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|015|渡邊織音/構造設計・舞台美術家/33歳

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本棚は建物の一部であってほしいと思っていて、間取りの複雑な古い民家を改築しながら住んでいることもあり、手間暇かけて自作しました。おかげで、自宅にいる時間が増えてもなんだか楽しく過ごせています。

大学時代からこれまでに多くの時間を費やしてきた設計、旅、ワークショップの参考書や貴重な資料が収められている棚は、何度整理してスペースを空けても、次の引越しシーズンには決まって知人から連絡が入り、彼らから引き取った本は吸い込まれるようにその隙間を埋めてしまい、またあふれていきます。本と興味を増やし続けて、本棚は縦に横に増え、代謝し、多様な関係性を可視化するように成長します。

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最近は舞台の仕事も多く、つい最近まで血に染まったハンカチ(小道具)が掛かってました。刺激的な本棚です。建築・舞台・NPOなど仕事や創作はいつも同時並行で、手で作品を作っては身体で考えることを続けていて、思い返せば舞台も建築も旅も、身体性による理解をもとめてきました。活字は身体性を拡張してくれます。時代に触れている活字が新鮮な色をもち私を刺激する一方で、長年積まれている本も、ぬか床の発酵を見計らうように、ある時違う輝きを与えてくれます。

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かたちの劇場-丸山欣也の造形教室』は、10年前に初めて編集に関わらせてもらった本です。早稲田大学建築学科と芸術学校の学生がともにつくりあげた、手で考えるベーシックデザインと身体を使うワークショップの成果が基になっています。四角くてかわいらしい本ですが、オールカラー・博物学的な膨大な資料掲載とともに、世界中で行われてきたワークショップの実例や、自然物を利用した空間構成のドローイング、美しい水彩で仕上げた作品といったプロセスと学生作品を記録していて、今なお惹かれる一冊です。そして丸山欣也先生の半世紀にわたる膨大な旅スケッチのごく一部が収められています。本棚は、知識を身に付け、アイデアの血肉を与えてくれる存在であり、この本が普遍的な価値と多様性を示してくれたように、私の思考の支えとしていきたいと思います。

現在、丸山先生のスケッチブックのすべてのアーカイブ作業がフランスで行われているという話を聞き、ここでご紹介させていただきます。クラウドファウンディングも実施中ですので是非ご覧ください。

https://www.kinyamaruyama.com/




●棚主プロフィール

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渡邊織音/構造設計・舞台美術家/33歳
1986年生まれ、東京都出身。構造設計・舞台美術家。2017年より演劇=グループ・野原に参画。意匠・構造の設計事務所勤務を経て独立。早稲田大学在学時より自力建設や建築デザインを通した国内外のワークショップを中心とした活動に関わり続け、東日本大震災での支援活動をきっかけとして、福島でNPOを設立し、農・食・観光・再生可能エネルギー等の活動に携わる。古民家を改修しながらの生活で、日常の中に失われていくものや、取り残されている姿・風景をじっくりと観察し、様々な分野を横断しながら新しい視点を作り続けている。近年の舞台美術で携わった作品として、利賀演劇人コンクール2018にグループ・野原『冒した者』@富山県利賀村岩舞台、鳥公園のアタマの中展2『おねしょ沼の終わらない温かさについて』(2019)@東京芸術劇場アトリエイースト、ヌトミック『それからの街』@CLASKA(2020)、円盤に乗る派『おはようクラブ』@吉祥寺シアター(2020)

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