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マイナンバーカードに入ってる電子証明書が便利すぎる話

マイナンバーカード、めちゃくちゃ便利です。

一般のサラリーマンや主婦はマイナポイント5000円還元で喜ぶかもしれませんが、個人事業主一人会社経営者中小ベンチャー企業の管理部門担当者にとってはそれよりも中に入っている電子証明書にめちゃくちゃ価値があります。

定額給付金申請を機に電子証明書が広まりましたが、意外とビジネス用途でのノウハウや情報がないことを先日聞いたのでそれでまとめてみました。

電子申請など手続きだけでなく、電子契約書などでも使えます。BtoBの契約であればクラウドサインとかを使わずに、クラウドサインよりセキュアな契約が結べるので管理系の地味な話に興味がない方は途中まで読み飛ばしてもらうのがいいんじゃないかと。

(はじめに)電子証明書とは

いわば印鑑の代理。その人(自然人も法人も)であることを証明できます。しかも印鑑みたいに簡単に偽造出来て劣化もするようなものじゃないのでセキュリティも抜群。電子証明書自体についてここで説明すると無駄に長くなるのでこの記事がわかりやすいと思います。
SMBC: コラム:電子証明書についてもっと知りたい

技術の基盤として使われているのが公開鍵暗号方式というもの。世の中のあちこちに使われてて、理屈も至極簡単なので文系であろうとも教養として持ってもらいたい知識。素数はすごい。

電子証明書自体は経理や労務ならおなじみですね。オンラインバンキングや、税務関係や社保関係で電子申請する際に使われます。

電子証明書は地味に高いし手間

電子証明書があれば様々な手続きや申請がオンラインで出来るようになります。じゃあめっちゃ普及してるかというとそうでもないです。問題は電子証明書を取得して使用すること自体のハードルの高さです。

その① 地味に高い
電子証明書を発行する母体(認証局)は様々ありますが、どれも有料です。実務上で多分一番多く使われているであろう法務局が出している商業登記電子証明書はこんな感じの料金設定。

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そんなに高くないって思うでしょう?
確かに会社が使うお金としては高くないですが、紙に印鑑押すならこのお金がかからないというのが判断プロセスを鈍らせます。実際、社保手続きを外注している会社であればルーティンで電子証明書を使う頻度はそんなにないです。あると楽になるとは分かってはいるものの追加コストだけかかって、削減効果が示しにくい。

そしてこういった実務を行う経理労務のオペレーションポジションは会社の中で発言力が大きくないことが多いので「ITを使って業務を効率化しよう」とはなかなか思わないし、予算を動かす経験が圧倒的に少ないので稟議出して予算を取りに行く習慣もない。

さらに個人的に悲しいと思っているのが、経理なら経理課長/部長はほぼ100%経理の実務を知ってるので電子証明書を導入しての業務効率化や内製化に理解があるのですが、中小ベンチャーの人事部長だと労務の実務経験ない人が多いのでなかなか理解が及びません。無駄な業務をしていたり、内製化したほうが楽で早い業務なのに社労士にお金を払い続けていたりすることが多いし、採用に頭がいっぱいで課題が課題として浮いてこないことも多いです。
実際、こういった労務オペレーションの支援で電子申請を導入する際も、まず経理担当者に挨拶して、「電子証明書持ってたりします?」って聞くことが多いです。

その② 地味に手間
上記を見て「頻度少なめだったら最低の3ヶ月2500円で都度取得すればいいのでは」と思うかもしれませんが、電子証明書の取得とセットアップは地味に手間です。申請するのに書類書かないといけないし、発行された電子証明書も鍵ペアファイルがうんたらみたいな感じで手順を踏まないと使えません。発行のソフトウェアも官製なのでUIがめちゃくちゃ使いづらい。

紙&印鑑ならセットアップの手間もかからないし、お金もかからないし、社内で稟議出す必要もないし、今回はこれまで通りやって次時間のあるときに検討しよう

となって永遠に導入されない会社多いと思います。

というか電子化するインセンティブがないという仕組みが悪すぎる。やっと大企業での電子申請が義務化されましたが、問題は中小企業。せめて10年有効な電子証明書を無料で発行するとか、紙での申請には印紙税を載せるとかそういう取り組みをしたほうがいいのでは。

