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§10.1 憲政と政党/ 尾崎行雄『民主政治読本』

憲政と政党

 立憲政治に政党はつきものである.つきものというよりも,立憲政治は政党がなけえば,やっていけない政治である.
 明治憲法では,内閣総理大臣の任免は天皇の大権にぞくし,必ずしも政党の首領でなければ総理大臣にはなれぬというきまりはなかった.それにもかかわらず,明治憲法を本当に活かそうとすれば,どうしても政党政治を実行するより外に道はなかった.
 もっとも一時的に,いわゆる政党内閣時代を実現したこともあったが,それはただ外形がそうみえただけで,実質的な政党内閣はまだ1度も実現せずに,明治憲法はおわりを告げた.
 なぜ明治憲法の下では真正の政党政治が行われなかったのであろうか.藩閥や元老や軍閥等の封建的勢力が,強く政党政治の成長を妨害したためであるというが,そんな封建的勢力をはねのけて政党政治を実現することが政党の使命である.それをはねのけることができなかったのは,政党が無力だったからである.否日本に真の政党がなかったからである.
 私はほとんど過去半世紀以上にわたり,あらゆる非立憲的勢力をはねのけて,名実かねそなわる政党政治を実現することにていしんして来た.そしてこの目的を達するためには,何んとしても本当の政党をつくらねばだめだと思って,ずいぶん骨を折ってみたがどうしてもだめであった.政党の形だけはすぐできるが,それに公党のためしいを入れることがどうしてもできない.なぜだろうと考えてみた.


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底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)

本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。

2021年4月2公開

誤植にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。

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