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ロマンチック三十路

私は、恋人というものを勘違いしていた節がある。

恋人というものは、私の好きなを曲を知りたがるものだと思っていたし、
私が星を見上げれば、隣で同じ空を眺めてくれると思っていた。
夜中にコンビニまで一緒に歩いてアイスを買いに行ったり、
寝顔の写真を撮ったり撮られたりして、白目の顔をゲラゲラ笑い合うものだと思っていた。

実際のところ、彼(今の夫)は私と音楽の趣味が合わないし、興味もない。
私が外で流れ星を探していても、彼は家の中。
ゴミ捨てついでに夜道を散歩しようと誘っても、しぶしぶ。一緒に行ったのは1度切りだった。
そして彼のカメラロールに私の写真はほとんど無い。


圧倒的に恋愛経験の無かった私は、みんながみんな、お付き合いをしたらRADWIMPSの歌詞に出てくるような感情を抱くものだと信じて疑わなかった。
命懸けの恋とはいかなくても、自分の一部が相手でいっぱいになっちゃうような、甘くて切ない、そんなハッピーな世界が広がっていると思っていた10代の私。浮かれて夢みがちな私の脳内。


なんか、思ってたのと全然違う。
付き合い始めた頃からそう感じていた。
いってらっしゃいのキスも、ソファでのいちゃいちゃも、手を繋いでのデートも、私が「恋人になったらするであろう」と思っていたことは、一切無かった。
無論、やんわりと拒否されるなんて夢にも思わなかった。
付き合い始めの頃は、肩透かしをくらった気分だった。
それでも、まあ、現実はこんなものかと思おうとした。
思い描いていたのはドラマや映画の世界だけの話で、これがリアルだと。

でもきっと、どこかにはあるんだろうと、今は思う。
私が想像していたような、ちょっとうらやましい、浮かれた恋愛。
それがたまたま、ここにはない。
それだけの話で、だから別に、私がただ勘違いしていたわけではないんだろう。

人生は全く思い通りにいかない。
夢みがちな私の隣に、夢を見ない男がいる。
あえてそうなっているとしか思えない。まるで喜劇だ。

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がじゅまる
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