川内 有緒「読めること/読めないことの先」
この春、九歳になる娘の部屋を作ることになった。それは、私と娘が一緒に使っていた寝室を開け渡すことを意味する。実は、ここ二年ほど娘にはずっと「自分の部屋が欲しい」と言われ続けていたのだが、そのたびに「おもちゃを断捨離したら」「片付けができるようになったら」「毎日ひとりで寝られたら」などと条件をつけては先送りするという身勝手な親ぶりを発揮してきた。娘は条件をひとつずつクリアし、ある日、言った。
「ママは、いつ約束を守るつもりなの?」
もはやこれまで――。娘と使っていた大きなベッドを粗大ゴミに出し、娘用にロフトベッドを購入。大きなクッションと文机を置き、本を読んだり物を書いたりするスペースも作った。東に向いた窓から光がふんだんに入り、なかなか居心地の良い部屋の完成だ。
―『學鐙』2024年秋号 特集「“読む”の諸相」より―
電子版のご購入はこちらから
ここから先は
3,444字
¥ 100
期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?