室の推薦をもらって大手にいこう」とか、入学してきた時点で考えが固まっている子もいて、なかなか地域の中小企業に目を向ける機会がないんですよね。
その考え自体を否定しているわけではなく、もう少し広く選択肢をとった上で「自分にはこれが合っているな」と選べるようになる方がより豊かなのではないかと思います。
そこには 地域の中小企業の魅力が十分に引き出されていないこと も影響していると思います。自社のことを客観視できず、魅力はあるのに発信できていない企業も少なくありません。
彼女が欲しい!と言いながら、髪型も服装もちぐはぐで全く自己プロデュースができていない男性に対して、「おいっ」って突っ込みたくなりますよね。そんなときは第三者の視点も必要だと思いますし、本気で変わりたいと思っている企業に対しては、僕たちも全力で応援したくなります。
ー 学生が企業に感じる"魅力"って、何でしょうね。
政浦:
そうそう。それをすごく考えています。
当然みんな同じではないので、安定志向の学生には将来性の提示など中小企業に飛び込むときの不安を払拭してあげる方がいいだろうし、意識の高い学生には社会課題の解決に繋がるようなビジョンを示した方がいいだろうし・・。その辺りの押し引きが難しいなと感じますね。
広瀬:
そもそも学生自身が、「自分が何に魅力を感じるのか」分かっていないことが多いのではないでしょうか。僕も学生時代はそうでしたし、そういう価値観って働く中で少しずつ醸成されるものだと思っているので。
政浦:
学生と企業、どちらか一方へのアプローチでは足りない。両輪でやっていかないと中小企業の人材確保はうまくいかないと感じています。
【金沢の人事部】への期待
ー 【金沢の人事部】を立上げた理由は?
広瀬:
企業が人材確保をする上で大事なことは、「こういう人に入ってほしい」というターゲットが明確になっていることだと思います。例えそれが100人のうち1~2人しかいなかったとしても、その子たちに確実に刺さる魅力って何だろう、と考えていくことが必要です。
でも、自社だけでは解決するのが難しいこともあると思うんです。特に中小企業の場合、一人の人事担当者が少なくとも30~50名、多くて100名の人事機能を全て担っていることが多い。しかも、営業とか事務とか何かしらの業務と兼任であることも珍しくありません。すごく大変だし、孤独だと思いませんか?
そんな”ぼっち人事”が、地域の中に沢山いる。もし金沢に人事担当者同士が集まって話せるような場があれば、悩みやノウハウの共有ができたり、横のつながりができることで人事に対する向上心も湧いたりするだろうなと思い、そういうネットワークをつくりました。
ー 金沢市が後援する理由は?
政浦:
まず、シンプルに良い取り組みだなと思っています。
実際に【若手人事交流会】にも参加しましたが、何を言っても許される感がありましたよね~。企業のSNSアカウントをフォローし合ったりなんかして。そういった光景を目の当たりにして、すごく良いなと思いました。
また、行政の施策って独りよがりになりがちだなと思っていて。地域企業で働く人事担当者の生の声が聞ける場があるというのは有難いですし、そういった声を新しい施策へ反映させていきたい思いもあります。
広瀬:
若手人事交流会では、普段口数の少ない人事担当者さんも「こんな喋るの!?」ってぐらい話してた。やっぱり、同じ世代・同じ悩みをもつ"同期"のような感覚ってあると思うんですよね。そこを大事にしていきたいです。
金沢の理想の未来
ー 金沢をどんな まち にしたいですか?
政浦:
自分の子とか孫の世代まで魅力的なまちであってほしいと、本気で願っています。そのために、労働政策課にいるうちに出来ることは、なるべくやっていきたい。
短期的な目標でいうと、地域の中小企業がちゃんと人材確保できて企業活動が維持されること。
それと同時に、学生には「自分がやりたいこと・興味のあること」を仕事にしてほしい。とりあえず大手に行っておこう、ではなくて、早期に地域の企業で「働く」体験をすることで、学生のキャリア観が養われたり、地域企業に目を向けてもらうことに繋がるかもしれない。
その先に、人口減少社会の中で、金沢市だけは人口が維持されている、みたいな未来があればうれしいです。それだけみんなから住みたいと思われる魅力的なまちになるというのが中長期的な目標かなと思っています。
広瀬:
【金沢の人事部】としては、まずは会員企業から成功事例を生み出していきたいです。個社の目標が達成されればOKではなく、その事例を金沢市内の他の企業にも展開して、金沢全体で人材確保に成功するような未来を目指しています。
メッセージ
ー 最後に、この記事を見てくださっている人事担当者や経営者の皆さんへメッセージをお願いします!
広瀬:
"ぼっち人事"で、ひとりで多くの課題を抱えていたり、そもそも何からすればいいのか分からない方も多いと思います。そんな中でも、新しいチャレンジがしたい、できることなら同じ志を持った仲間と一緒にやっていきたいという思いのある方は、【金沢の人事部】すごく合うと思います。ぜひご一緒しましょう!
政浦:
人材は、奪い合っていても減っていくだけなんですよね。
そもそも企業は利益追求していくものですが、より長期的な視点で、お互い切磋琢磨しながら金沢市全体の人を増やすようなゴールを共に目指していきましょう。
それぞれの企業風土や文化があると思うので、そこに至るまでの道のりは様々でも最終的には同じ景色を見たい。そのプロセスを一緒に作っていけたらいいなと思っています。