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養老 孟司「学ぶということ」
養老 孟司(ようろう・たけし)――東京大学名誉教授。
こころの問題や社会現象を、脳科学や解剖学などの知識を交えながら解説し、多くの読者を得た。1989年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』は大ヒットし2003年のベストセラー第1位。
学ぶことを取り立てて題材にするのは、学ぶことを人生の当然と思っていない証拠である。人は日々学ぶ存在で、「学ぶ」は「生きる」中に含まれている。
わが国では、学ぶには努力がつきものという偏見?がある。努力して学ぶのは最低で、好きで学ぶのがその上、いちばんいいのは学ぶこと自体を楽しむこと、「これを楽しむにしかず」と論語にもある通りである。
生きることと学ぶことが乖離してしまうのは、学校教育に原因があると思う。教育が社会的なシステムとしてそれ自体の独立性を強めるほど、日常生活との関連が切れがちになる。それに慣れてくると、学ぶとは学校で習うようなことだという信念が生じてしまう。日本ではそうなりがちだと感じる。それで差し支えない人もいるだろうし、具合が悪い人もいるはずである。不登校が問題になったりするのは、そのあたりの問題が根底にあるからで、言うなれば学校教育が当然という前提に異論が生じているだけのことであろう。
ヒトは必死で生きているときに、いちばんよく学ぶ。それは誰でも経験することであろう。そういう時に学んだことは、心に「焼き付く」のである。もうひとつの学びは反復練習である。あらゆる技能はそれによってのみ、身につく。身につかないばあい、私はそれを学習と呼ばない。知識がただ増えることが軽蔑されるのは、それが身についていないからである。
―『學鐙』2023年夏号 特集「いま私たちが学ぶべきこと」より―
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書評
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水上 文(文筆家 ・文芸批評家)
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