とまあ、電子証明書が普及しないことについて語ってしまいましたが、個人事業主や80人未満くらいの規模の会社であれば上記のような問題はマイナンバーカード1枚で解決出来ます。

マイナンバーカードに電子証明書入ってます

これは定額給付金のオンライン申請のときに話題になりましたね。設定したパスワードが分からないとか、住所変更したから失効したとか。

マイナンバーカードはただの身分証明書ではなく、電子的に身分証明をすることも出来ます。中に個人の印鑑登録済みの実印が入っているようなイメージ。

すると、理屈的には個人の印鑑を必要とする場面においてはすべてマイナンバーカードの電子証明書が代わりを成します。個人(自然人)の証明であり、法人の証明ではないので「会社として」の証明には使えないのですが、「法人代表者として」の証明には使えます。つまり、代表印と同じような使い方が出来るようなイメージです。
もちろん、個人事業主であればそのまま個人を証明することになります。これが広まれば圧倒的に便利な世の中になります。12桁の個人番号なんて表面上のどうでもいいものです。マイナンバー制度については電子証明書付きのカードよりも12桁の番号を押し出してしまったのが過ちなんじゃないかと思います。ジオングを足付きの状態でリリースしたようなものです。

ちなみに電子国家エストニアにおいて根幹を成しているのが電子証明書付きのIDカードです。これによってすべての手続がオンラインで完結しています。ちなみに僕はエストニアのe-Resident(電子国民)にもなっています。国際展開するようなビジネスをするときにはエストニアに法人作ろうとアイデア温め中。

出来ること① 電子申請系(e-Tax/e-Gov/eLTAX/登記供託オンライン)

電子申請系はほぼ使えます。
個人の確定申告をオンラインでやっている人も多いのでe-Taxは有名ですが、実は代表者のマイナンバーカードであれば一般の手続きなどにも使えます

ここではe-Tax/e-Gov/eLTAX/登記供託オンラインの4つを取り上げさせていただきます。存在は知ってても4種類全てを使ってる人はなかなか少ないんじゃないかと思うので簡単に解説をつけていきます。

・e-Tax
税務署関係で経理がよく使う。納税はペイジーで出来るのでそれよりも申告系が便利です。法定調書とか異動届出書とか。個人の確定申告はとにかく便利。ふるさと納税の証明書とか生命保険料控除証明書とか多くの書類の添付が免除されます。

・e-Gov
社保関連で労務がよく使う。e-Gov自体は名前の通り国の行政関係の手続き全体のシステムですが、実務上は圧倒的に社会保険労働保険関連で使われてると思います。ほぼすべての社会保険労働保険関連の手続ができます。
というか「e-Gov=厚生労働省管轄のもの」という認識の人多いんじゃないでしょうか。何が出来るか興味のある方はこちらから調べて見てください。
e-GovはAPIを開放していて、民間のシステムに使われてることも多いので知らず知らずのうちに使ってる人も多いと思います。SmartHRとか。

・eLTAX
地方税関係。他と比べて頻度は少ないですが、給与支払報告書の提出において圧倒的便利さを誇ります。このために電子証明書を取得してもお釣りが来るほど給与支払報告書は紙で印刷して全国に郵送すると多大な手間がかかります。
が、給与支払報告書をeLTAXで出すにはデータの加工が必要なのでデータ操作に疎い税理士社労士はこれを使わずにせっせと紙で印刷してます。というかeLTAXが標準対応になっていたり、「eLTAXで出しましょう」って提案してくる税理士社労士はほぼないと思います。
たとえ給与支払報告書をeLTAXで出しても、住民税の決定通知書は紙でしか届かないというのはお茶目なところ。

