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北里大学|新千円札の肖像は何歳頃の博士の写真?~北里柴三郎博士の足跡を辿る~

2024 年に1万円札・5千円札・千円札が刷新。その新千円札の図柄には学祖・北里柴三郎博士の肖像が採用されることに。でもこの肖像って、いつ、どんなときの博士を誰が描いたもの? その謎を探るべく、白金キャンパス内にある北里柴三郎記念館の展示室へ。


国立印刷局に貸し出した北里柴三郎博士の4枚の肖像写真

 2017年に完成した北里柴三郎記念館は、その名のとおり北里柴三郎博士に
まつわる資料を収集・展示する施設。肖像の謎を知る手がかりはきっとここにある。ということで、記念館設立以来、資料の収集に尽力してきた大久保さんと、学芸員の遠藤さんに話を聞きました。

教えてくれた人

(右)大久保美穂子さん/北里柴三郎記念会
(左)遠藤瑠海さん/北里柴三郎記念室 

 大久保さんによれば発端は2014年。紙幣や切手をつくっている国立印刷局の職員が記念室を訪れ、博士の肖像の提供を依頼されたことだったと言います。「記念館で所蔵している肖像の一覧をお渡しし、そこから選ばれた4点の写真をお貸ししました。そのときは『工芸官の技術力練磨のため』とのことでしたね」
 この「工芸官」とは、紙幣や切手のデザインを行う専門的な国家公務員のこと。大久保さんは当時、紙幣の肖像になるとは思いもせず、「もしかしたら切手の図案になるのかな?」と思っていたそう。2018年にも国立印刷局から同じ理由で再び肖像写真提供の依頼があり、その1年後に財務省から「北里研究所の理事長に会いたい」との連絡が。ただならぬ雰囲気から感じた「もしや」という予感が的中、それは博士の肖像が新千円札の図案に決定したという報告でした。そして翌日の2019年4月9日、新紙幣のニュースが日本中に流れることに!

年齢を知る手がかりは記念室の資料と博士の髪型!?

 では、いったいどの写真が紙幣に採用されたのでしょうか? 実は紙幣の肖像は工芸官が描き起こすため、厳密には何が元になったのかはわからないそう。しかし、貸し出した4点の写真がベースになっているのではないかと遠藤さん。「お渡しした写真のうち、紙幣の肖像に近いのが、57歳頃と、46歳頃の写真。紙幣の肖像の髪型は七三分けですから、おそらく50代の博士がモチーフになっているのではないでしょうか」

(左)46 歳頃の写真。伝染病研究所を創立するなど、精力的に 活躍していた時期。
(右)57 歳の写真。『北里柴三郎伝』に「当 時の先生(明治四十三年)」との記載が見られる。

 年齢の手がかりは、髪型と、その写真が掲載された冊子の情報。50代の写真は、伝記『北里柴三郎伝』が発行された1932年以前のものだそう。こうして肖像の謎は無事に解明されたのでした。
 国立印刷局のウェブサイトで「破傷風血清療法を確立し、ペスト菌についても発見。私立伝染病研究所、私立北里研究所を創立」と紹介されている博士は、2024年の未来、日本の顔に。ちなみに相模原キャンパスの銅像を「スマホの待受にすると合格できる」というウワサがあり、もしかしたら肖像や紙幣にもご利益があるかもしれません!?

北里柴三郎記念館 展示室

白金キャンパスの一角にある北里柴三郎記念館。その1 階は北里柴三郎博士の生涯と日本の近代医学の歩みを時系列で学べる展示室が。学術論文など博士の資料のほか、恩師・恩人、門下生など、関係者の資料も充実。

https://www.kitasato.ac.jp/jp/kinen-shitsu/index.html


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記事の内容は、2022年12月取材時のものです。