台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い 駒込武編 みすず書房

 タイトルからなんとなく察せられるように、この本の執筆者の皆さんは基本的に左派に属します。日本の保守派の方が読んでまず気持ちの良いものではないでしょう。とはいえ、執筆者の方々が旧来の左派イメージとは大きく異なるものを丁寧に示しているのも事実です。

 帯に「米中対立下の地政学的分断を越えて、ともに平和であることは可能か?」という提起がありますが、著者の一人である呉叡人さん(台湾における左派)は、台湾には現状独自に取りうるオプションがほぼ無いという非常に厳しい立場を採っています。

 しかしながら冒頭に掲げられた以下の言葉はいかなる論者であれ、最低限の前提とされるべきではないかと思いました。

いかなる理由にせよ、国家的な大義名分の故に、特定の島弧少数民が犠牲的状況に追い込まれるということが容認されるべきではない

川満信一「沖縄における中国認識」

 あと私が読み落とした可能性があるので、断言はできませんが
屋良朝苗沖縄県知事が登場しなかったような気がします。登場していたら申し訳ありません。屋良朝苗は、戦時中台湾で教鞭をとり、戦後沖縄へ引き上げてきた経歴を持ちます。(沖縄戦を実際に体験したわけではない)
 反復帰論の代表的人物であり、冒頭でも引用された川満信一は例外的に同時代と比較しても台湾に対する感覚が鋭いものでした。対照的にその正反対の立場の復帰論者であり、台湾との関わりも深かった屋良朝苗を比較対象として取り上げたら面白かったのではないかと思います。(紙数が足りなかったということもあるかもしれないですし、そもそも記録がないのかもしれないですが)

 うまく内容の要約ができていないので、この本の感想は追記することになるかもしれません。

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