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『ザ・ディプロマット』:シンデレラストーリー(The Cinderella Thing)の脚本が素晴らしく魅せられる
1.グレイズアナトミーのデボラ・カーンが脚本!
「マル激トーク・オン・ディマンド(通称マル激)」の5金の配信は無料で映画特集をいつもやるので大好きで見ていて、「宮台真司×神保哲生:【5金スペシャル映画特集Part1】不条理だらけの世界を当たり前としない生き方のすすめ」で、紹介されていたやつは、どれも面白そうなのでコツコツ観ている。
その中でも、特に気のなったのが、『ザ・ディプロマット』。
内容もそうなのだが、Debora Kahn(デボラ・カーン)は、全米脚本家組合賞(WGA賞)のテレビドラマシリーズ賞を2回受賞していて、『ホームランド』(2011−2020)、『ザ・ホワイトハウス(The West Wing)』(1999-2009)での一部、なによりも『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学(Grey's Anatomy)』(2005-)で製作総指揮と脚本をやっている人で、名前をずっと覚えていたので、これは!って思い、観ました。この人の作品、どれもめちゃくちゃ面白いんです。
2.エピソード1:シンデレラストーリ(The Cinderella Thing)の脚本が素晴らしく引き込まれる:夫を立てて裏方に徹する職業人の攻守交代
特に第一話が素晴らしい。引きこまれます。難しい政治とかに興味がない人でも、グイグイ引っ張る。
脚本も、デボラさんで流石のテンポ。外交官ケイト・ワイラー(ケリーラッセル/Keri Russell)が主人公なんですが、彼女は、中東で紛争を解決してきた歴戦の外交官ではあるのですが、地味なタイプの実務派官僚。
実際は、華々しいスター外交官として、アメリカでも名前が売れているのは彼女の夫の同じ外交官のハル・ワイラー /ルーファス・シーウェル (Rufus Sewell)であって、彼女は常に彼の方が優れた外交官だと思って一歩引いている感じ。それに、彼女はハルをとても深く愛しているので、どちらかといえば内助の功的に、彼の前に出るのを気にして抑えて裏方に徹している。そして同時に、中東の紛争解決屋としてのキャリア外交官としては自負も持っており、このままではうまくいかないと、アフガニスタンに赴任する予定のケイトは、これを機に、彼女はハルと離婚をしようとしている。
そんな彼女のもとに、ホワイトハウスから電話がくる。
ああ、いつもことで、夫のハルあてだと思って電話を彼に渡すのだが、
いや・・・ホワイハウスは、君に用事があるらしい
といわれる。
そこで、アフガニスタン赴任ではなく、大統領が君を駐英大使に選んだので行ってほしいと告げられる。
駐英大使は、大統領を5人も出している花形のポジションであり、深い同盟関係にある英国との重要なパイプ役。
なぜ?
観客は、冒頭の一瞬から、彼女がどんどん、「自分の意思とは関係ないところ」で大抜擢されていくのを体感する。
これをシンデレラストーリーとして小タイトルがついているところが、たまらない。
しかも、ただの駐英大使というわけではなく・・・・・
というところがらさに、ぐっとくる。
この畳み掛けるように、本人の意思と関係なく、重要なポジションいついていくのは、 キーファー・サザーランドの『サバイバー: 宿命の大統領』(Designated Survivor)(2016−2019)を思い出しました。
なかなか面白かったのが彼女が、駐イギリス大使館の公使やCIAのスタッフに信用されていくのは、彼女が官僚、テクノクラートとして非常に優秀な人だからなんですね。政治的野心がほぼゼロで、ひたすら国のために、誠実に働いている職業官僚。『ザ・ホワイトハウス』(The West Wing)をとても思い出します。
この誠実な女性テクノクラートというキャラクターについて、僕は、『茉莉花官吏伝』という小説をずっと思い出してみていました。これについては別に書きます。
2.アメリカ政治の裏側を人間ドラマで理解すると、他のアメリカの物語の面白さが何倍にもなる!
頭の中でまず結びついたのは、『The West Wing』でした。邦題は、『ザ・ホワイトハウス』でしたよね。このドラマは、大統領補佐官など大統領のスタッフという裏方にフォーカスして、どのようにアメリカの政治が動いていくかを描いた秀逸なドラマシリーズで、これで僕は、アメリカの政治の裏側って、そうんなふうになっているのかぁ、ふぁぁぁぁって、感動したのを覚えています。
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