・登記供託オンライン
登記関係もオンラインで出来ます。法人設立や登記事項の変更もオンラインででき、電子定款で設立することになるので印紙税も節約できます。一人会社設立となると丁寧なガイドもあります。
法務省: 一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!
あと、実務的に便利なのは登記簿謄本の発行じゃないでしょうか。法務局に行って並ばなくても入手できます。登記簿謄本であれば誰でも発行出来るのでこれは代表者のマイナンバーカードじゃなくても担当者個人のマイナンバーカードでOKです。

出来ること② 給付金とか

今回のコロナでまさに恩恵をうけるやつですね。僕の場合、
定額給付金(10万円の)は初日5/1に申請して5/13には入金されてました。

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持続化給付金は6/5に申請して6/9には入金されてました。

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郵送を待ってたり、なかなか入金されなかったり、書類の訂正に時間がかかったりとかでなかなか入ってこない人や事業者も多かったと思います。
オンライン申請だからこんなに早かったかどうかは分かりませんが。

出来ること③ 電子署名で電子契約を結ぶ

ついに来ました、電子署名。電子証明書があるとファイルに電子署名を施すことも出来ます。つまり契約書のPDFに電子署名ができ、電子契約が結べます。電子契約といえばクラウドサインのようなサービスが思い浮かぶと思いますが、クラウドサインの下位プランは電子署名ではなく電子サインを使っていて電子署名は上位プランのみになっています。しかもサービスなのでもちろん有料。それに対して、マイナンバーカードの電子証明書があれば電子署名も無料で制限なく出来ます

<マイナンバーカードを使った電子署名の仕方>

①Adobe Acrobat Pro DC
調べると一番最初にこれが出てくると思いますが、残念ながらAcrobatはReaderと違って有料です。しかも月1580円と割と高いです。
PDF内の本文の編集が出来るのでめちゃくちゃ便利ですが、そんな機能を日常的に使わない大抵の人にとっては割の合わない買い物だと思います。

②JPKI PDF SIGNER
僕はこれを使ってます。フリーソフトなので無料です。シンプルですが不満を持ったことはありません。

③その他サービス
「マイナンバーカードの電子証明書を使えば電子署名出来るし、これビジネスで使えるんじゃね?」と思いついた会社がちらほら出てきました。会社でフリーソフトはNGというのであればこういうのを使ってもいいかもしれません。が、PDFに署名をすること自体はなんら難しいものでもないので単に署名をするならフリーソフトで十分だと思います。日本独自のものではないので海外製ソフトウェアも使えるはずです。
stamppro for jpki
e-sign

法人設立で「電子定款には有料のAcrobatが必要」みたいなことを書いてる記事がありますが、別にAcrobatじゃなくても電子定款作れます。でもなぜかそのことを書いてる記事がめちゃくちゃ少ないんですよね。。。

補足 カードリーダー

マイナンバーカードはカードである以上、物理的にそれを読み込むカードリーダーが必要です。スマホでも出来るのですが機種が多くないということもあるのでカードリーダーが1家に1台の必須ですね。

ちなみに僕はKENYAのカードリーダーを使ってます。値段が安かったのと、異国の地を想起させるのが選んだ理由なので良し悪しはわかりません。今の所問題なく使えてます。

まとめ

健康保険証とかマイナポイントとか個人向けの内容がピックアップされがちですが、マイナンバー制度における中核は電子証明書による電子国家化だと思っています。

法人となると代表者のマイナンバーカードしか申請に使えないので大きい規模の会社だとどうしても手間をかけて電子証明書を取得する必要がありますが、小さい規模であれば代表のマイナンバーカードを預かって印鑑と同じ金庫に入れて運用することも出来ると思います。使用するときにパスワードが必要な分、印鑑よりセキュアです。

というより、「多くの会社の手続きが法人の代表しか行えない」というのが変わったらいいなと思っています。ちょっとした手続や契約をするのに社長がいちいち承認するわけないのに部長や他の取締役の名前ではなくあくまで社長の名前。印鑑の代替性が作り出した負の遺産ですね。。。。

戦略人事を標榜してますが、こういったオペレーション改善も大好物です。というか、オペレーションと実行が伴わない戦略は意味がないと思っているので課題を感じていたりしましたらお気軽にご相談ください。
https://linktr.ee/gaisho

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