
[作文]ドライブと魔法使い(1/4)
初めてサザンオールスターズを聞いたのは、父の助手席だった。
たしか小3か小4の夏休み、僕は、初めてひとりで新幹線に乗って、静岡県天竜市(現•浜松市天竜区)にある、母の生家に帰省していた。
母の生家の近くには「気田川(けたがわ)」という、天竜川水系の幅15メートルほどの川が在り、僕は従姉弟(いとこ)たちと、日がな川遊びに興じていた。
3泊か4泊ぐらいして、もう東京に帰らなければいけないというその日の朝、目を覚まし、朝ごはんを摂りに居間に行くと、そこにはなぜか、東京にいるはずの父がいた。
ショートホープをふかしながら軽く手を上げ、「おう」とか「おはよう」とか、機嫌よく僕に言った。
何がなにやら僕はわからず、たぶん、「おはよう」とは言わずに「なんでいるの?」と言った。
どうやらこの頃、父は初めて車を買ったばかりで、その車を乗り回したかったのか、夜中、東名高速をと飛ばし、天竜まで、帰省している僕を迎えに来たようだった。
帰りも「こだま」で帰るものだと思い込んでいた一一一当時、まだ「ひかり」は浜松駅に停車しなかった一一僕はすこし面食らってしまったが、それでも父とのドライブに胸が弾んだ。