ウスビ・サコ「ニッポンの空気と空間利用」
私はマリ共和国の首都バマコで生まれ、幼少期を主にバマコまたはセグというバマコから三〇〇キロほど離れた都市で過ごしました。高校卒業後、国の奨学生として中国に渡り、北京市の北京語言大学で一年間、南京市の東南大学で五年間ほど留学生として過ごしました。その後、日本に留学し、卒業後も研究者として三十年以上生活してきました。中国や日本の滞在中に、五十以上の国や地域を渡り歩き、様々な文化を体験する機会に恵まれました。
どの地域や社会にも、共同体の構成員が共有する一定の決められたルール、慣習やしきたり、つまり「生活のコード」があります。共同体の中で円滑に生活しようと思うならば、それらの共同体のコードを身につける必要があります。
特に、言葉を介さずに交わされる非言語的なコミュニケーションや、相手に期待する反応を求めることなどが挙げられ、これらのコードの活用こそが、いわゆる「空気を読む」ことと言われています。コードの活用には、感覚的に「その集団の決まりごと」を読み取る努力が必要となります。
私自身も、様々な集団と接する中で、常にその集団の独特な生活習慣を理解する努力をしてきました。私は世界中を旅し、いくつかの国や民族の言葉を話すことができますが、日本ほど生活習慣の理解に苦労した国や文化はありません。
―『學鐙』2023年秋号 特集「共に在る、共に生きる」より―
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