都会の自然を発掘せよ〜ルアーで鮎釣り〜
日本人で知らない人は皆無。としても多分怒られない魚にアユPlecoglossus altivelisがいる。
淡水魚の中では別格の愛され方をしている(と勝手に思っている)種類である。だからこそか、この魚の釣法は餌釣り・毛鉤釣り・転がし釣り・友釣りなど、数多くある。なお、私は毛鉤釣りを題材にした、夢枕獏氏の小説『鮎師』が大好きだ。
ポピュラーな鮎釣りは”友釣り”
さて、鮎を狙う釣り人にとって最も人気なのが“友釣り”であろう。
アユは餌となる藻の生えた大きな石の周りに縄張りを作って餌を独占する。そして、自らの縄張りに侵入個体を体当たりで撃退する。友釣りは、この習性を見事に利用した釣法である。
知っている人も多いと思われるが、念の為、”友釣り”も説明しておく。この釣りは囮(おとり)アユという生きた本物の魚に「掛け鉤」という鉤を仕込み、そのまま泳がせる。そして、他の個体の縄張りに侵入させて体当たりしてきた個体を「掛け鉤」に掛けて引き上げる。
「釣りは魚の口に掛けるものだ」
という固定概念を見事に無視している点が清々しい。友釣りにおいてスレ掛りこそが王道なのである。
ルアーDEアユ
ここからが本題。
近年、このアユのルアー釣りが流行りつつある。昔からひっそりと専用ルアーは販売はされていたが、どうやら釣具メーカーが「流行らせよう」と本腰を入れた模様だ。釣り方は、友釣りの応用。『キャスティングアユ』とか『アユイング』とか呼ばれている。原理は簡単。ルアーを縄張りの中に通してくるだけだ。ただし、いくらルアーを使っても口でルアーに噛み付くわけではない。
なお、我ながらどうしようもないのだが、「早速やってみよう…」にはならない。楽しそうだが、わざわざ流行に乗るのが恥ずかしい。先日、釣具メーカーに就職した教え子からも「アユイングが楽しかった」という話を聞いたところである。その時は、「もう少しブームが収まったらやるかも…」と言ったのだが、そんな舌の根も乾かぬうちに、ミノーでアユを掛けてしまった。
それはハスを探して彷徨っていた時のこと
ハス釣りのポイントを開拓するために彷徨ったある日。
「おはようございます」地元の釣り人との挨拶。ついでに、自分がケタバス(ハス)を探していると話した。すると「アユを狙っていてもケタバスが先に掛かる」という川を教えてもらった。
そんなこんなで、一目散。早速その川に臨んでみたところ、「ケタバスを狙うのにアユしか掛からない」というアベコベな無双モードの気配を帯びてしまった。
そこで、即席でキャスティングアユゲームに乗り換えることにした。アユを真面目に狙ってみようということだ。
その場でフックを細軸バーブレスに変更。きちんとやったら、また釣れた。狙い始めると釣れなくなるのが釣りというものだが、今回そんなことはなかった。
どうやら時期やその時の条件が良すぎたようである。しかし、アユの口にルアーが掛かるはずはなく、「これはスレだよな…。」という複雑な心境は拭えないのであった。でも、面白いのも否定できない…いや、面白い。はっきり言って本気でやったら「沼」かもしれない。
何より、本物の友釣りをやりたくなってくるのが怖い。
自分が囮にやられている…のか
怖いことに気づいてしまった。
友釣りの達人は巧みに長いのべ竿を使って生きている囮アユを操る。縄張りが作られている大きな石のあたりにその囮アユを誘導するという点で高度な技術を要する。その点、ルアーは狙ったところに投げて泳がせるだけなので簡単。
何より、釣れる釣りは楽しい。
おっと…ひょっとしたら、これはメーカーの陰謀ではないだろか。最終目的はルアー釣りから友釣りの世界に釣り人を誘導することかも。
こういうのを「陰謀論」とかいうのだがいかがなものか。
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