礒津 政明「人の創造性とテクノロジー」
人類史を彩るテクノロジーの発展は、その起源をたどると、意図的に鋭利な石の形をつくり、道具として利用していた石器時代までさかのぼります。ホモ・サピエンスが他のどの種よりも特に優れていたのは、様々な用途に対して道具を自在に改良できる能力でした。これにより、肉体的には他の動物よりもはるかに劣っていた人間でしたが、地球上で最強の地位を手にすることとなります。
優れた道具はある日突然生まれるわけではありません。人類は改良した道具を後の世代に受け継ぎ、時代とともに知識と経験を総合しながら学びを積み重ね、次の進化の礎としてきました。表象としては見えないくらいの小さな改良ですら、弛まずに幾重にも積み重ねるのは「人間らしい」行動であり、文化的な振る舞いでもあります。人間が社会的学習を通してテクノロジーを改良してきた歴史が、現代のイノベーションへと連綿と繋がっています。つまり人類は互いに学び合うことによって新たなテクノロジーを生み出し、そのテクノロジーにより自分たちの能力を「拡張」してきたことになります。
―『學鐙』2023年夏号 特集「いま私たちが学ぶべきこと」より―
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