蒲田健の収録後記:星野智幸さん
絶望から希望へ
星野智幸さんの最新刊「焔」
舞台はそう遠くない近未来と思われる日本。危機的な環境の中、焚火を囲む者たちが
各々の物語を語りだす。語られる物語は9つ。あらゆるものが極端な方に流れ、
行き着いた先は混とんとした世界。
元々は東日本大震災の前に書かれたものから昨年書かれたものまで、かなり長い
スパンの中で発表された独立した短編。連作にする意図はそもそもはなかったと
いう。だがある程度数がそろった段階で改めて読み返してみると、星野さん自身も
気づいていなかった通底する世界観がそこにはあった。であるならば、
これをまとめ、更にそれぞれの物語をつなぐ橋渡し的な語りを入れることによって
一つのまとまった大きな世界に昇華した。
人間はこのままでいいのだろうかという問題意識を、あえて最悪な状況を描くことに
よって最悪になることを抑止する作品を発表してきた星野さん。
だが今作では絶望的な状況から始まるものの最後は希望を見出すベクトルに
シフトしている。
そのことの意味を、じっくりと熟読することによってつかみとる読書体験は
濃厚にして有益であること、間違いなしである。
「人はいざ これでいいのか このままで
変わっていかねば まずいぜホント」
P.S.海外に行ってしばらくボーっと過ごすと、頭の中の意外な要素同士がつながり、
新しい物語が生まれてくるというお話をされていた星野さん。
豊かなイマジネーションは、時に自らでさえ予期できないところから
出てくるんですねー。
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