能町 みね子「快適からさらなる快適を求める二拠点生活」
この原稿を依頼されるにあたり、提示されたテーマは「過去の選択と、今の私」でした。つまり現状に至るまでに起こった、人生における大きな選択、転機となる分岐点についてひとつお願いします、というわけです。
中高年が自分の人生を決定づけた選択について語り出すとなると、だいたいその人が「何者か」になる前の話をすることになります。
何者か分からない状態の自分が、何者かへの糸口を掴み始めた瞬間。
不安定→安定へのドラスティックな変化。
そういったものが、この手の話としてはもっともポピュラーであるように思います。私にもそんなふうに語れる選択はいくつか思いつきます。
しかし、今回はそういうことではなく、ある程度安定を得てからの選択について語りたくなりました。物書きの仕事を始めて十年以上が経ち、時にはテレビやラジオなどのメディアから出演オファーを受け、プライベートでは一般的な結婚の形とはかけ離れているものの同居するパートナーを見つけ、客観的に見れば十分に生活が安定してからの、選択。四二歳での選択の話。
―『學鐙』2024年夏号 特集「私の原点、転換点」より―
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