見出し画像

礒津 政明「人の創造性とテクノロジー」

礒津 政明(いそづ・まさあき)――株式会社ソニー・グローバルエデュケーション会長。
1975年生まれ。ロボット・プログラミング学習キット「KOOV®」などを展開しつつ、技術と思想面から教育分野にイノベーションを起こすべく邁進している。著書に『2040 教育のミライ』。

 人類史を彩るテクノロジーの発展は、その起源をたどると、意図的に鋭利な石の形をつくり、道具として利用していた石器時代までさかのぼります。ホモ・サピエンスが他のどの種よりも特に優れていたのは、様々な用途に対して道具を自在に改良できる能力でした。これにより、肉体的には他の動物よりもはるかに劣っていた人間でしたが、地球上で最強の地位を手にすることとなります。
 優れた道具はある日突然生まれるわけではありません。人類は改良した道具を後の世代に受け継ぎ、時代とともに知識と経験を総合しながら学びを積み重ね、次の進化の礎としてきました。表象としては見えないくらいの小さな改良ですら、弛まずに幾重にも積み重ねるのは「人間らしい」行動であり、文化的な振る舞いでもあります。人間が社会的学習を通してテクノロジーを改良してきた歴史が、現代のイノベーションへと連綿と繋がっています。つまり人類は互いに学び合うことによって新たなテクノロジーを生み出し、そのテクノロジーにより自分たちの能力を「拡張」してきたことになります。

―『學鐙』2023年夏号 特集「いま私たちが学ぶべきこと」より―

電子版のご購入はこちらから

『學鐙』2023年夏号
電子版・冊子版 定価250円(税込)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※「★」印の記事はnoteにて順次配信予定(一部無料配信)
灯歌
穂村 弘(歌人)
特集
養老 孟司(東京大学名誉教授)★
内田 樹(神戸女学院大学名誉教授・凱風館館長)★
山口 謠司(大東文化大学文学部教授)★
尾島 巌(ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校卓越教授 兼化学生物・創薬研究所長)★
礒津 政明(株式会社ソニー・グローバルエデュケーション会長)★
青柳 いづみこ(ピアニスト・文筆家)★
連載
青木 真兵(「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター)
五十嵐 杏南(サイエンスライター)
髙宮 利行(慶應義塾大学名誉教授)
書評
渡辺 祐真(文筆家・書評家)
水上 文(文筆家 ・文芸批評家)
二村 淳子(比較文化研究者・芸術学者)
橋本 輝幸(SF研究家・書評家)
丸善出版刊行物書評
山極 壽一(理学博士)
九里 順子(宮城学院女子大学名誉教授)

ここから先は

3,863字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?