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§12.3 御意のまま/ 尾崎行雄『民主政治読本』

御意のまま

 よかれ悪しかれ,政党は選挙という鏡にうつった有権者の影である.鏡の中の影(政党)の行儀が悪いのは,鏡の前に立った御本尊(有権者)の行儀が悪いからである.
 有権者が道理にかなった政治を求める心,不正不義をにくむ心で投票すれば,政党もまた同じ心をもって,立法府の内外で行動するであろう.もしそうしなければ,党の勢力を維持し,かくちょうすることができないからである.これに反して,有権者が,一地方のために無理な註文をしたり,多数党の力で不正なのぞみをとげようという気持で投票すれば,政党は,どうしても立法府の内外で横車を押し通す力を示さなければ,党の勢力を維持し,かくちょうすることはできない.すなわち,有権者が“道理”を愛し,不正不義をにくめば,政党は善事をなし,正道をふむ公党となり,有権者が,無理でも押し通す“力”をありがたがれば政党は悪事をなし,邪道をふむ私党とならざるを得ない.つまり政党は有権者の御意のままに動くほかはないのである.
 わが国の政党が,これまで,とかく善事を競わず,むしろたがいに悪事の競争をやり合っているようなかたむきがあったのは,そうしなければ有権者のお気に入らなかったからであろう.


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底本尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)

本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。

2021年4月20日公開

誤植にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。


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