超有名な俳句 11選
[はじめに]
みんな知ってるように、俳句は17文字でできた詩です。非常に短いわけですが、優れた作品は奥行きがあり、読み手によって様々な解釈が可能になります。
ここではそんな超有名な俳句の名作を、11句選んでみました。俳句が成立した江戸時代のものから現代俳句まで時代別に並べていますので、時代ごとの雰囲気や作風の変遷みたいなものも示せればいいなと思います。
ただしこれは入門編であり、有名な句、優れた句は他にもたくさん存在します。興味を持ったり考えたりする何かのきっかけになればいいなという思いでまとめましたので、気軽に読んでいただけたら幸いです。
[1]
古池や蛙飛びこむ水の音
作者 松尾芭蕉
季語 蛙(春)
成立 1686年
〜鑑賞〜
淀んだ水の古池は森閑と静まり返っている。が、一瞬ポチャっと蛙が飛び込む音がする。後には再び静寂。
和歌では蛙はその鳴き声の情趣を詠むものであった。しかしここで着目されるのは蛙の動きである。単純な情景に妙味を見いだした記念碑的な発句だ。
[2]
菜の花や月は東に日は西に
作者 与謝蕪村
季語 菜の花(春)
成立 1774年
〜鑑賞〜
一面の菜の花畑。太陽が西に沈んでいく一方で、東の空からは月がのぼってきた。春の夕暮れの風景を壮大に描いている。
[3]
雪とけて村いっぱいの子どもかな
作者 小林一茶
季語 雪とけて(春)
成立 1814年
〜鑑賞〜
江戸時代の山間部では厳しい冬を越すのに一苦労であったことが想像される。
村いっぱいの子どもたちはきっと元気いっぱいはしゃぎまわっているのだろう。朗らかな喜びが湧いてくる。
[4]
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
作者 正岡子規
季語 柿(秋)
成立 1895年
〜鑑賞〜
茶店で甘い柿を食べていると、寺の鐘の音が聞こえてきた。秋の穏やかな情景が心に優しく沁み渡る。
記者として日清戦争に従軍していた作者は喀血し、療養を余儀なくされる。その際松山で夏目漱石の世話になる。奈良旅行は病状がよくなり帰京する際に立ち寄ったのである。よってこの句は、友人漱石へのお礼の句でもあるとされている。
[5]
遠山に日の当たりたる枯野かな
作者 高浜虚子
季語 枯野(冬)
成立 1900年
〜鑑賞〜
寒々とした枯野の山に、太陽が当たっている。寂寞のなかにかすかに灯る光。暗い気持ち一辺倒ではない、自然の情景。
[6]
流氷や宗谷の門波荒れやまず
作者 山口誓子
季語 流氷(春)
成立 1926年
〜鑑賞〜
北海道のような厳寒の北国では、冬に海水が凍る。流氷は、凍った海水が溶けて流れる情景であり、春の訪れを詠っている。門波の語感の鮮やかさが素晴らしいと思う。
[7]
どうしようもないわたしが歩いている
作者 種田山頭火
季語 なし
成立1929年
〜鑑賞〜
無季語・無定型による前衛的試みは、鑑賞者に率直な自己表現という印象を与える。
[8]
万緑の中や吾子の歯生え初むる
作者 中村草田男
季語 万緑(夏)
成立 1939年
〜鑑賞〜
大胆な中間切れ(七音の途中で句切れ)の手法が鮮烈な効果を発揮している技巧的な名句。作者が用い夏の季語として定着した「万緑」という言葉に見られる見渡す限りの草原or野原or草木。その真っ只中において、吾が子の生え始めた純白の乳歯の鮮やかさ。緑の中で白が映える印象的な色彩美を有している。
赤ん坊の見せた笑顔は生命への賛美、この世界への大いなる希望であり、輝きであるはずだ。
[9]
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
作者 加藤楸邨
季語 鮟鱇(冬)
成立 1949年
〜鑑賞〜
暗い印象の句。「ぶちきらる」と受け身を用い鮟鱇(アンコウ)の視点に立っているその荒々しい語感が鮮烈な印象を与える。
凍りついた死に体の鮟鱇は陰鬱で絶望的な自己へのメタファーになりうるかもしれない。
[10]
新宿ははるかなる墓碑鳥渡る
作者 福永耕二
季語 鳥渡る(秋)
成立 1980年
〜鑑賞〜
雑踏からでも建物からでも、新宿に足を下ろし西側をのぞむと、高度経済成長期に建てられた高層ビル群が立ち並んでいる。資本主義的繁栄は雄大な自然をはじめ多くのものを失った上に成り立っている。その象徴ともいえる高層ビル群は、視覚的にも比喩的にも「墓碑」なのである。しかも、「はるかなる」。また、西側には作者の故郷、および死んでいった者たちの無数の魂がある。
そんな新宿の空を、鳥が渡っていく。奇跡のような名句だと思う。
[11]
三月の甘納豆のうふふふふ
作者 坪内稔典
季語 三月(春)
成立 1984年
〜鑑賞〜
甘納豆を頬張り、思わず笑みがこぼれる。口語を用いた、軽い、日常の情景。笑っているのは子どもか若者か年寄りか。
「超有名な現代短歌 6選」
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https://note.com/gakio_literature/n/n787a582fc555
「超有名な小説 10選 (日本の長篇)」
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