台北プライベート・アイ 紀 蔚然 (著), 舩山 むつみ (翻訳) 文春文庫

 語り手である中年探偵の饒舌ぶりが魅力的。探偵ものではあるが、訳者解説で指摘されているとおり、台湾の文化やメディア、司法など社会への優れた批評でもあります。(私は台湾行ったことがないのでこのあたりよくわかりませんが)

 本格的な凝りに凝ったミステリーというわけではないので、普段ミステリー読み慣れていない方でも読みやすいのではと思われます。(私は普段ミステリーを一切読みませんし、また読めませんが、これは大変読みやすかった)
 主人公が台北を歩き回るので台湾をよく訪れていて土地勘のある方はなおさら面白く読めると思います。

 主人公は若い頃からパニック障害の持病を持っています。凶悪犯を追う過程の中で、台湾という土地とその住む人々と結び付けられ、自身のトラウマに向き合い段々と少しずつ癒されていく過程が面白かったです。

台湾に帰ってくると、空気も、湿気も、悪いにおいも、すべて体に合っている気がした。細菌さえも正しいと思った。病気も自然とよくなった。

p65


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