勘違いの話。

ココ数年お世話になっている、とあるプロデューサーさんから電話を頂いた。ドラマ企画書制作の依頼だ。こんな若造を贔屓して下さる事に頭が下がる。

電話ではその企画書に関する内容ともう1件、別の内容も含まれていた。

「ガク君、前にモバゲーの話してたでしょ?」


全く記憶にない。
そもそも「モバゲー」という単語を久々に聞いた。
知らない人の為に一応解説しておくと、ガラケーが主流だった2007年頃に全盛期を迎えていたソーシャルゲーム会社の名前が「モバゲー」だ。
現在もスマホ向けゲームアプリなどを開発しているらしいが、大変恐縮ながら、個人的にここ数年その名前を見かけた事は無かった。

僕は小さい頃からいわゆる「うんちく好き」な子供であった。
TVで聴いた知識や本で読んだ雑学は出来るだけ忘れない様に丁寧に包装され、頭の中の桐箪笥に大切に保管してある。それら数は我ながら中々に膨大な量となっている為、1から探すのでは日が暮れてしまう。その為、うんちくを思い出すキッカケは大体検索ワードになる。

例えば今日シューマイを食べた。
脳内で、「シューマイ」が検索される。
『シューマイになぜグリーンピースが乗っているかというと、工場のベルトコンベアでシューマイの数を数えやすくする為、という説が有力らしい』という、いつ聞きかじったかも思い出せないうんちくが出てくる。
書いといて難だが真意の程は不明だ。

そんな僕の脳内に「モバゲー」で検索をかけても何も出てこない。
流石に数年も使ってないうんちくというのは忘れてしまう事もあるが、どうもそのレベルではない。一体この人に、僕は何の話をしたいのだ。
何かと勘違いしているのではないだろうか。

こういう時、疑うべきは2つだ。
1つ、僕じゃない人の話と勘違いしてる可能性。
2つ、話したのは僕だが「モバゲー」ではない可能性。
会話の中でさり気なくそのどちらかを見極める必要がある。


「eスポーツってあるじゃない?あれ関係の仕事で…」

業務上詳細は割愛させていただくが、これまたややこしいワードが出てきた。「eスポーツ」。ゲームという意味で「モバゲー」と親和性がある。
となると、本当に「モバゲー」の話の可能性が高い。
だとすると僕ではない誰かと勘違いしているのではないか…

結局、その電話の中で真意を探る事は出来ず、つい曖昧な返事と共に依頼を受けてしまった。詳細を書けないのがもどかしいが、「モバゲー」の話が何であっても、依頼そのものには然程関係なかったので良いのだが、モヤモヤはする。

一体何だったのか。そもそも「モバゲー」のうんちくって何だ?
ものすごい気になる。
帰りの電車でもずーーっとその事で頭がいっぱいだ。
つい、「モバゲー」でgoogle検索までかけてしまった。
目ぼしい物は出てこない。

気づくと家に到着していた。
手を洗い、荷物を下ろし、コートを脱ぎ、
ふぅっと座椅子に腰をかけ、壁に目をやる。
壁には、モデルガンの数々が並ぶ。
それで気づいた。

きっと「サバゲー」と間違えたに違いない。

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