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書籍紹介「ドリーム・ハラスメント」①「子どもに夢を持つことを強制する社会」

本書をご紹介する理由

私たちGAJYUMARUは、「沖縄に生まれた子どもたち1人ひとりが、自分の人生を描くサポートをすることで沖縄の未来を切り拓く」ことをビジョンとして掲げています。

そのために、子どもたちに自分の人生を描く上で必要な情報や機会を提供するサービスを考えているのですが、そこで皆さんと共に考えたいことがあります。

それは、「夢」という言葉についてです。
先日、メンバー内の企画会議でも話したのですが、私自身にぼんやりとあった問題意識を顕在化させてくれた書籍があるのでご紹介します。

「ドリーム・ハラスメント」(高部大問(2020).ドリーム・ハラスメント イースト新書)という書籍です。
以下、本書の「はじめに」よりご紹介します。
「夢」に関しては私たちのビジョン上非常に重要なテーマだと位置づけるべきだと考えており、今回もシリーズでお届けします。

本シリーズの狙いは、

・「夢」という言葉、「夢を持つことが正しい」という発想が子どもにどんな影響を与えるのか?
・何より、子どもが自分の人生を描く上で、どんな言葉やサポート方法が望ましいのか?

です。

「はじめに」より引用

※重要だと思った箇所を私にて太字としています

「夢を持つことを強制されている」

(中略)

実はそれ、ハラスメントなんです。もちろんすべてではありません。なかには夢を持ち夢の実現のために日々努力して生きている若者もいるでしょう。
しかし、私が現場で相談を受けるのは、「夢なんて無いんですけど、どう答えればいいんですか」という嘆きや不満の声です。私はこれを「ドリーム・ハラスメント」と呼んでいます。嫌がらせだと感じる受け手が後を絶たないからです。

大学生だけではありません。高校や中学校に呼ばれてキャリア教育の一環で講演をさせていただくと、同様の被害を多数見聞きします。
冒頭の高校生に加え、「夢が無いからお前はその程度なんだ」と親御さんに咎められたり、「お金持ちなんて夢はダメ」と先生に指導されたりしているのです。東京大学に進学者を出すような学校でも、です。

被害報告は次々と届いています。臨場感溢れるリアルな声に触れていただくため、一部ですが、原文のまま御紹介しましょう。
「世の中の大人は夢に向かって一直線で行くことを勧めてくる」
「親に『まだやりたいこと見つからないの?』とか『お母さんはもう高校生のうちに決まってたよ』とかよく言われている」
「『夢はまだ決まってません』と言ったら、『そんなのは、ロクな人生を送れない』と言われました」
「日頃から夢を持たないとと強迫観念のようなものがありました」


一方で、こんな声も挙がっています。
「自分のなりたい夢を親に言ったらお前には無理だろって言われた」
「中3のときの担任に『結婚して幸せになりたい』という夢はダメと言われた」


その結果、次のように思い至っているのです。
「小さい頃から夢、夢、夢……色んな人に言われ続け、正直うっとうしい」
「夢に模範解答なんてあるわけないのに『あなたの夢は何ですか?』とひたすら問われるのはもうバカバカしい」
「夢を持てっていう風潮、意味分かんないです」
「小学生のときに夢を具体的に決めるように強制されて以来、将来の夢という言葉が嫌い」
「夢が無いことがそんなにダメなのか」
「夢に強制されないで、生活していきたい」
「夢に囚われずに生きたい」


これが、生々しい若者の本音です。

当初、まさかこれほどまで若者たちが夢に悩まされているとは思いもしませんでした。
しかし、10000人以上の若者たちの声と、先生や保護者への600時間以上のインタビューを経て、もはや看過できない域に達していることを痛感しました。
温かいエールのつもりで発している「やりたいことをやっていいよ」でさえも、背中を押すどころか若者たちを苦しめる凶器と化している可能性があります。若者たちはいま、想像以上に夢に追い詰められています。


「夢ごときがハラスメントになるはずが無い」、そうお考えの方もおられるでしょう。しかし、事態は逆なのです。
たしかに、夢のハラスメントなんて今後も法的に裁かれることは無いのかもしれませんが、 「夢ごとき」と認知されているからこそ、これまで夢のハラスメントは暴かれることがありませんでした。そして、「ハラスメントになるはずが無い」という無自覚な思い込みこそ、実はハラスメントの温床なのです。


「自分はそんなことしていない」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。当然です。若者たちの声は保護者や先生を始め、大人の皆さんには届いていないのですから。「夢を持つことを強要されて悩んでいる」と打ち明けたところで、まともに取り合ってくれる大人はほとんどいません。



でも、加害者に自覚が無くとも受け手が嫌がらせだと判断すれば、それは残念ながらハラスメントです。事前に相談できていれば、ハラスメントに発展することは無かったでしょう。

