§9.5 落第候補者/ 尾崎行雄『民主政治読本』

落第候補者

 もちろん立派な選挙は,有権者側の自覚だけではできない.候補者側にもマコーレー卿ほどの見識と,選挙に対する良心的な態度がのぞましい.当選するためならうそもつく,その場かぎりでどんな約束でもする,ごちそうもする,金もまく,いわゆるなさざるなしという候補者が多いが,そういう候補者は,自ら封建思想の持主で,力の信者で,立憲政治に対して,何んの理解もないことを告白しているようなものだ.誰を選ぶべきかは二の次として,こんな候補者には断じて投票しないことにするのが,民政維新への近道である.
 本当に人民の味方になってくれるような政治家は決して自分が当選したいからといって,不正な選挙にくみするものではない.


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底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)

本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。

2021年3月25日公開

誤植にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。

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