蒲田健の収録後記:吉藤オリィさん
人間の孤独を解消する
吉藤オリィさんの最新刊「サイボーグ時代」
サイボーグと聞くと、奥歯に加速度スイッチが内蔵されていたり、足の裏のジェットエンジンで空を飛べたりと、超能力をもつ人造人間=ある意味荒唐無稽なSFの世界を想起する向きも多いだろう。だがその定義を「生来の状態では実現困難なことを、人工物のサポートを加えることによってできるようにした人間」とすると、例えばペースメーカーのユーザーはこの範疇に入るであろうし、もっとカジュアルな例でいえばコンタクトレンズ装着者もそうであると言える。
肉体と人工物のハイブリッド。これを広義に解釈すれば、調べたいことを瞬時に検索できるスマホ所有者もサイボーグとみなしうる。つまり程度の差こそあれ現代人の多くはサイボーグ成分を持っている。すでにサイボーグ時代は到来しているのだ。
で、その先にはどのような世界が待ち受けているのか?テクノロジーの進化にはネガティブな見方があるのは一面の事実。自分の仕事が奪われてしまうのでは?という懸念。
それに対する吉藤さんの回答は、今作のサブタイトルにも表されているだろう。「リアルとネットが融合する世界でやりたいことを実現する人生の戦略」。テクノロジーが人間を凌駕するわけではなく、またその逆でもない。互いが互いを補完し合って人間はよりやりたいことを実現する可能性を高められる、ということだ。
その果てには吉藤さんがご自分のミッションとする「人間の孤独を解消する」というものが見えてくるかもしれない。
自らの手で様々なテクノロジーを具現化しているからこその説得力が、そこにはある。
「対峙する 敵ではないぞ サイボーグ
手を携えて 共にゆく友」
P.S. 収録前に軽く雑談をしながら、あっという間にバラの創作折り紙を作ってくださった吉藤さん。名刺入れにこれはいいなーという仕掛けがあったり、試作中のテクノロジーもお持ちいただき実物を拝見させていただいたりと、人を幸せにする「未来」が形としてもうここにあると実感いたしました。「心を運ぶ車イス」という表現にグッときました。