(中略)

もちろん、経済が右肩上がりで、マイカーやマイホームなど個人的なマイドリームを持てた時代はあったでしょう。
でも、皆が夢を持てる時代はそう長くは続きません。あくまで例外。バブルという夢が崩壊したように、それは幻想であり極めて異例な現象です。
いま、日本は夢を持ちやすい国なのでしょうか。物質的に豊かになり、「無いものが無い」という満たされた状況で、強烈に何かを欲するというのは万人にできることではありません。それなのに、私たちはつい若者たちに「夢は?」「やりたいことは?」と執拗に迫っていないでしょうか。
若者たちへの一方的な夢の押し付けはフェアではありません。それならば、大人自身は夢を持ち、若者たちが夢見たくなるような生き方を実践していると言えるでしょうか。
ただし、本書の目的は犯人追及ではありません。 
なぜ夢のハラスメントが起き、なぜこれまで明るみに出てこなかったのか。また、夢とはそもそも何なのか。20世紀に「見るもの」から「持つもの」へ主要用途が転じた「夢」の意味。夢が持てる場合はどのようなプロセスで生じるのでしょうか。こうしたメカニズムを解明したうえで、「夢は持つべき」という思い込みを解き放ち、生き方の選択肢を増やすことこそが狙いです。

(中略)

夢に苦しむのは、学校に馴染めなかったり勉強が苦手で夢見がちな若者くらいだと思われるかもしれません。しかし、実は、勉強が得意な学業優等生たちも被害者の1人だという盲点が明らかとなりました。その意味で、ドリーム・ハラスメントは多くの若者たちが無視できないアジェンダです。
ただし、本書は若者向けではありません。なぜなら、彼らに「夢は必需品じゃない」と告げるだけでは、多少の救いにはなっても、キレイゴトに過ぎないからです。ただのポジティブシンキングに持続的効果は期待できません。いくら「頑張れ」とエールを送ったところで、社会が変わらなければ一時的な気休め程度にしかならないのです。
私たち大人の仕事は、躾や社会化と称して若者たち個人を改造し既存社会に押し込むことではなく、夢の持てる社会の実現や夢を持たなくとも生きていける社会の構築に汗掻くことではないでしょうか。
個人に手を加えるだけでなく、社会の側にも手を施さなければ、個性はねじ曲げられ、多様性は未達成のままです。若者たちが自分を押し殺し、夢に食い殺されている現状を知っていただければ、見て見ぬふりはできないはずです。皆さんの将来の支え手は彼らなのですから。
そのために、若者たちの本音の集積場である教育現場から声を挙げ、これまで明らかにされてこなかったドリーム・ハラスメントという社会的イシューに照射したいと思います。

今の若い人たちに、「夢を持て」は強制なのか?

筆者の高部大問さんは1986年生まれ。1983年生まれの私とほぼ同世代です。
考えてみると、私自身も「夢を持て」という言葉でモチベーションが上がった感覚はありません。
引用部にあった、「経済が右肩上がりで…」から考えると、日本が貧困を克服していく過程は確かに国家の中でも「夢を持つ」ことがリアリティを持って共有されたのかもしれないと感じました。
そうなると、もしかすると私くらいの世代から、実は「夢を持て」は強制として作用していたのではないかと思い、40歳以下の方向けにtwitterでアンケートを取っています。協力いただけたらありがたいです。

※明後日に結果を回収し、こちらでも共有します。

高部さんに共感したのは、「生き方の選択肢を増やすことこそが狙い」と書かれている点です。もちろん、「夢を持て」という周囲の大人も「良かれ」と思ってのことですが、それは「夢を持つことが正しい」と押し付けになってしまっているかもしれません。
現時点では、「夢」という言葉を使わずに子どもたちのキャリアを考えてもらう支援方法を構築することが重要なのではないかと考えているところです。
再度、このシリーズでは「ドリーム・ハラスメント」を引用しながら皆さんと共に考えてみたいと思います。

明日以降の流れ

明日以降は、
・子どもが「夢」という言葉や周囲の大人の働きがけでどういう心境になり、どう対応しているのか?(どんな習慣づけが起こっているのか?)
・自分の人生やキャリアを築いていくということは、どういうことなのか?
・私たち大人たちは、どのようにして現代の子どもたちが人生を描き、デザインするのをサポートできるのか?

を深めていきたいと思います。お楽しみに!

ちなみに、皆さんが「夢」という言葉やキャリア教育に対して感じてきたことなどをコメントいただけると、ほんっっとうにありがたいです!!

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9月は極力毎日noteを書いて、GAJYUMARUについて皆さんによくご理解いただけるようにしていきたいと考えています。
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